マリオットボンヴォイについて「値上げ」とネットでよく検索されている理由はなぜ? HOTTELの記者がわかりやすく簡単に解説
目次
旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター”TAKA”です。旅についての疑問や噂について真相をつきとめわかりやすく解説します。
最近、ネットで「マリオット ボン ヴォイ アメックス 値上げ」という検索ワードが頻繁に表示されるようになり、多くの旅行愛好家やクレジットカード利用者の間で話題になっています。今回の記事では、この現象の背景にある真実について、ネット上の情報を詳しく調査し、なぜこれほど多くの人がこの件について検索しているのか、その理由と影響について詳しく解説していきます。
結論:2025年8月の大幅な仕様変更が話題の中心
まず結論から申し上げますと、「マリオット ボン ヴォイ アメックス 値上げ」が検索される理由は、2025年8月5日にアメリカン・エキスプレスが発表した、マリオットボンヴォイ提携クレジットカードの大幅な仕様変更にあります。この発表により、年会費の大幅な値上げをはじめとした様々な変更が明らかになり、既存のカード保有者や入会を検討していた方々に大きな衝撃を与えたのです。
具体的には、マリオット ボンヴォイ アメリカン・エキスプレス・プレミアム・カードの年会費が現在の49,500円から82,500円へと約66%もの大幅値上げとなり、マリオット ボンヴォイ アメリカン・エキスプレス・カードも23,100円から34,100円へと約47%の値上げが発表されました。
この変更は単なる年会費の値上げだけにとどまらず、無料宿泊特典の獲得条件やプラチナエリートステータスの取得要件なども大幅に見直されており、多くの利用者にとって「改悪」と受け取られているのが現状です。
なぜこれほど大きな話題になったのか
マリオットボンヴォイカードの人気の背景
まず、なぜこの変更がこれほど大きな注目を集めているのかを理解するためには、マリオットボンヴォイアメックスカードが持つ人気の背景を知る必要があります。
マリオット・インターナショナルは世界最大級のホテルチェーンの一つで、リッツ・カールトン、ザ・ラグジュアリーコレクション、W ホテル、シェラトン、マリオット、コートヤード、フェアフィールド・イン&スイーツなど、約30のブランドを展開しており、世界約140の国と地域に8,000を超える施設を運営しているのです。
このようなホテル群で利用できるマリオットボンヴォイポイントを効率的に貯めることができ、さらにはエリートステータスを自動で付与してくれるのが、マリオットボンヴォイアメックスカードの大きな魅力でした。特に、プレミアムカードではゴールドエリートステータスが自動付与され、年間400万円(旧仕様)の決済でプラチナエリートへのアップグレードが可能だったため、高級ホテル好きの旅行者にとって非常に価値の高いカードとして人気を博していたのです。
ポイント還元率の高さと無料宿泊特典
また、このカードの人気の理由として、非常に高いポイント還元率が挙げられます。マリオット系列のホテルでの利用時には6%もの高還元率でポイントが貯まり、一般的な決済でも3%という他のクレジットカードと比較して非常に高い還元率を誇っていました。
さらに、年間150万円の決済で50,000ポイントまでの無料宿泊特典が獲得でき、追加で15,000ポイントを手出しすることで65,000ポイントまでのホテルに無料で宿泊することができるという特典も、多くの旅行愛好家にとって魅力的だったのです。
旅行業界における位置づけ
旅行業界において、ホテル系クレジットカードは「ホテル修行」と呼ばれるエリートステータス獲得を目的とした宿泊活動や、効率的なポイント獲得手段として非常に重要な位置を占めています。特に、マリオットボンヴォイアメックスカードは、その中でも最も人気が高く、陸マイラーと呼ばれるマイルやポイントを効率的に貯める愛好家たちの間では必携のカードとして認識されていました。
このような背景があったからこそ、今回の大幅な仕様変更は、単なるクレジットカード業界のニュースを超えて、旅行愛好家コミュニティ全体を震撼させる出来事となったのです。
具体的な変更内容の詳細分析
プレミアムカードの変更点
マリオット ボンヴォイ アメリカン・エキスプレス・プレミアム・カードの変更内容は、まさに「改悪」と呼ぶにふさわしい内容となっています。
最も大きな変更点は、前述した通り年会費の大幅値上げです。49,500円から82,500円への値上げは、33,000円もの増額となり、これまで比較的手が届きやすかった年会費帯から、完全にプレミアムカードの価格帯へと移行したことを意味します。
無料宿泊特典についても大幅な変更が加えられており、これまでの年間150万円決済から年間400万円決済へと大幅にハードルが上がっています。一方で、宿泊特典自体は50,000ポイントから75,000ポイントまで利用可能となり、追加ポイントと合わせて90,000ポイントまでのホテルに宿泊できるように改善されています。
プラチナエリートステータスの取得条件も、年間400万円決済から年間500万円決済へと、さらに高いハードルが設定されました。これは、一般的なクレジットカード利用者にとって非現実的な金額であり、真の富裕層向けカードへと性格を変えたと言えるでしょう。
一般カードの変更点
マリオット ボンヴォイ アメリカン・エキスプレス・カード(一般カード)についても、年会費が23,100円から34,100円へと約47%の値上げとなりました。
興味深いのは、一般カードについてはゴールドエリートステータスが自動付与されるようになったことです。これまでは年間100万円の決済でゴールドエリートが付与されていましたが、新仕様ではカード保有だけでゴールドエリートが得られるように改善されています。
無料宿泊特典については、年間150万円決済から年間250万円決済へと条件が厳しくなり、特典自体は35,000ポイントから50,000ポイントまで利用可能となり、追加ポイントと合わせて65,000ポイントまでのホテルに宿泊できるようになりました。
家族カードへの影響
見過ごされがちですが、家族カードの年会費にも大幅な値上げが適用されています。プレミアムカードでは2枚目以降の家族カード年会費が24,750円から41,250円へ、一般カードでは11,550円から17,050円へと大幅に値上げされており、家族でカードを保有していた方々にとっては、より大きな負担増となります。
その他の変更点と改善点
値上げばかりが注目されがちですが、一部には改善された点も存在します。
プレミアムカードには新たにポケットコンシェルジュというダイニング特典が追加され、所定のレストラン予約で20%のキャッシュバックが受けられるようになりました。これは高級レストランでの食事機会が多い利用者にとっては魅力的な特典と言えるでしょう。
また、一般カードでは海外での利用時のポイント還元率が2%から3%に、ホテル利用時の還元率が4%から5%に向上しており、海外旅行の機会が多い方にとってはメリットとなります。
しかし、これらの改善点を考慮しても、年会費の値上げ幅と比較すると、多くの利用者にとって全体的には改悪と感じられる内容となっているのが現実です。
良い点(メリット)の詳細分析
プレミアムな付加価値の強化
今回の変更で良い点として挙げられるのは、まさにアメリカン・エキスプレスが目指している「よりプレミアムな付加価値の提供」という方向性です。年会費の大幅値上げに伴い、カード自体のステータス性が向上し、真の富裕層向けカードとしての位置づけが明確になりました。
新しいプレミアムカードの年会費82,500円は、アメックス・プラチナカードに匹敵する水準となっており、これによりカード保有者の希少性が高まることは間違いありません。高級ホテルでの利用時に、より高いステータス性を感じられるようになるでしょう。
無料宿泊特典の質的向上
無料宿泊特典については、獲得条件は厳しくなったものの、利用可能ポイント数の上限が大幅に引き上げられたことは大きなメリットです。プレミアムカードでは75,000ポイント(追加ポイント利用で90,000ポイント)、一般カードでも50,000ポイント(追加ポイント利用で65,000ポイント)まで利用可能となりました。
これまでは50,000ポイント以下のホテルに限定されていたため、東京や京都などの人気都市部の高級ホテルでは利用できないケースが多くありました。しかし、新仕様ではザ・リッツ・カールトンクラスのホテルでも無料宿泊特典を利用できる可能性が高まり、一回の宿泊の価値が大幅に向上したと言えます。
ダイニング特典の追加
プレミアムカードに追加されたポケットコンシェルジュによるダイニング特典は、高級レストランを頻繁に利用する方にとって大きなメリットとなります。20%のキャッシュバックが受けられるこの特典は、月に数回高級レストランを利用する富裕層にとって、年会費の一部を相殺する効果も期待できます。
エリートステータスの自動付与改善
一般カードでゴールドエリートステータスが自動付与されるようになったことは、明確な改善点です。これまでは年間100万円の決済が必要でしたが、新仕様ではカード保有だけでゴールドエリートが得られるため、決済額に関係なくホテルでの優遇サービスを受けられるようになります。
ゴールドエリートステータスでは、部屋のアップグレード、午後2時までのレイトチェックアウト、ボーナスポイントの獲得などの特典があり、年に数回でもマリオット系列のホテルに宿泊する方にとっては価値のある特典と言えるでしょう。
悪い点(デメリット)の詳細分析
年会費の大幅値上げによる負担増
最大のデメリットは、やはり年会費の大幅値上げです。プレミアムカードの82,500円という年会費は、多くの一般的なカード利用者にとって現実的ではない水準となってしまいました。
これまでの49,500円という年会費であれば、年に数回の海外旅行や高級ホテル利用があれば十分に元を取ることができる水準でしたが、82,500円となると相当な高額決済と頻繁なホテル利用がなければペイしない計算になります。
無料宿泊特典獲得の高いハードル
プレミアムカードで年間400万円、一般カードで年間250万円の決済が無料宿泊特典獲得の条件となったことは、多くの利用者にとって現実的ではないハードルと言わざるを得ません。
年間400万円の決済は月平均で約33万円となり、これは住宅ローンや家賃、車のローンなどの固定費をすべてクレジットカードで支払い、さらに生活費のすべてをカード決済にしても到達が困難な金額です。一般的なサラリーマン家庭では、このハードルをクリアすることはほぼ不可能と言えるでしょう。
プラチナエリート獲得の非現実的な条件
プラチナエリートステータス獲得のための年間500万円決済という条件は、さらに非現実的な水準です。これは月平均で約42万円の決済が必要となり、相当な高額所得者でなければ達成できない金額となっています。
プラチナエリートステータスは、朝食無料、クラブラウンジアクセス、客室アップグレードなど、マリオット系列ホテルでの滞在を大幅に向上させる特典が含まれているため、これらの特典を享受できる層が極めて限定的になってしまったことは大きなデメリットです。
公共料金・税金決済の還元率低下
見落とされがちですが、公共料金や税金の支払い時のポイント還元率が大幅に低下していることも重要なデメリットです。プレミアムカードでは1.5%から0.5%に、一般カードでは1.0%から0.5%に還元率が下がりました。
これまで電気・ガス・水道などの公共料金や、住民税、固定資産税などの税金支払いで効率的にポイントを貯めることができていましたが、新仕様では他の一般的なクレジットカードと同程度の還元率となってしまい、ポイント獲得効率が大幅に低下しています。
事業用決済の対象外
これまでプレミアムカードで3%、一般カードで2%のポイント還元があった事業用決済が完全に対象外となったことも、事業者にとって大きなデメリットです。
個人事業主や中小企業経営者の中には、事業用の経費をマリオットボンヴォイアメックスで支払い、効率的にポイントを獲得していた方も多くいらっしゃいました。この層にとって、今回の変更はカード継続の意味を大きく失わせるものとなっています。
おすすめする人・おすすめしない人
おすすめする人の特徴
新仕様のマリオットボンヴォイアメックスカードをおすすめできるのは、以下のような方々です。
高額所得者で頻繁な海外旅行者:年収2,000万円以上の富裕層で、年に10回以上海外旅行をし、そのうち半分以上をマリオット系列のホテルで過ごすような方には、新仕様でも十分にメリットがあります。特に、ビジネスクラスでの海外出張が多い企業経営者などには価値の高いカードと言えるでしょう。
高級レストランの常連客:月に数回、一回あたり数万円の高級レストランでの食事をされる方にとって、ポケットコンシェルジュの20%キャッシュバック特典は大きな価値があります。年間で考えれば、この特典だけで年会費の一部を相殺できる可能性もあります。
ステータス重視の方:クレジットカードのステータス性を重視し、希少価値の高いカードを保有することに価値を見出す方には、新しいプレミアムカードは魅力的な選択肢となるでしょう。82,500円という年会費は、確実に保有者の希少性を高めることになります。
法人経営者で高額決済者:法人カードとしても利用でき、会社の経費で年間数百万円の決済を行う経営者の方には、依然として価値のあるカードです。ただし、事業用決済のポイント対象外化により、以前ほどの魅力はなくなっています。
おすすめしない人の特徴
一方で、以下のような方々には新仕様のカードはおすすめしないと言わざるを得ません。
一般的なサラリーマン世帯:年収500万円から1,000万円程度の一般的なサラリーマン家庭には、年会費82,500円のプレミアムカードは現実的ではない選択肢です。年会費を回収するだけの利用ができない可能性が高く、単なる負担となってしまうでしょう。
年に数回程度の旅行者:年に1〜3回程度の旅行で、必ずしもマリオット系列のホテルを利用するわけではない方には、高額な年会費に見合う価値を得ることができません。より年会費の安い一般的な旅行系クレジットカードの方が適しています。
ポイント効率重視の陸マイラー:これまでマリオットボンヴォイアメックスカードを、ポイント獲得効率の高さから選択していた陸マイラーの方々には、新仕様は明らかに不利となります。公共料金の還元率低下や事業用決済の対象外化により、ポイント獲得効率が大幅に低下しているためです。
コストパフォーマンス重視の方:クレジットカードにコストパフォーマンスを求める方には、新仕様は全く適していません。年会費に対する特典の価値が見合っておらず、他の選択肢を検討すべきでしょう。
決済額が年間200万円未満の方:年間の決済額が200万円に満たない方は、無料宿泊特典すら獲得できないため、高額な年会費を支払う意味がありません。より手頃な年会費で同程度の特典を得られる他のカードを選択すべきです。
既存会員への影響と対応策
移行スケジュールの詳細
既存のカード会員の方々にとって最も関心が高いのは、いつから新仕様が適用されるかということでしょう。アメリカン・エキスプレスが発表したスケジュールは以下の通りです。
2025年10月28日から、ポイント還元率などのサービス内容が新仕様に変更されます。これ以降、公共料金や税金の支払い時のポイント還元率が0.5%に低下し、事業用決済もポイント対象外となります。
2025年11月以降の請求分から、年会費が新しい金額で請求されます。つまり、現在カードを保有している方も、来年の更新時期には新しい年会費が適用されることになります。
2026年1月1日から、マリオットボンヴォイのエリートステータスに関する条件が新仕様に変更されます。2025年中にプラチナエリートを獲得したい方は、年内に500万円以上の決済を行う必要があります。
特別移行期間の活用
既存会員にとって朗報なのは、無料宿泊特典について特別移行期間が設けられていることです。
2026年10月26日まで、既存会員は年間150万円の決済で無料宿泊特典を獲得することができます。プレミアムカード保有者は75,000ポイント(追加15,000ポイントで90,000ポイント)まで、一般カード保有者は50,000ポイント(追加15,000ポイントで65,000ポイント)までのホテルに宿泊可能です。
この移行期間を活用すれば、2025年と2026年の2回、比較的達成しやすい条件で高価値の無料宿泊特典を獲得することができます。これは既存会員にとって大きなメリットと言えるでしょう。
解約を検討すべき場合
多くの既存会員の方が解約を検討されていることと思いますが、以下のような状況の方は解約を検討すべきかもしれません。
年間決済額が200万円に満たない方は、無料宿泊特典も獲得できず、年会費分の価値を得ることが困難です。また、これまで公共料金の支払いでポイントを効率的に貯めていた方も、還元率の低下により魅力が大幅に減少しています。
事業用決済でポイントを貯めていた個人事業主や経営者の方も、完全に対象外となったため、継続する意味が薄れています。
代替カードの検討
解約を検討される方には、以下のような代替カードが考えられます。
SPGアメックスカード(現在は新規募集停止)を保有していた方の感覚に近いカードとしては、ヒルトン・オナーズ VISAプラチナカードやANAアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カードなどが候補となるでしょう。
ポイント獲得効率を重視する方には、楽天プレミアムカードや三井住友カード ゴールド(NL)など、年会費が手頃で還元率の高いカードが適しているかもしれません。
ホテル系のステータスを重視する方には、ザ・プリンス クレジットカードやClub-A ゴールドカードなども検討の価値があります。
業界への影響と今後の展望
ホテル系クレジットカード市場への影響
今回のマリオットボンヴォイアメックスカードの大幅な仕様変更は、ホテル系クレジットカード市場全体に大きな影響を与える可能性があります。
これまでマリオットボンヴォイアメックスカードは、ホテル系クレジットカードの中でも最も人気が高く、業界のベンチマーク的存在でした。この影響力の大きなカードが富裕層向けにシフトすることで、他のホテル系カードもプレミアム化の方向に向かう可能性があります。
一方で、これまでマリオットボンヴォイアメックスカードのターゲットだった中間層の顧客は、他のホテル系カードに流れることが予想されます。これにより、ヒルトン・オナーズ系カードや、プリンスホテル系カードなど、他のホテル系カードの需要が高まる可能性があります。
陸マイラー・ポイ活市場への影響
陸マイラーやポイント活動を行う方々の市場にも、大きな変化をもたらす可能性があります。
これまでマリオットボンヴォイアメックスカードは、高い還元率と優秀な特典により、陸マイラーの間で「神カード」と呼ばれることもありました。しかし、今回の変更により、この層の多くが他のカードに移行することが予想されます。
これにより、楽天経済圏やPayPay経済圏など、より還元率の高い決済手段への注目が集まる可能性があります。また、複数のクレジットカードを使い分ける「多重申し込み」の傾向が強まるかもしれません。
富裕層市場での競争激化
一方で、富裕層向けのプレミアムクレジットカード市場では、競争が激化する可能性があります。
年会費82,500円という価格帯では、アメックス・プラチナカード、ダイナースクラブ プレミアムカード、JCBザ・クラスなど、既存の高級カードとの競合が避けられません。
マリオットボンヴォイアメックスカードが、これらの競合カードに対してどのような差別化を図り、富裕層の支持を獲得できるかが注目されます。特に、ホテル特典以外の付加価値をどれだけ提供できるかが重要になるでしょう。
旅行業界全体への波及効果
この変更は、旅行業界全体にも影響を与える可能性があります。
これまでマリオットボンヴォイアメックスカードを利用していた中間層の顧客が、マリオット系列のホテル以外を選択するようになる可能性があります。これにより、ヒルトン、IHG、アコーなどの競合ホテルチェーンにとっては、新規顧客獲得のチャンスとなるかもしれません。
また、国内ホテルへの注目も高まる可能性があります。海外の高級ホテルチェーンの敷居が高くなることで、星野リゾート、帝国ホテル、オークラホテルズなど、国内の高級ホテルブランドに注目が集まるかもしれません。
海外市場との比較
アメリカ市場での状況
興味深いことに、今回の変更は日本市場特有のものではなく、グローバルな戦略転換の一環と考えられます。
アメリカ市場では、すでに同様の高年会費・高特典の構造が定着しており、日本市場もそれに合わせた形での変更と推測されます。アメリカの富裕層にとって、年会費10万円程度のクレジットカードは決して珍しいものではなく、それに見合った特典が提供されていれば受け入れられる土壌があります。
ヨーロッパ市場での動向
ヨーロッパ市場でも、プレミアムクレジットカードの年会費は日本より高い水準で設定されることが一般的です。プライベートバンキングの文化が根付いているヨーロッパでは、富裕層向けの金融サービスに対して高い対価を支払うことが当然視されています。
アジア太平洋地域での展開
シンガポールや香港などのアジアの金融ハブでは、すでに高年会費のプレミアムカードが一般的となっており、今回の日本での変更も、こうしたグローバルスタンダードに合わせる動きと理解できます。
トラベルライター”TAKA”の独自考察と最終意見
ここからは、旅行業界を長年取材してきたトラベルライター”TAKA”としての独自の視点と考察をお伝えしたいと思います。
今回のマリオットボンヴォイアメックスカードの大幅な仕様変更を、単なる「改悪」として捉えるのは早計かもしれません。むしろ、これは旅行業界全体の構造変化を象徴する出来事として理解すべきだと考えています。
コロナ禍後の旅行業界の変化
コロナ禍を経て、旅行業界は大きな変化を遂げました。リベンジ消費という言葉に代表されるように、旅行に対する消費者の価値観が変化し、量より質を重視する傾向が強まっています。
これまでのように「安く多く旅行する」スタイルから、「多少高くても質の高い体験を求める」スタイルへのシフトが明確になってきています。マリオットボンヴォイアメックスカードの変更も、こうした消費者動向の変化に対応した戦略転換と見ることができます。
富裕層の囲い込み戦略
アメリカン・エキスプレスとマリオット・インターナショナルが目指しているのは、明らかに富裕層の囲い込みです。中間層の顧客を切り捨ててでも、真の富裕層に特化したサービスを提供することで、顧客単価の向上とブランド価値の維持を図っているのです。
これは、単なる利益追求ではなく、持続可能なビジネスモデルの構築という観点からも理解できます。価格競争に巻き込まれることなく、独自の価値を提供できる顧客層にフォーカスすることで、長期的な競争優位性を確保しようとする戦略と言えるでしょう。
日本の富裕層市場の成熟
日本の富裕層市場も確実に成熟してきており、高品質なサービスに対して適正な対価を支払う文化が定着しつつあります。プライベートバンキング、プライベートジェット、高級リゾートなどの市場が拡大していることからも、この傾向は明確です。
マリオットボンヴォイアメックスカードの変更も、こうした市場環境の変化を反映したものと考えられます。これまで日本市場特有の「お得感」を重視した設定だったものを、グローバルスタンダードに合わせることで、真の富裕層向けカードとして再定義しようとしているのです。
旅行の「民主化」から「プレミアム化」へ
戦後から長らく続いてきた旅行の「民主化」、つまり「誰もが気軽に旅行を楽しめる」時代から、旅行の「プレミアム化」の時代へと移行しているのかもしれません。
これは決して悪いことではありません。むしろ、それぞれの経済力や価値観に応じた多様な選択肢が用意されることで、より個人のニーズに合った旅行体験が可能になると考えています。
中間層向けの新たなソリューション
一方で、これまでマリオットボンヴォイアメックスカードを愛用してきた中間層の方々にとって、新たな選択肢が必要になることは間違いありません。
この層に対しては、国内ホテルブランドの充実や、地方の隠れた名宿の発掘、グランピングなどの新しい宿泊形態の普及など、異なる価値を提供するサービスが重要になってくるでしょう。
持続可能な旅行への注目
また、サステナブル・ツーリズム(持続可能な旅行)への注目も高まっており、単なる豪華さではなく、環境への配慮や地域社会への貢献を重視する旅行者も増えています。
このような価値観を持つ旅行者にとって、高額な年会費のクレジットカードよりも、地域密着型の宿泊施設やエコツーリズムなどの方が魅力的に映るかもしれません。
テクノロジーの活用による新たな体験
デジタル技術の進歩により、従来のホテル滞在とは全く異なる旅行体験も可能になってきています。VRやARを活用した観光体験、AIによる個別最適化されたサービス、IoTを活用したスマートルームなど、技術革新による新たな価値創造も期待されます。
最終的な評価と推奨
トラベルライター”TAKA”としての最終的な評価を述べるならば、今回のマリオットボンヴォイアメックスカードの変更は、時代の変化に適応した合理的な戦略転換だと考えています。
確かに、これまでの利用者の多くにとっては「改悪」と感じられる内容かもしれませんが、長期的な視点で見れば、それぞれの顧客層に最適化されたサービスの提供につながる可能性があります。
富裕層の方々にとっては、より質の高いサービスと希少性のあるステータスを得ることができ、中間層の方々にとっては、他の選択肢を検討する良いきっかけとなるでしょう。
旅行者への提言
最後に、旅行を愛するすべての方々に向けて、一つの提言をさせていただきたいと思います。
クレジットカードは、あくまでも旅行体験を豊かにするためのツールであり、目的ではありません。カード選びに迷うよりも、自分自身がどのような旅行体験を求めているかを明確にすることの方が重要です。
高級ホテルでの極上のサービスを求めるのか、地域の文化に触れる authentic な体験を求めるのか、家族との思い出作りを重視するのか。自分の価値観と経済状況に合った選択をすることが、最も満足度の高い旅行につながるはずです。
今回の変更を機に、改めて自分自身の旅行スタイルと価値観を見つめ直し、それに最も適した決済手段やサービスを選択されることをおすすめします。そうすることで、きっと今まで以上に充実した旅行体験を得ることができるでしょう。
旅行の本質的な価値は、どのようなカードを持っているかではなく、どのような体験をし、どのような思い出を作るかにあることを、忘れないでいただきたいと思います。