DW/日本刀の新時代を切り開く「 濃州堂 零式 」発表。鎌倉時代から受け継がれる刀鍛冶の町、岐阜県関市の刀職人と愛知三河のプロダクトデザイナーの魂が宿る革新的な日本刀の誕生。

革命的な日本刀作りで未来へ届けたい。伝統と日本産業の輝き。

「濃州堂 零式」は、日本刀の新たな時代を切り開く。

刀鍛冶の町の魂を受け継ぎ、伝統的な製法と現代の技術を融合させた「濃州堂 零式(のうしゅうどう ゼロしき)」は、日本刀の新たな時代を切り開きます。

愛知県安城市を拠点とするデザイン会社である有限会社D-WEBER(代表:水野 健一)は、岐阜県関市の刀職人達と共に、日本刀「濃州堂 零式」を誕生させました。

この革新的な日本刀モデル「濃州堂 零式」は、鎌倉時代から受け継がれる伝統工芸をゼロから再構築し、日本刀の未来を象徴しています。刀鍛冶の町、関市の魂を継承し、伝統的な製法と現代の技術を融合させた「濃州堂 零式」は、日本刀の新たな時代の到来を確信しています。

この壮大なプロジェクトは、関市の有限会社濃州堂(代表:五十嵐 啓司)との出会いによって実現しました。情熱と意欲が結実し一年を費やして「濃州堂 零式」を誕生させました。(非売品)

現在、岐阜県関市「せきてらす」で展示中です。(特設企画展示は7月頃を予定)


伝統と現代の融合が生み出す究極の美

日本刀の新たな姿を追求し、伝統的な製法と近代的なデザインが見事に融合した円を描くデザインは、現代の日本刀の役割の変化を象徴しています。かつては武具として圧倒的な存在だった日本刀は、現代では嗜好品や芸術品としても高い需要があります。それに応えるために、「濃州堂 零式」は新たなる姿を追求しました。そのデザインには深い意味が込められており、戦わない日本として、永遠に受け継がれる工芸であることの意味を込め、円の形が完全性と調和の象徴となり、究極の美を表現しています。

円を描いた美しい刀身。

刀職人 vs 機械加工職人

刀職人と機械加工職人、両者が協力して、伝統工芸の職人不足に立ち向かうための解決策を示すことも「濃州堂 零式」の使命でした。我々は伝統工芸を新たな形に変えることに果敢に挑戦しました。機械加工を積極的に導入しながらも、一品としての魅力を残し、伝統と革新を見事に融合させる方法を追求しました。その結果、驚きの逆転劇が起きました。当初は刀身を機械加工によって作り上げることを想定していましたが、刀匠たちは自身の職人技で刀身を完成させました。円弧の刀身を鍛冶と研ぎのみで再現することは困難と言われていましたが、見事に実現しました。本物の凄みを帯びた刀身は、控えめでありながら誇らしげで率直に美しいと感じました。もちろん、機械加工職人も日本の産業の伝統工芸職人として大変優れた技術を持っています。その素晴らしいテクニックは、「鎺(はばき)」「鍔(つば)」「柄(つか)」に活かされています。

刀職人の手によって作り上げられました刀身
刀身以外の立体再現は機械加工職人によるもの
茎(なかご):濃州堂 零式 の銘(めい)
茎(なかご):刀匠 兼時士 の銘(めい)

目的は未来を切り開く唯一無二の刀

「濃州堂 零式」は、同業者さえ驚く刀として新たな価値を生み出し多くの世代から興味関心を引きつけ、日本の伝統工芸に関わりたいと感じてくれる人材が増えることを目指しています。この挑戦は、伝統の尊さと革新の意欲を持つ職人たちによるものであり、日本の伝統工芸を進化させ、未来を切り開く唯一無二の刀として「濃州堂 零式」は誕生したのです。

円状に鍛え上げることは刀匠であっても困難を極めた。
円の刀身を研ぐことは熟練であっても過酷であった。

動画 YouTube

・濃州堂 零式 PV : https://youtu.be/wbD_nbchSpU

・濃州堂 零式 製作過程 : https://youtu.be/xAnjBs0_ln4


デザイナー水野からのメッセージ

現代の日本刀

デザイナーの水野です。「濃州堂 零式」のデザインに関わる経緯についてお話しします。新型コロナが少し落ち着いた時期に、愛知県豊田市の栢野 忠夫さん(卜ライマインド代表)から、「関市で日本刀の製作現場を見学してみませんか?」というお誘いを受けました。栢野さんは既に機械加工で製作した日本刀を発表しており、機械加工が日本刀の世界にも必要になると考えていました。

お誘いをいただいた当初は戸惑いもありましたが、時は映画やドラマで戦国ブームの真っただ中で武具への関心もあり、日本刀製作現場を見学することにしました。濃州堂を訪れた際のファーストインプレッションは鮮明に覚えています。スタッフは若く、多くの女性が活躍していました。私が想像していた日本刀の世界とは異なる光景でした。関市は刃物の町であり、地元の人々にとって刃物は日常の一部であり、刃物製作は当たり前の仕事として捉えられています。ただし、後継者不足の問題も明らかでした。

後継者不足は日本刀に限らず、日本の産業全体が抱える問題です。プロデザイナー特にプロダクトの世界でも後継者が減少しています。デジタルコンテンツの普及により、実際のモノに触れる機会が減少したことも一因ですが、「日本刀」はキャラクターアイテムやバーチャルな世界で高い認知度を持ち、映画やドラマでも需要があります。では、本物の日本刀は誰が購入しているのでしょうか?

「真剣」とされる「刀匠が打った本当に切れる刀」は、一部の許可を得た剣士や海外での需要があるそうです。もちろん、真剣を所有するには登録が必要です。また、大きな需要があるのは「居合道」に用いられる居合刀です。居合刀は砂型鋳造品を研磨して製作され、実際に切れることはありません。居合刀も嗜好品として需要があり、ビジネスとして主流になっています。

居合刀の製作過程も非常に困難で、職人がグラインダーを駆使して削り磨きを行っています。この部分を少しでも軽減したいという濃州堂の思いがあり、僕が当初抱いていた「日本刀作りに機械加工は適さないのでは?」という先入観は真逆でした。濃州堂は将来の担い手の減少を見据え、一部機械加工を検討していました。現場を訪れるまで分からなかったこともありましたが目から鱗でした。

居合刀:鋳物の刀身をグラインダーで磨き上げている
居合刀:積極的に機械が利用されていることが分かる

日本刀は自分を映す鏡

この出会いをきっかけに、刀のデザインに取り組むことになりました。

岐阜濃州の刀職人と、尾張(愛知県瀬戸市)出身で三河に在住の私が共に刀作りをすることに、運命のようなものを感じたことも後押しとなりました。

当初は機械加工技術を活かした「未来の刀(フューチャーソード)」を作る構想でしたが、自分の中で納得感が得られず、アイデアは浮かぶものの、アニメやゲームのキャラクターの装備アイテムのように感じて、その意義に疑問を抱きました。

デザイナーとして長く活動していると、正解にたどり着くことも早くなりますが、「日本刀」というイメージから抜け出せなくなっている自分に気づきました。機械加工なので当たり前にできる、と言われるのも嫌であり、一方でそれが当てはまる部分もあることは確かです。刀職人と機械加工職人が共に競い合えるもの、同業者が驚くものは何か。

そして、たどり着いた答えは「リセット」でした。自分の心と先入観を捨て、未来のものを作るのではなく、後世に残るものを生み出すことに集中しました。伝えたいことはただ一つ「美しい刀を生み出す」ことに絞りました。

濃州堂で本物の刀を手にした時の恐怖と緊張、一振りすれば切れてしまう恐ろしさ、そして自己防衛のための武具でもある。まるで自分自身が刀に試されているかのような感覚でした。この感覚を形にして人に伝えたい。刀は自分自身を映す鏡だと解釈し「円」のアイデアにたどり着いたのです。

心も先入観も全てリセットする、零式の由来であり、存在意義となりました。

アイデア初期のデザインスケッチ。

そして職人の魂が燃え上がった

デザインを披露した日のことは忘れられません。デザインを完成させる前に、日本刀の製造工程を見学させていただきました。直感的に、これは難しいことだと感じました。多くの伝統工芸は分業で成り立っており、その分業の中には匠が存在します。日本刀も同様です。刀匠と呼ばれる刀鍛冶士や研ぎ士、柄巻き士など、多くの匠が関与しています。その中で零式のアイデアを披露することは覚悟が必要でした。このアイデアが日本刀を冒涜していると怒られる可能性があったからです。まさに真剣勝負の瞬間でした。

プレゼンテーションの間、皆さんは黙り込んでいました。頭を抱える人もいました。私のアイデアが怒りを買ったのかもしれないと覚悟し始めた時、刀匠さんが先頭に立ちました。「これは日本刀かい?材料はこれで、こんな作り方ができるよ」と、非常に前向きな意見を出してくれました。驚きました。息苦しかった雰囲気が一変しました。その方の発言が「やってみよう」という共感を生み、周囲に大きな波紋を広げ、デザインのプレゼンテーションから製作への道が開かれました。

思えば、職人も私も同じ目的を持っていました。「自らのポテンシャルを広く知ってもらうことで興味関心を引き、後進につなげたい」ということです。

肝心の零式のデザインの感想は、「作れるかどうかはわからないけれど実に美しい。」でした。

機械加工で仕上げたモデルで検討会の様子
モデルを削りだした加工職人の技に刀匠も関心
ディスカッションを重ねて情熱が熱くなる
完成のイメージを確認し合うことで共通意識が増した

記憶に刻まれた波乱万丈な経験

発表までの道のりはまさに波乱万丈でした。刀鍛冶の作業は気候や気温に左右されるため、梅雨時や蒸し暑い夏場ではほとんど進めることができませんでした。その期間は刀身の製作がストップし、代わりに機械加工で削り出したモデルを頼りに、鍛冶のイメージを何度も繰り返し検討するしかありませんでした。そして柄巻きにおいても、これまで経験のない円弧の柄に苦戦し、職人たちは何度もやり直すことを余儀なくされました。

これまで私が関わったプロジェクトでは、季節の影響や完全な手作業の制約が存在しなかったため、お互いのペースがまったく異なりました。スケジュール管理のしやすい仕事とそうでない仕事の間には大きなギャップがありました。そのため、時折衝突も起こりましたが、それもまたこのプロジェクトの一部です。

未来へ届けたい伝統と日本産業の輝き

デザインの決定から始まった一年の旅は、数々のエピソードで彩られ、凄く長い時間のように感じられます。言葉では言い尽くせないほど、本当に素晴らしい経験でした。

私たちが情熱を注ぎ込んで作り上げた「濃州堂 零式」は関市の「せきてらす」で現在展示中です。関市の日本刀の歴史と未来をテーマとした企画展示も、本夏頃に展示開催を予定されておりますので、多くの方にその輝きと情熱を目にしていただけると嬉しいです。

水鏡(みかがみ)のような佇まいは神具をも思わせる。
有限会社D-WEBER 代表デザイナー 水野 健一
有限会社 濃州堂 代表 五十嵐 啓司
トライマインド 代表 栢野 忠夫
岐阜県関市「せきてらす」での説明会議の様子

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