旅と学びの協議会/「食×人との出会い」越境的な学習の効果は?「旅するスナック」「at the table」による共同イベントを東海大学渋谷キャンパスにて開催

旅するスナック×at the tableイベントの様子

流通科学大学、東海大学の学生の「越境的な学習」検証への挑戦

旅するスナック×at the tableイベントの様子旅するスナック×at the tableイベントの様子

本イベントは、12月9日(土)に東海大学渋谷キャンパスにて開催されました。普段とは異なる環境に身を置く体験や、世代や年齢を超えた人々との出会いによって新たな視点や学びを得る「越境的な学習理論」に基づき、「『旅』は物理的にも心理的にも『越境』の状況にある」という仮説を立て、本協議会の目的となる「旅」の学習効果について実証を行うことを目的としています。
また、レストランなどで決められたメニューによる「食」の楽しみも然ることながら、その場で考えた偶発的な「食」との出会いや、「食」を通じた人との交流による日常からの越境により新たな価値を創出する機会として、企画されました。 

■初対面の2大学の学生たちが「食」を通じた越境を体験
本イベントには、東海大学と流通科学大学の学生をはじめとした合計15名が参加しました。学生達は、2チームに分かれてメニューを話し合い、食料の調達から調理、盛り付け、テーブルのセッティングを実施しました。その後、出来上がった料理を囲みながら、フリーセッションを行いました。
学生達は今回が初対面で、あえて学生たちにはイベントの目的は伝えられず、「1チーム15,000円の予算内で2品15名分の料理を作りましょう」とだけ指示があり、学生たちはゼロから料理のテーマとメニューを考えました。
話し合いの結果、「クリスマス」をテーマに、前菜からデザートまでの12種類以上の料理が完成。その他にも、学生たちのアイデアで、テーブルクロスや皿、装花、クリスマスのオーナメントなども予算内で購入し、テーブルが華やかに彩られました。また、「旅するスナック」からは、石川県能登町の「のトニック」の炭酸割りをはじめとした、日本各地のノンアルコールドリンクが6種類以上提供されました。学生たちは、こだわりのドリンクと、自分達で協力して調理した料理を楽しみながら、交流を深めました。

参加した学生からは、「コロナ禍で失われたものが回復してきているなかで自分の役割がなんなのかを把握し、今回の学習に取り組むことができました。まさしく越境を自身の肌で感じることが何よりも成果だと感じました」「新しい出会いにある人間と交流を深めることは、将来的にも充実した時間になったと感じました」という声がありました。また、今回社会人もメンバーに加わり活動したこともあり、社会人からのアドバイスに対し、「私自身予測していなかったアドバイスもあり新しい価値観に触れるきっかけになった。新しい価値観に戸惑うこともあったが、それを受け入れた時、自分の価値観がまた新たに広がったように感じた」といった声もありました。

【流通科学大学 人間社会学部 観光学科 山川拓也准教授 コメント】
今回のイベント計画は夏の終わり頃に話が立ち上がり、関係者による複数回のミーティングを経て、ローンチさせることができました。観光交流を理解する上の重要概念である「越境」をテーマとした今回の活動を通して、学生は多様な他者の思考や価値観の一端に触れることができ、それによって、かえって自己を問い直す良い契機になったのではないでしょうか。私自身は、今回の実践を通して、「越境」の触媒としての「食」・「食事」の可能性に改めて気づくこともできました。
近年、日本の多くの大学は、社会(主に学生を採用する企業等)の現実的ニーズに応える形で、経済産業省が定義する[社会人基礎力]の育成が求められています。そのような中、今回の活動は社会人基礎力としての「前に踏み出す力」(能力要素:主体性・働きかけ力・実行力)の涵養にも有効であると思いました。
<参考>社会人基礎力: www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html
今後については、更なる調査データ類の蓄積を図りながら、協議会ならびに協力者の皆様とともに、「旅による学びの効果」の検証に必要な測定手法の開発に取り組むことができればと考えています。

【MoveHearts株式会社 大下眞央氏 コメント】
旅するスナックでは、普段社会人を中心として、年齢や職業などできるだけ同じ属性の人が偏らないように場を設計していますが、今回は、参加者が学生で年齢が比較的近いということもあり、どの程度の越境環境が作り出せるのか未知でした。しかし、実際にやってみると、「食」というテーマかつ、五感を通じての取り組み(食材の買い出しや料理など)、非日常のコンフォートゾーンを抜ける体験設計(当日にチームメンバーを変えるなど)であったことで、計画段階で想像していた以上の共同でフラットな関係性が生まれていました。改めて学生の可能性を体感し、また、人の多様性だけでなく、場や空間、前提条件の設計次第で、越境的な非日常の空間を作り出すことができるという気づきが得られました。今後もさまざまな形で、越境した人や地域との出会いを創出し、キャリア教育の一助として多様な人が集うコミュニティづくりを推進して参ります。

【武庫川女子大学 生活美学研究所 中井次郎氏 コメント】
学生の行動力、創造力に改めて関心をさせられました。企画前に想定をしていた状況をはるかに超え、素晴らしい ”table” を参加者で囲むことができました。
上述どおり、全く「設計図」も「完成図」も事前に提供せず、さらに普段活動をしているメンバーとは異なったメンバーとの活動という条件で、少し戸惑いを感じている学生も見られました。しかし、時間が経つにつれ、何の指示も受けられない状況を察し、リーダーを中心に自ら動き始めました。彼らはまずクリスマスという共通のテーマを自らで設定し、1チームは「赤」を基調色とした料理、もう一方のチームは「緑」を基調色とした料理を作り、最終的に両チームの料理が重なることでクリスマスを演出しようと考えていました。
今回、「越境」という非日常の空間にて得られると想定された多様な「学び」を検証する試みでしたが、何よりも私が驚いたのは、2チームが「他のチームよりもより良いもの作ろう」といった競い合うような状況には全くならず、むしろ、最終的に2チームが一体感を持って自らが設定した「完成図」に向かって活動したことです。両リーダーがお互いのチーム予算も気にかけながら、誰もがその「完成図」を理解し、そして完成に向けて活動を行なっていました。完成する前の活動の経過中も、私は感動しっぱなしでした。社会人として無意識に競争することを常としていた私たちが、今回学生たちの行動にエモーショナルになったのは、むしろ競争社会という枠を超え「越境」したことによるものだったかもしれませんね。学生に「越境」させるつもりが、学生から「越境」させられました(笑)。
今後は、協議会にもご協力をいただき、今回の「越境的な学習理論」によって試みられた実証が、「旅」による「学び」の効果測定の指標となるべく、調査結果の検証を行っていきたいと思います。ご協力いただきました皆様、ありがとうございました。

■流通科学大学とは 

流通科学大学は、「豊かな社会の実現に貢献できる意欲と能力を持ったビジネスパーソンの育成」を目的に、ダイエー創業者の中内㓛によって1988年に創設された企業立の大学です。商学部・経済学部・人間社会学部の3学部・7学科・16コースと大学院(流通科学研究科)を擁し、約3700名の学生(内、外国人留学生約870名)が在籍しています。本学での教育特色として、『夢の種プロジェクト』と銘打たれた、入学時から始まる独自のキャリア教育があります。卒業後に希望するキャリア実現を『夢』にたとえ、学生自身が主体的に自分の“夢”を『探し・育て・咲かせる』ことができるよう、経験を通した学習機会を数多く教育カリキュラムに組み込み、全学的に支援しています。

URL:www.umds.ac.jp/

■「旅するスナック」とは  

「旅するスナック」とは、MoveHearts株式会社が運営する、首都圏や日本各地で開催している出張型スナックコミュニティ事業です。日本各地のお酒や地域ゲストとの出会いを通じて地域事業者の想いや文化・伝統に関心を持つきっかけを提供しています。また、普段出会わない人同士が集うことで、職種、年齢、居住地を超えたフラットな仲間との出会いを生み出し、新規事業創出、キャリア教育、地域P R、福祉・セーフティネットの役割としての価値創出のような化学反応が起こる空間を提供しています。「旅するスナック」を通じて、社会課題解決や新しい挑戦をするすべての人が、前に進むためのエネルギーをチャージできる場所を日本全国に作ることを目指しています。​​​

URL:https://www.travel-snack.com/

■「at the table」とは  

コロナによってリセットされた「活動」をどのように再生成するのか。新しい「活動」には各々の枠を越境し、教育者と被教育者が共愉(共に楽しむ)する新しい「学び」の必要性が考えられます。アーレントの思想に倣い、その「活動」に必要な公共的空間「テーブルを囲み、食を共有する」ことの実践によって、「学び」と「活動」の再生成を試みる活動を行っています。
「at the table」は、(LLC) Three andが支援する活動です。

■旅と学びの協議会とは

「旅と学びの協議会」は、ANAHDが、立命館アジア太平洋大学(APU)学長 出口治明氏、理事 東京学芸大学大学院准教授、スタディサプリ教育AI研究所所長 小宮山利恵子氏、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授 前野隆司氏、駒沢女子大学観光文化学類教授 鮫島卓氏をコアメンバーとした有識者とともに、教育工学・幸福学・観光学の視点から、旅の効用を科学的に検証し、次世代教育の一環として旅の活用を提言することを目的に2020年6月に設立した任意団体です。
URL:https://ana-conference.com/

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