ハロン湾は”汚い”とネットで頻繁に検索されている理由はなぜ? HOTTELの記者がわかりやすく簡単に解説

ベトナムの世界遺産として名高いハロン湾について、インターネットで検索すると「ハロン湾 汚い」という検索候補が表示されることがあります。これは多くの旅行者が実際に現地で体験した率直な感想を反映したものと考えられます。しかし、この問題の背景には複雑な要因が絡み合っており、単純に「汚い」という一言では片付けられない深い事情があるのです。

ハロン湾の汚染問題の現状と真実

ハロン湾の水質汚染問題は、残念ながら現実として存在しています。多くの観光客が海面に浮かぶペットボトル、ビニール袋、発泡スチロール製品、さらには油膜のような汚れを目撃しているのが実情です。2020年の調査では、ハロン湾では年間2万8000トン以上のプラスチック廃棄物が発生し、そのうち約5300トンが海に排出されていると推定されており、これは観光活動から毎日発生する34トンの廃棄物に相当するとされています。

この汚染問題は、世界的な旅行ガイドサイトでも取り上げられ、2024年には「一時的に訪問を停止する」べき主要な観光地として言及されるほど深刻化しています。観光客の中には、「巨大でひどいゴミの塊や小さな破片が散乱している」と報告する方もおり、期待していた美しい景観とのギャップに失望する声が多数寄せられています。

汚染の4つの主要原因

ハロン湾管理局の公式発表によると、汚染の原因は4つの主要な源から発生しているとされています。

水産養殖業からの廃棄物が第一の原因として挙げられています。2023年以降、当局は規定に違反する水産養殖活動を処理し、発泡スチロールから持続可能な材料への変更を指示しましたが、適時に収集されなかった発泡スチロールが海に流出し、島の根元やマングローブ林に漂着する事態が発生しています。

生活廃棄物が第二の原因です。プラスチック製の袋、食品容器、プラスチックボトルといった日常生活から出るゴミが海岸から湾に散乱しているのが現状です。

近隣地域からの流入ゴミが第三の要因となっています。年間を通じて、自然条件、潮流、風、流れの影響を受け、近隣地域からの廃棄物がハロン湾の世界遺産エリアに流れ込んでいます。

自然災害による影響も無視できません。最近の嵐の際に強風が山の木々から多くの枝や葉を海に流し込み、これらが自然のゴミの流れを形成しているとされています。

排水汚染の深刻な実態

水質汚染の問題は、固形廃棄物だけにとどまりません。ハロン湾沿岸にある一部の旧居住区では、生活排水処理システムが統一されておらず、処理されていない排水が環境に直接排出されているのが実情です。

2018年のユネスコ調査では、近隣の湖から毎日大量の汚染水が流入し、ハロン湾の汚染が深刻化していることが明らかになりました。湖周辺の2つの団地から生活排水が直接流れ込んでおり、湖では何年にもわたり魚の大量死が続いているという深刻な状況が報告されています。

また、ハロン湾では多くの水上交通手段が利用されており、中には旧式の漁船も含まれ、一部の住民は意識が低く、廃棄物や油を含む排水を直接環境に放出しているという問題も指摘されています。

観光客が体験する「がっかり」の実態

多くの観光客がハロン湾を訪れた際に感じる「がっかり感」には、汚染問題以外にも複数の要因が関係しています。

天候による影響は最も頻繁に遭遇する問題です。天気の悪い日にハロン湾を訪れると、エメラルドグリーンと言われる海は黒っぽく見え、見通しも最悪になってしまいます。霧などによって視界が悪いと、ハロン湾の岩々や小島がよく見えず、期待していた幻想的な絶景を楽しむことができません。

混雑問題も深刻です。世界中から観光客が訪れるハロン湾では、鍾乳洞に入るまで20分ほど待つこともあり、中に入った後も人ゴミで絶景の撮影が困難になることがあります。特に旧正月や夏休みなどのピークシーズンでは、クルーズ船まで混雑し、座る椅子がなかったり、一つの椅子に二人で腰掛けたりする状況も発生しています。

食事の質に関する不満も「がっかり感」の一因となっています。一部の格安ツアーでは、冷めた料理やボリューム不足、地元料理の魅力を感じられない内容が提供されることがあり、せっかくのツアー体験を台無しにしてしまうケースがあります。

当局の対策と取り組み

ハロン湾の環境問題に対して、当局も手をこまねいているわけではありません。クアンニン省では、ハロン湾の環境保護のために9つの包括的な措置を実施しています。

廃棄物収集の強化として、ゴミ収集のボートがゴミを回収する活動を行っており、2019年からはペットボトルやビニール袋を船内に持ち込むことを禁止する措置も講じています。ハロン湾管理委員会によると、3月以降、泡ブイを含む約1万立方メートルのゴミが収集されており、ゴミは毎日収集されているとのことです。

水上輸送機関の環境保護管理の強化も進められており、観光船の運航による環境負荷の軽減に取り組んでいます。

環境監視の強化啓発活動の多様化も重要な取り組みとして位置づけられており、観光客や地域住民の環境意識向上を図っています。

良い点とメリット

ハロン湾の汚染問題は確かに深刻ですが、この世界遺産には依然として多くの良い点メリットがあります。

自然の造形美は何物にも代えがたい魅力です。大小約1,600の島々が織りなす幻想的な景観は、天候に恵まれた日には息をのむような美しさを見せてくれます。エメラルドグリーンに輝く海に岩がそびえ立つ風景は、確かに世界遺産にふさわしい壮大なスケールを持っています。

アクセスの良さも大きな利点です。ハノイから車で3時間という立地は、ベトナム観光の拠点として非常に便利で、多くの旅行者にとって訪れやすい観光地となっています。

多様な観光体験が可能な点もおすすめできる要素です。クルーズ船での海上観光、鍾乳洞探検、カヤック体験など、様々なアクティビティを楽しむことができ、旅行者の多様なニーズに応えることができます。

文化的価値も見逃せません。1994年にユネスコ世界遺産に登録されたハロン湾は、ベトナムの貴重な文化遺産として、その歴史的・文化的価値を体験できる貴重な機会を提供しています。

悪い点とデメリット

一方で、ハロン湾観光には明確な悪い点デメリットも存在します。

環境汚染問題は最も深刻な欠点です。海面に浮かぶゴミや油膜は、観光体験を大きく損なう要因となっており、期待していた美しい景観とのギャップに失望する観光客が多数存在しています。

混雑による快適性の低下も重要なデメリットです。特にピークシーズンでは、人ゴミで落ち着いて景色を楽しむことができず、写真撮影も困難になることがあります。

天候依存性の高さおすすめしない理由の一つです。雨や霧の日には、ハロン湾の魅力を十分に体験することができず、せっかくの旅行が台無しになってしまう可能性があります。

ツアー品質のばらつきも問題です。格安ツアーでは食事の質が低かったり、ガイドの説明が不十分だったりすることがあり、満足度の低い体験となってしまうケースがあります。

おすすめしたい方とおすすめできない方

おすすめしたい方は、自然の造形美に感動できる方、多少の不便さを受け入れながらも世界遺産の価値を理解できる方、そして環境問題への意識を持ちながら観光を楽しめる方です。また、天候や混雑状況に左右されずに旅行を楽しめる柔軟性を持った方にも適しています。

おすすめできない方は、完璧な環境での観光体験を求める方、清潔で整備された観光地のみを好む方、そして混雑や待ち時間を極度に嫌う方です。また、環境汚染の現実を目の当たりにすることで気分を害してしまう可能性がある方にも、現時点では積極的におすすめすることは難しいと言えるでしょう。

今後の展望と課題

ハロン湾の環境問題は、ベトナム政府にとっても重要な課題となっています。多くのベトナム人観光客も、湾内の廃棄物問題が制御されなければ、ハロン湾は今後数年間でひどく汚染され、ユネスコが世界遺産の地位を剥奪することを検討する可能性があると懸念を表明しています。

今後の課題として、ハロン湾の景観保全と修復計画の策定、ハイフォン市人民委員会との協力による跨県管理政策の構築、観光活動と環境保護の両立、発生する廃棄物の管理と処理の改善などが挙げられています。

トラベルライターTAKAの独自考察

私がこの問題を深く調査した結果、ハロン湾の「汚い」という評価は、単純な環境問題を超えた複合的な課題であることが見えてきました。これは、急速な経済発展を遂げるベトナムが直面している「観光開発と環境保護のジレンマ」の象徴的な事例と言えるでしょう。

興味深いのは、汚染問題が観光客の期待値管理の問題でもあるという点です。多くの旅行者は、ポストカードのような完璧な景色を期待してハロン湾を訪れますが、現実の環境問題に直面することで「がっかり感」を抱いてしまうのです。しかし、これは逆に言えば、事前に現状を理解し、適切な期待値を持って訪れることで、より建設的な観光体験が可能になるということでもあります。

私は、ハロン湾の汚染問題を「隠すべき恥」ではなく、「共に解決すべき課題」として捉えるべきだと考えています。観光客一人ひとりが環境意識を持ち、現地の取り組みを理解し、可能な範囲で協力することで、この美しい世界遺産を次世代に残していくことができるのではないでしょうか。

また、旅行業界としても、格安ツアーの質の向上、環境教育の充実、持続可能な観光の推進など、様々な角度からのアプローチが必要です。ハロン湾の問題は、単なる一観光地の問題ではなく、グローバルな観光産業が直面している持続可能性の課題の縮図なのです。

最終的に、ハロン湾は確かに環境問題を抱えていますが、それでもなお訪れる価値のある世界遺産だと私は確信しています。重要なのは、現実を受け入れながらも、その美しさと価値を理解し、未来への希望を持ち続けることです。観光客として私たちができることは、現地の努力を支援し、環境に配慮した観光を心がけ、そして何より、この貴重な自然遺産を大切にする気持ちを持ち続けることなのです。