スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2024)

スマートフォンの利用実態からeスポーツ、AIサービスの利用まで幅広く調査。今後の生活や旅行行動に関する変化の兆しをとらえます。

【サマリー】

情報検索手段の勢力図が変わる?キーワード検索は、まだ主流ではあるが、地図アプリや動画投稿サイトでの検索が増加し、生成AIの利用も急浮上

  • スマートフォンでよく使う機能は、初めて「地図アプリ」が「電話」を上回る。「動画投稿サイト」もランクアップ

  • 情報検索の方法は、「検索エンジンでキーワード検索(81.7%)」、「地図サイト、アプリにキーワード入力(49.2%)」、「動画投稿サイトで検索(47.1%)」が上位。全体では9.7%だが、29歳以下の男性の17.5%が「Chat GPTなどの生成AIに質問」と回答

利用するSNSの上位は「LINE」、「YouTube」、「X」、「Instagram」で前年と変わらずも、「LINE」は20代女性と30代男性で減少傾向。「TikTok」と「Ameba」の利用が伸びる

  • 今年度から追加した「BeReal.」は全体では1.7%だが、20代の男女はそれぞれ5.8%、8.7%利用。「映え」や「加工なし」のSNSが情報発信のあり方にどのような変化をもたらすのか、次年度以降の動向に注目

コロナ禍によるオンラインの普及でeスポーツの認知が大きく伸びる。eスポーツに興味を持つきっかけは「人」。「好きな配信者が投稿していたから」、「友人・知人に誘われたから」が上位

  • eスポーツとして認知されているゲームのジャンルは「アクションゲーム(対人格闘)(26.5%)」、「シューティングゲーム(対人型)(24.8%)」など

  • eスポーツへの参加意向は前回調査と比較して微減。コロナ禍で増加したライト層が離れた可能性も

スマートフォンでの旅行商品の予約購入割合は、昨年より3.3ポイント増加し、6割をこえる。

  • 「宿泊施設」は引き続き伸びる一方、コロナ禍で増加したチケット類はやや減少傾向

無人サービスの利用意向は、40歳前後に壁。20~30代と40歳以降で大きく差がつく

  • 利用意向が高かった無人サービスは、「自動会計(58.1%)」、「タブレットなどによる注文(56.1%)、「観光施設への入場の自動化(42.1%)」、「入国審査の自動化(41.7%)」


(株)JTB総合研究所(本社:東京都品川区、代表取締役社長執行役員 風間欣人、以下JTB総合研究所)は、「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2024)」を実施しました(2013年に調査開始、今回で9回目)。

 本調査はスマートフォンの利用実態や人びとの意識を継続的に調べることで、今後の生活や旅行行動に関する変化の兆しをとらえようとするものです。過去の調査では、「SNS疲れ」、「インスタ映え」、「デジタルデトックス」などの兆しをいち早くとらえてきました。当社は、今後も生活者のライフスタイルや価値観が消費行動や旅行に与える影響に関する調査研究を継続的に行ってまいります。

<調査結果>

【インターネットやスマートフォンの利用実態】

1. 情報収集手段の勢力図が変わる?キーワード検索は、まだ主流ではあるが、地図アプリや動画投稿サイトでの検索が増加し、生成AIの利用も急浮上。

 スマートフォンでよく使う機能として、電話は昨年度の4位から9位へと大きく順位を落とし、変わって「地図アプリ」が初めて電話を上回り、4位となりました。コミュニケーションの主流となっているメッセージ・チャットアプリも利用率は8割を超えていますが、やや減少傾向となり、落ち着きをみせています(図1)。

 また、情報検索の方法でも、検索エンジンでのキーワード検索が81.7%で最も高いものの、地図アプリや動画投稿サイトの割合も4割を超えました。Chat GPTなどの生成AIによる検索も、全体では9.7%、29歳以下の男性では、17.5%と存在感をみせています。情報収集手段の勢力図が大きく変わりつつあることが感じられます(図2)。

 具体的に、地図アプリの使い方を聞いた結果でも、ルート案内機能よりも、「行きたい場所を検索し、場所を確認する」が高くなっています(図3)。

(図1) 

*複数回答

(図2)

*複数回答

(図3)

*複数回答

2. 利用するSNSの上位は「LINE」、「YouTube」、「X」、「Instagram」で前年と変わらずも、「LINE」は20代女性と30代男性で減少傾向。「TikTok」と「Ameba」の利用が伸びる。

 スマートフォンで利用する主なSNSや動画投稿サービスとしては、「LINE」、「YouTube」、「X」、「Instagram」が上位で、昨年と変わらない結果でした。しかしながら、「LINE」は、やや減少傾向となり、特に20代女性と30代男性で減少しました。一方、「TikTok」と「Ameba」は前年度より5ポイント以上の増加がみられます。また、今年度から調査に加えた「BeReal.」は、全体では1.7%でしたが、29歳以下の男女ではそれぞれ5.8%、8.7%が利用しており、初期の「TikTok」と同様の傾向となりました。若い世代から、今後、幅広い世代へと広がりをみせるのか、動向が注目されます(表1)。

(表1) スマートフォンで利用する主なSNSや動画投稿サービス(性年代別)

*赤矢印:昨年より5ポイント以上上昇したもの 青矢印:昨年より5ポイント以上減少したもの *複数回答

【スマートフォンでのゲームの利用やeスポーツについて】

3. コロナ禍によるオンラインの普及でeスポーツの認知が大きく伸びる。
  eスポーツに興味を持つきっかけは「人」。「好きな配信者が投稿していたから」、
 「友人・知人に誘われたから」が上位。

 eスポーツの経験や関心について見てみると、昨年度の調査結果と比較して「知らない」と回答した割合が全体で41.8%から30.0%に減少しており、全体的なeスポーツの認知度の向上が見受けられます(図4)。また、性年代別にみると、29歳以下と30代の男性で高い傾向がみられ、eスポーツをプレイしたり観戦したりした経験がある人の割合は、全体では16.7%でしたが、29歳以下の男性では49.5%、30代男性では29.1%となりました(図5)。

 eスポーツとして認識しているゲームジャンルとしては、「アクションゲーム(対人格闘)(26.5%)」、「シューティングゲーム(対人型)(24.8%)」が20%を超えており、主なeスポーツゲームとして認識されています(図6)。

(図4)

*複数回答

(図5) 

*複数回答

(図6)

*複数回答

 eスポーツを見始めた・プレイし始めた時期としては、「コロナ禍(2020年~2022年)」の回答が過半数を占め、コロナ禍の巣ごもり需要の増加がきっかけとなっていたことが見てとれます(図7)。

観戦・プレイのきっかけを具体的に聞いたところ、「好きな動画投稿者やストリーマー(ライブ配信者)がプレイしており、興味を持ったから」、「プロゲーマーの活躍を見かけたから」、「友人・知人から誘われたから」が上位に挙げられており、ゲーム自体への関心ではなく、人を起点としたきっかけが主となっていることがわかります(図8)。

(図7)

*単一回答

(図8) 

*複数回答

 eスポーツのプレイや観戦意向については、「eスポーツに関心はない/あてはまるものはない」の割合が昨年度の70.1%から70.9%で増加しており、eスポーツへの参加意向は微減の傾向が見受けられます。しかし、性年代別にみると、男性29歳以下では55.8%、男性30代では40.8%に現地での参加や観戦意向があり、関心の高さがうかがえます(図9、図10)。

(図9) 

*複数回答

(図10)  

*複数回答

【旅行に関する商品やサービスの利用について】

4. スマートフォンでの旅行商品の予約購入割合は、昨年より3.3ポイント増加し、6割をこえる。

 スマートフォンでの旅行関連商品の予約や購入については、2013年の調査開始以来継続して増加し、2024年調査では、6割を超えました(図11)。購入した旅行関連商品の内訳では、「宿泊施設」が引き続き伸び、他を引き離しています。また、コロナ禍で上昇した「航空券」、「イベントなどのチケット」、「現地の鉄道やバスの切符」、「国内空港までの電車やバスの切符」などのチケット類はやや減少傾向となりました(図12)。

(図11)                 (図12)

*いずれも複数回答

5. 無人サービスの利用意向は、40歳前後に壁。20~30代と40歳以降で大きく差がつく。

 次に、様々な分野で利用が進むAIサービスの利用について聞きました。利用経験あり(合算)は、昨年度の43.2%から5.8ポイント上昇し、49.0%と、半数近くとなりました。また、「通訳・翻訳サービス」や「チャットGPT」の利用が増加傾向となりました(図13)。

 旅行関連のAIサービスを利用した人が、どのように感じたかを聞いた質問では、「人より気軽に質問できる」が引き続き1位となっています。また、「自分では思いつかないところを提案してくれる」が大きく上昇したことが印象的です。それだけ、AIの精度が上がってきたということかもしれません(図14)。

 次に、AIには限らず、無人のサービスについての利用意向を聞きました。その結果、「自動会計」、「タブレットなどによる注文」、「観光施設への入場の自由化」、「入国審査の自動化」など、手続き関係が上位となりました(図15)。

また、年代別に利用意向をみると、いずれのサービスについても、39歳以下と40歳以上を比較すると、39歳以下の方が利用意向が高い傾向がみられました。無人サービスの利用については、40歳前後に壁が存在するようです(表2)。

(図13)  

*複数回答

(図14) 

*複数回答

(図15)

*複数回答

(表2) 年代別 無人サービスの利用意向(旅行関連サービスのみ抜粋)

*ぜひ利用したい・利用したいの合計

【まとめ】

●情報検索の方法に大きな変化

 インターネットが普及してから、これまで、主な情報検索の手段は、検索エンジンでのキーワード検索でした。しかしながら、昨年度の調査では、地図アプリやSNS、今年度の調査では、チャットGPTなどの生成AIでの情報検索が伸びていることがわかりました。これまでのSEO対策は、検索エンジンのアルゴリズムに合わせたコンテンツの作成に重点が置かれていましたが、これからは、網羅性や正確性、情報ソースの明記やファクトチェックの徹底など、より高品質で、ユーザーニーズをくみ取ったコンテンツ作成が重要となるのではないでしょうか。いずれにしても、情報提供のあり方そのものを見直してみる必要がありそうです。

●AIを含む「無人サービス」の利用意向は、年代で大きく異なる

 AIを含む、「無人サービス」の利用意向は、39歳以下と40歳以上で、大きな差があることがわかりました。サービスを提供する上では、ターゲットをどのように定めるかが、より重要となるのではないでしょうか。

 また、旅行関連のAIサービスについては、昨年度は、旅ナカでの利用(旅行中にわからないことを相談できる、ひとり旅でも困らない、など)が多い傾向でしたが、今年度の調査結果では、「自分では思いつかないところを提案してくれる」の回答割合が上昇しました。今後、AIがより高度化するにつれ、潜在的な需要が喚起されることが期待されます。一方で、これまで観光とは無縁だったコンテンツが求められる可能性もあると考えられます。旅行者が求める観光資源とは何かを、これまでの常識にとらわれず、再定義することも有効かもしれません。

●コロナ禍でのオンラインの普及で、eスポーツの認知度が大きく上昇

 コロナ禍でのオフラインからオンラインへの移行、巣ごもり需要の拡大によりYouTubeなどでの動画・ライブ配信視聴が増加したと考えられます。その中で、消費者とeスポーツの関係性が強まったということは、本調査の結果からも推察できます。一方で、eスポーツへの参加意向は昨年度より減少していることからも、コロナ禍で増加したライト層が少しずつ「eスポーツ離れ」を起こしている可能性も考えられます。今後、ライト層のeスポーツ離れを防ぐ(=eスポーツとの関係性を深めていく)ためには、動画投稿者やプロゲーマーなど「人」を起点として観戦・プレイを始めた人々に対して、いかにeスポーツやゲーム自体の興味・関心を持ってもらうかがポイントになってくるのではないでしょうか。


【調査概要】

調査方法:インターネットアンケート調査

実施期間:2024年11月6日~11月7日

調査対象者:(スクリーニング調査)首都圏、名古屋圏、大阪圏に住む18歳から69歳までの男女 10,000名

(本調査)スクリーニング調査回答者のうち、プライベートでスマートフォンを利用し、過去1年以内に1回以上の国内旅行(日帰りも含める)をしたことがある 1,030名


【お問い合わせ】

株式会社JTB総合研究所 経営企画部 広報担当

問合せフォーム:https://www.tourism.jp/contact/

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