クリアルホテルズ株式会社の新ブランド「VAYS(ヴェイズ)」とは?メリットやデメリットなどHOTTELの記者がわかりやすく解説
旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター”TAKA”です。2025年11月に発表されたばかりのクリアルホテルズ株式会社による新ブランド「VAYS(ヴェイズ)」について、詳しくご紹介していきたいと思います。このブランドは、不動産投資で知られるクリアル株式会社のグループ会社であるクリアルホテルズが、既存ブランド「LACER(レイサー)」に続いて立ち上げた第二のホテルブランドとのことです。まだ実際に開業している施設はないものの、今後4年間で50棟という大規模な展開計画が発表されており、宿泊業界から大きな注目を集めているようです。
結論:VAYSは上質でラグジュアリーな次世代型ホテルブランド
結論から申し上げますと、VAYS(ヴェイズ)は、「自分だけの自由で特別な体験」をコンセプトに掲げた、デザイン性を重視した上質でラグジュアリーな空間と、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した快適な滞在を提供する、中価格帯から高価格帯をターゲットとしたホテルブランドと言えるようです。
ブランド名の「VAYS」は、Vacation(休暇)× Innovation(革新)× Ways(道、方法)を組み合わせた造語となっており、「独自のいろいろな道(Ways)を創造し、新しい価値を提供する集団(S)であり続ける」というブランドテーマが込められているとのことです。これは単なるホテルではなく、旅行者一人ひとりに合わせた特別な宿泊体験を提供したいという強い想いが感じられる命名ですね。
クリアルホテルズは2024年7月に設立されたばかりの新しい会社で、同年11月には沖縄に「LACER OKINAWA NAHA MIEBASHI(レイサー沖縄那覇美栄橋)」と「LACER OKINAWA NAHA TOMARIPORT(レイサー沖縄那覇泊ふ頭)」という2つのホテルをオープンさせており、12月には「ホリデイ・イン&スイーツ新大阪」の運営受託も行うなど、矢継ぎ早にホテル事業を拡大している状況のようです。
そして今回発表されたVAYSは、既存のLACERブランドで得たノウハウをもとに、より高価格帯のセグメントを狙った新たなブランドとして位置づけられているとのことです。
VAYSブランドの具体的な特徴とコンセプト
VAYSブランドの最大の特徴は、「ハイグレードアパートメントホテル」や「プライベートヴィラ」を中心とした施設展開を予定している点にあるようです。
従来の一般的なホテルとは異なり、まるで自宅のように過ごせる居住性の高い空間を提供しながら、同時にホテルならではの上質なサービスも享受できるという、いわば「暮らすように泊まる」というコンセプトを体現したものと言えるでしょう。
特に注目すべきは、クリアルホテルズが得意とするDX(デジタル技術)の活用です。すでに運営しているLACERブランドのホテルでは、モバイルキーやモバイルチェックイン・アウト、無人フロント運営などが導入されており、宿泊者は人との接触を最小限に抑えながら、スムーズにチェックインからチェックアウトまでを完了できる仕組みが整備されているとのことです。
このような先進的な技術を活用することで、従来のホテルでは煩わしかった手続きを簡素化し、より自由で快適な滞在を実現しているのだそうです。VAYSブランドでも同様に、あるいはさらに進化したDXの仕組みが導入されることが予想されます。
また、施設の規模についても特徴的です。2025年11月時点で発表されているVAYSの開業予定施設を見ると、客室数は11室から36室程度という比較的コンパクトな規模が中心となっているようです。大規模なホテルではなく、きめ細やかなサービスと上質な空間を提供できる中小規模の施設に重点を置いた戦略と言えるでしょう。
VAYSホテルの開業予定一覧
2025年11月現在発表されているVAYSブランドの開業予定施設は以下の通りとのことです。
- 銀座ホテルプロジェクト①:2027年4月開業予定、客室数12室
- 上野ホテルプロジェクト:2027年9月開業予定、客室数18室
- 箱根仙石原プロジェクト:2027年4月開業予定、客室数11室
- 八丁堀ホテルプロジェクト:2026年12月開業予定、客室数16室
- 銀座ホテルプロジェクト②:2027年1月開業予定、客室数18室
- 博多ホテルプロジェクト:2027年6月開業予定、客室数28室
- 新橋ホテルプロジェクト:2027年10月開業予定、客室数36室
- 西麻布ホテルプロジェクト:2027年8月開業予定、客室数36室
- 札幌ホテルプロジェクト:2027年9月開業予定、客室数27室
- 京都八条口ホテルプロジェクト:2027年9月開業予定、客室数24室
これらの立地を見ると、東京の銀座、上野、八丁堀、新橋、西麻布といった都心部のビジネス・観光エリア、箱根仙石原のような温泉リゾート地、福岡の博多、札幌、京都といった地方の主要観光都市と、非常にバランスの取れた展開計画となっているようです。
特に興味深いのは、最初の開業が2026年12月の八丁堀からスタートし、その後2027年にかけて集中的に全国各地でオープンしていく計画となっている点です。これだけの規模を短期間で展開するのは相当な資金力と運営ノウハウが必要となりますが、クリアルグループの不動産投資での実績とネットワークを活かせば実現可能なのかもしれませんね。
ターゲット層とVAYSが目指す顧客像
VAYSブランドがターゲットとしている顧客層については、公式発表では具体的な年齢層などは明示されていないものの、「デザイン性を重視した上質でラグジュアリーな空間」「本質的な宿泊体験価値の提供」というキーワードから、ある程度推測することができるようです。
まず、インバウンド(訪日外国人観光客)需要への対応が大きな柱となっているようです。クリアルホテルズの第一弾ブランドであるLACERも、インバウンドや家族、グループ旅行などの需要に対応した最大6名まで宿泊可能な広々とした客室を売りにしており、VAYSでも同様に海外からの旅行者を重要な顧客として想定していると考えられます。
また、「ハイグレードアパートメントホテル」や「サービスアパートメント」という業態からは、短期滞在だけでなく中長期滞在のニーズにも対応していることが伺えます。ビジネス目的で数週間から数ヶ月滞在する方や、ワーケーション(仕事と休暇を組み合わせた滞在スタイル)を楽しむ方、さらには家族連れでゆっくりと地域を楽しみたい方など、多様なニーズに応えられる柔軟性を持った宿泊施設を目指しているのでしょう。
価格帯については、LACERブランドが中価格帯をメインとしているのに対し、VAYSは「限定的/セルフ型(DX運営ベース)」と「高価格帯」を組み合わせた新しいポジショニングを狙っているとのことです。つまり、人的サービスを最小限に抑えることで運営コストを削減しつつ、その分を施設の上質化やデザイン性の向上に投資し、結果として適正な価格で高品質な宿泊体験を提供するというビジネスモデルと言えるでしょう。
LACERブランドとの違いについて
同じクリアルホテルズが運営するLACERブランドとVAYSブランドの違いについても触れておきましょう。
まず、LACERブランドは「フランス語で『結ぶ』という意味があり、お客様とクリアルを『結ぶ』場となるホテル」というコンセプトで、「先進的で、近未来の、新しい宿泊体験をもたらす無駄のない、本質的な顧客価値の提供」を掲げているとのことです。
実際に運営されているLACER沖縄那覇のホテルを見ると、客室面積が28.5㎡〜123㎡と幅広く、最大6名まで宿泊可能なファミリールームやグループルームを中心に構成されており、キッチン、電子レンジ、洗濯乾燥機などの生活設備が充実している点が特徴のようです。特に最上階のスイートルームには、本格的なバレルサウナやジャグジー、BBQスペースを備えたテラスがあり、特別な体験を提供しているとのことです。
一方、VAYSブランドは、LACERの運営で見えてきた新たなニーズに応えるために立ち上げられたものとされており、よりデザイン性やラグジュアリー感を重視した空間づくりが特徴となるようです。
簡単に整理すると、以下のような違いがあると考えられます。
- LACER:実用性重視、多人数宿泊対応、中価格帯、インバウンド・家族・グループ旅行がメインターゲット
- VAYS:デザイン性・上質感重視、アパートメントホテル・ヴィラタイプ、中〜高価格帯、特別な体験を求める層がメインターゲット
つまり、より幅広い顧客層に対応するために、異なるコンセプトの2つのブランドを展開していく戦略と言えるでしょう。
ネット上での評判や口コミについて
VAYSブランドについては、2025年11月に発表されたばかりで、まだ実際の施設がオープンしていないため、直接的な宿泊者の口コミや評判は存在しない状況です。しかし、同じクリアルホテルズが運営するLACERブランドのホテルについては、すでに多くの口コミが投稿されているようですので、そちらを参考にVAYSの今後を予想することができるかもしれません。
LACERブランドの「レイサー沖縄那覇美栄橋」と「レイサー沖縄那覇泊ふ頭」の口コミを見ると、総じて好意的な評価が多いようです。
良い評価としては以下のような声が見られるとのことです。
- 「ホテルはとても便利で、清潔でした」
- 「部屋がとても綺麗で、みんなで大きなスクリーンで動画を見れたのもすごく楽しかったです」
- 「清潔感があって広くてすごく快適に過ごせました」
- 「広々とした部屋、モダンな設備」
- 「バスタブ付きバスルーム。お部屋ではプロジェクターで映像コンテンツをお楽しみいただけます」
- 「洗濯と乾燥機まで無料で使えたところです。洗濯洗剤までありました」
特に、部屋の清潔さ、広さ、設備の充実度については高く評価されているようです。また、無料で使える洗濯機や乾燥機、プロジェクターなどの設備も好評のようですね。
一方で、いくつかの改善点も指摘されているようです。
- 「現地でタブレットでのチェックインに手間取った」
- 「駐車場に関して不便」
- 「夜20時以降は満車になりやすい」
特に、無人フロント運営ゆえのチェックイン時の戸惑いや、駐車場がホテル専用ではなく近隣のコインパーキングを利用する必要がある点などは、一部の利用者から不便さを指摘する声があるようです。
ただし、チェックインに関しては「実際は電話一本で手続きが済み、部屋番号とパスワードを教えてもらえました」との声もあり、サポート体制は整っているようです。また、施設側も口コミを真摯に受け止め、「よりスムーズなチェックイン体験のために、引き続きガイダンスの改善に努めてまいります」といった返信をしているとのことで、継続的な改善姿勢が感じられます。
このLACERブランドの評価から推測すると、VAYSブランドでも、施設の清潔さや設備の充実度、DXを活用した利便性などは高く評価される可能性が高い一方で、無人運営ゆえの初回利用時の戸惑いや、立地によっては駐車場の問題などが指摘される可能性もあるかもしれませんね。
VAYSブランドのメリット(良い点)
それでは、VAYSブランドのメリットや利点について詳しく見ていきましょう。
1. デザイン性と上質な空間
VAYSの最大のメリットは、なんといっても「デザイン性を重視した上質でラグジュアリーな空間」を提供している点でしょう。通常のビジネスホテルとは一線を画す、洗練されたインテリアデザインと快適な居住空間が期待できるとのことです。旅行中であっても、まるで高級マンションに住んでいるかのような特別な気分を味わえるのは大きな魅力と言えるでしょう。
2. DX活用による自由で快適な滞在
モバイルキーやモバイルチェックイン・アウト、無人フロント運営などのDX技術を活用することで、従来のホテルのように決まった時間にフロントに行く必要がなく、自分のペースで自由に入退室できる利便性は大きなおすすめポイントです。特に早朝や深夜に到着・出発する方、人との接触を最小限にしたい方にとっては理想的なシステムと言えるでしょう。
3. アパートメントホテルならではの設備充実度
キッチンや電子レンジ、冷蔵庫、洗濯乾燥機などの生活設備が充実している点も大きなメリットです。特に中長期滞在や家族旅行の場合、毎食外食するのは経済的にも体力的にも負担が大きいものですが、自炊ができれば大幅にコストを抑えられますし、小さなお子様がいる家族にとっても安心ですね。また、洗濯機があることで荷物を最小限に抑えられるのも嬉しいポイントでしょう。
4. 多様な立地展開
銀座、上野、箱根、博多、札幌、京都といった、都市部から観光地まで多様なエリアでの展開が予定されている点も魅力的です。ビジネス目的でも観光目的でも、自分の目的地に合わせてVAYSブランドのホテルを選べる可能性が高まるでしょう。
5. 適正な価格設定
DXによる運営効率化によって人件費を抑えつつ、その分を施設の質向上に投資することで、高品質ながらも比較的リーズナブルな価格設定を実現していると考えられます。通常のラグジュアリーホテルと比べて、コストパフォーマンスに優れた宿泊ができるのは大きな利点と言えるでしょう。
6. インバウンド対応
多言語対応のDXシステムを導入することで、日本語が話せない外国人旅行者でもスムーズに利用できる環境が整っているようです。グローバルな視点でのサービス設計は、これからの時代に必要不可欠な要素と言えるでしょう。
VAYSブランドのデメリット(気になる点)
一方で、VAYSブランドにも注意すべき点や欠点がいくつか考えられます。
1. 人的サービスの限定性
無人フロント運営やDXを活用した省人化運営のため、従来のホテルのようなきめ細やかな対面サービスは期待できない可能性があります。何か困ったことがあったときに、すぐに顔を見て相談できるスタッフがいないことに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。特にご高齢の方や、デジタル機器の操作に慣れていない方にとっては、おすすめしにくい点と言えるでしょう。
2. 初回利用時の戸惑い
LACERブランドの口コミでも見られたように、無人チェックインシステムに初めて触れる方は、最初は戸惑う可能性があるようです。特に疲れた状態で到着したときに、慣れないシステムと格闘するのはストレスになるかもしれません。事前に操作方法をしっかり確認しておく必要があるでしょう。
3. 駐車場の問題
立地によっては、ホテル専用の駐車場がなく、近隣のコインパーキングを利用する必要がある場合があるようです。特に観光シーズンや週末などは満車になることもあり、駐車場を探すのに苦労する可能性があります。車での旅行を計画している方は、事前に駐車場情報を確認しておくことをおすすめします。
4. まだ開業していない
2025年11月時点では、VAYSブランドのホテルはまだ一棟も開業していません。最初の開業が2026年12月予定ということで、実際の施設を体験できるまでにはまだ時間がかかる状況です。そのため、実際のサービス内容や品質については、現時点では推測の域を出ないという欠点があります。
5. 客室数が限られる
発表されている施設はいずれも11室〜36室程度と比較的小規模であるため、人気が高まると予約が取りにくくなる可能性があります。特に観光シーズンや連休時などは、早めの予約が必須となるかもしれませんね。
VAYSをおすすめしたい方
以上のメリット・デメリットを踏まえて、VAYSブランドのホテルをおすすめしたい方は以下のような方々です。
- デザイン性の高い上質な空間で過ごしたい方:洗練されたインテリアや快適な居住空間を重視する方
- 自由で快適な滞在を求める方:チェックイン・アウトの時間に縛られず、自分のペースで過ごしたい方
- 中長期滞在を予定している方:キッチンや洗濯機などの生活設備を活用して、まるで暮らすように滞在したい方
- 家族やグループでの旅行:広めの客室でゆったりと過ごしたい家族連れやグループ旅行
- デジタル機器の操作に慣れている方:スマートフォンやタブレットを使ったチェックイン・入室に抵抗がない方
- コストパフォーマンスを重視する方:高品質ながらも比較的リーズナブルな価格で宿泊したい方
- 新しい体験を楽しみたい方:従来のホテルとは異なる、最新のホテルスタイルを体験してみたい方
VAYSをおすすめしにくい方
逆に、以下のような方にはあまりおすすめできないかもしれません。
- 対面でのきめ細やかなサービスを重視する方:常駐スタッフによる丁寧な接客を期待する方
- デジタル機器の操作が苦手な方:スマートフォンやタブレットの操作に不慣れな方、ご高齢の方
- 初めての土地で不安がある方:何かあったときにすぐに相談できるスタッフの存在を重視する方
- 車での移動で専用駐車場が必須の方:ホテル専用駐車場がないことに不便を感じる方
- 伝統的なホテルサービスを求める方:昔ながらのホテルのホスピタリティを期待する方
Q&A:VAYSについてのよくある質問
Q1. VAYSはいつから泊まれるのですか?
A1. 最初の開業は2026年12月の八丁堀ホテルプロジェクトとなる予定のようです。その後、2027年1月に銀座、2027年4月に箱根仙石原と銀座、続々と全国各地でオープンしていく計画となっているとのことです。
Q2. 料金はどのくらいになりますか?
A2. 具体的な料金設定はまだ発表されていないようですが、「中価格帯から高価格帯」をターゲットとしているとのことです。LACERブランドよりは高めの価格設定になる可能性がありますが、通常のラグジュアリーホテルと比べれば比較的リーズナブルな価格になると予想されます。
Q3. LACERとVAYSはどう違うのですか?
A3. LACERは多人数宿泊対応で実用性を重視した中価格帯のブランドであるのに対し、VAYSはデザイン性やラグジュアリー感を重視した中〜高価格帯のブランドという位置づけのようです。より特別な体験を求める方にはVAYS、実用性とコストパフォーマンスを重視する方にはLACERがおすすめと言えるでしょう。
Q4. 本当に無人フロントで大丈夫なのですか?
A4. 無人フロントといっても、電話サポートなどのバックアップ体制は整っているようです。LACERブランドの口コミでも、困ったときには電話で丁寧にサポートしてもらえたという声が見られます。ただし、対面での即座の対応を期待する方には向いていないかもしれません。
Q5. 外国人でも利用できますか?
A5. むしろインバウンド需要を大きなターゲットとしているブランドですので、多言語対応のシステムが整っていると考えられます。外国人旅行者でも安心して利用できるよう配慮されているでしょう。
Q6. どのエリアに開業予定ですか?
A6. 東京(銀座、上野、八丁堀、新橋、西麻布)、箱根仙石原、福岡(博多)、札幌、京都と、都市部から観光地まで幅広いエリアでの展開が予定されているようです。
Q7. 予約はいつから可能になりますか?
A7. 具体的な予約開始時期はまだ発表されていないようですが、LACERブランドの例を見ると、開業の数ヶ月前から予約受付が始まる可能性が高いでしょう。公式サイトやSNSをこまめにチェックすることをおすすめします。
トラベルライターTAKAの考察と意見
最後に、トラベルライターとしての私の考察と意見を述べさせていただきたいと思います。
VAYSブランドの発表は、日本のホテル業界における一つの大きな転換点を示しているのではないかと感じています。従来の日本のホテル業界は、大手チェーンによる画一的なサービスか、個人経営の小規模な宿泊施設という二極化が進んでいましたが、VAYSのような「デザイン性の高さ」と「DXによる効率化」を両立させた新しいタイプのホテルブランドは、これまであまり見られなかったポジショニングと言えるでしょう。
特に注目すべきは、クリアルホテルズが不動産投資会社であるクリアル株式会社をバックに持っているという点です。通常のホテル運営会社とは異なり、物件の取得から開発、運営、そして投資家への還元まで、一貫したバリューチェーンを構築できる強みがあるようです。これにより、通常よりも柔軟で迅速な事業展開が可能になっていると考えられます。
また、「今後4年間で50棟を開業する」という野心的な計画も、単なる理想論ではなく、裏付けのある実現可能な目標として捉えているからこその発表なのでしょう。不動産クラウドファンディングという資金調達手段を持っているクリアル社だからこそ、このような大規模な展開計画を打ち出せるのかもしれません。
一方で、課題もあるように思います。最も大きな課題は、「人的サービスの最小化」と「顧客満足度の維持」をいかに両立させるかという点でしょう。DXによる効率化は確かに魅力的ですが、旅行という非日常の体験においては、人間的な温かみのあるサービスが重要な価値を持つこともまた事実です。
この点について、私は「ターゲットの明確化」が成功の鍵になると考えています。すべての旅行者に対して完璧なサービスを提供しようとするのではなく、「デジタルネイティブ世代」「効率性を重視する層」「新しい体験を求める層」といった、VAYSのコンセプトに共感してくれる顧客層にしっかりとフォーカスすることで、強固なブランドイメージを構築できるのではないでしょうか。
また、2026年12月からの開業という比較的近い将来のスケジュールも、現実的で好感が持てます。あまりにも先の話では絵に描いた餅になってしまいますが、1年程度の期間があれば、旅行者としても計画を立てやすいですし、事業者側も着実に準備を進められるでしょう。
さらに、立地選定についても非常に戦略的だと感じました。銀座や京都といった国内外から人気の観光地、上野や新橋といったビジネス需要の高いエリア、そして箱根のようなリゾート地と、それぞれ異なる特性を持つエリアにバランスよく展開することで、様々な顧客ニーズに対応できる体制を整えようとしているようです。
特に箱根仙石原への展開は注目に値します。箱根は日本を代表する温泉リゾート地であり、外国人観光客にも非常に人気の高いエリアです。このような場所に「プライベートヴィラ」タイプの施設を展開すれば、富裕層を含む幅広い層からの支持を得られる可能性が高いでしょう。
個人的には、VAYSブランドの成功には「ストーリー性のある空間づくり」が重要になってくると考えています。単に綺麗でモダンなデザインというだけでなく、その場所ならではの文化や歴史、地域性を反映した独自のデザインコンセプトを確立することで、「VAYSに泊まること自体が特別な体験」という価値を生み出せるのではないでしょうか。
例えば、京都の施設であれば伝統的な京町家の要素を現代的に解釈したデザイン、銀座の施設であれば洗練された都会的なモダンデザイン、箱根の施設であれば自然と調和した和モダンなデザインといったように、それぞれの立地に合わせた個性的な空間づくりができれば、単なる宿泊施設ではなく、「その土地を体験する場所」としての価値が生まれるはずです。
また、DXの活用についても、単なるコスト削減のためのツールとしてではなく、「新しい宿泊体験を創造するためのツール」として位置づけることが重要だと思います。例えば、AIによるパーソナライズされたおすすめ情報の提供、VRを使った周辺観光地の事前体験、スマートホーム技術を使った快適な室内環境の自動調整など、テクノロジーだからこそ実現できる価値を積極的に取り入れていくことで、VAYSならではの独自性を確立できるのではないでしょうか。
そして何より、クリアルホテルズには「失敗を恐れずチャレンジする姿勢」を大切にしてほしいと願っています。新しいブランドを立ち上げるということは、必ずしもすべてが順調に進むわけではなく、試行錯誤の連続になるはずです。しかし、顧客の声に真摯に耳を傾け、柔軟に改善を重ねていくことで、日本の宿泊業界に新しい風を吹き込むブランドに成長していく可能性を秘めていると感じています。
2026年12月の最初の開業が今から非常に楽しみです。トラベルライターとして、実際にVAYSブランドのホテルに宿泊し、その体験を皆様にお伝えできる日を心待ちにしています。日本の宿泊業界に新たな選択肢が生まれることは、旅行者にとっても、業界全体にとっても、大きなプラスになるはずです。VAYSブランドの今後の展開に、大いに期待したいと思います。








