ホテルや旅館などで使われる業界用語「FIT(エフアイティー)」とは?HOTTELの記者がわかりやすく解説
旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター”TAKA”です。旅についての疑問や噂について真相をつきとめわかりやすく解説します。
今回のテーマは、ホテルや旅館の業界で使われる言葉「FIT(エフアイティー)」についてです。この言葉は、日本の観光産業において非常に重要になりつつある概念なのですが、日本国内の一般的な旅行者の中では、まだまだ認知度が低いのが実情です。しかし、皆さんが旅行の計画を立てたり、ホテルで過ごすときに、実は知らず知らずのうちにこの「FIT」というカテゴリーに分類されている可能性もあります。今回は、このFITとは何か、そしてそれがホテルや旅館の経営にどのような影響を与えているのか、その真相に迫ってみたいと思います。
FITとは何か:基本的な定義と意味
さっそく本題に入りましょう。FIT(エフアイティー)という言葉は、旅行業界では「Foreign Independent Tour」または「Foreign Independent Tourist」の頭文字をとった略語です。また「Free Individual Traveler」と訳されることもあります。簡潔に述べるのであれば、パッケージツアーや団体旅行を利用することなく、自分で航空券やホテルを手配し、自分のペースで目的地を選び、自由に旅行する人たち、またはその旅行スタイルそのものを指す言葉だと言えます。
ホテルや旅館の業界では、団体旅行客のことを「GIT(Group Inclusive Tour)」と呼ぶのに対して、FIT客は個人で手配した旅行者を意味するのです。この対比図が理解の助けになるのですが、GITは旅行会社がパッケージ化した航空券、ホテル、食事、ガイドなどすべてがセットになっている状態で、団体割引が適用されていることが多いです。一方、FITはそのようなセット販売ではなく、自分が欲しいサービスだけを個別に手配するため、料金は割引が適用されず、むしろ単価は高くなる傾向があるのです。
日本の旅行業界で、このFITという概念が注目され始めたのは、海外旅行の自由化が進み、インターネットが普及した1990年代後半からのことです。それまで海外旅行は、添乗員が同行するパッケージツアーが主流でしたが、旅行経験者が増えるにつれ、自分たちのペースで旅行をしたいというニーズが高まってきたのです。
結論:FIT時代の到来と旅館・ホテル業界への影響
ここで重要な結論を示すのであれば、現在、訪日外国人観光客の6割以上はFIT客であり、この傾向はますます強まっていくと考えられています。さらに驚くべき事実として、観光庁のデータを見ると、日本国内で消費するお金の額も滞在期間も、実はGIT客(団体ツアー客)よりもFIT客のほうが圧倒的に多いということが判明しています。団体客の平均泊数が4.7泊であるのに対し、FIT客の平均泊数は15.1日と、実に3倍以上の差があるのです。つまり、数字で見る限り、ホテルや旅館の収益を大きく左右するのはGIT客ではなく、むしろFIT客になってきているということなのです。
このようなデータから推測すると、これからの旅館やホテルの経営戦略は、FIT客を如何に上手く呼び込み、満足させるか、そしてリピーターにするかという点に集中していくべきだということが見えてきます。実際、多くの旅館やホテルのマネジメント層は、団体客向けの施策よりも、FIT客向けの施策により多くのリソースを割いている傾向が見られているのです。
FIT客の特徴:旅慣れた情報収集家たち
それでは、FIT客とは具体的にどのような人たちなのでしょうか。これを理解することが非常に大切なのです。
FIT客の最大の特徴として挙げられるのは、彼らは旅行に関する情報収集能力に極めて長けているという点です。旅行前から旅行中にかけて、彼らはスマートフォンやタブレット、パソコンなどを活用して、インターネットを通じて積極的に情報を収集します。インスタグラムやフェイスブック、ツイッターといったソーシャルメディアプラットフォームを利用して、リアルタイムで情報を発信・受信することが習慣化しているのです。
さらに、FIT客の特徴として、まだ世間的には有名でないスポットや隠れた名所を見つけることに非常に敏感であることが挙げられます。彼らは定番の観光地よりも、地域の奥深い文化や、地元の人しか知らないような飲食店、そして普通の観光ガイドに載っていないような体験を求める傾向があります。そして、そうした良い体験をした場合、彼らはそれをソーシャルメディアを通じて発信するのが大好きです。一人の好意的な口コミが、世界中に拡散される可能性があるということなのです。
歴史的背景を見ると、かつての日本への訪問客の大多数は、ツアーに参加する団体客でした。しかし、海外旅行の経験者が増えるにつれ、また個人の旅行の多い欧米からの来訪客が増えるにつれ、FITの割合は年々高まってきたのです。特に、アジア圏からの観光客も、訪日が2回目以降になるとFIT化する傾向が非常に強いということが指摘されています。
滞在期間と消費行動:FIT客の圧倒的な経済力
FIT客とGIT客を比較する際に最も顕著な違いが、滞在期間の長さと旅行中の消費額の大きさです。
澤の屋旅館という小規模の旅館が実施した調査によると、訪日FIT客の日本滞在日数は平均17.3日であり、その旅館への滞在日数は平均3.6日だったということです。これは、複数の異なる宿泊施設に複数回の連泊をする、という旅行スタイルを示唆しています。さらに驚くべきことに、訪問先での利用宿泊施設としては、「旅館」が34.8%と最も高く、次いで「ホテル」が19.1%だったということです。つまり、外国人FIT客は、日本の伝統的な旅館体験を非常に高く評価しており、わざわざ旅館に泊まるために日本を訪れる人も少なくないということなのです。
消費金額に関しては、観光庁の統計によると、日本国内での訪日外国人1人当たりの旅行支出は、団体ツアー客(GIT)よりもFIT客のほうが有意に高いとされています。これは、FIT客が個人の自由な判断で、高級なレストランで食事をしたり、現地でのアクティビティに参加したり、あるいは高級な宿泊施設に泊まったりする傾向があることを示しています。さらに、彼らは複数の地域を訪問する傾向があるため、トータルの消費額が自動的に増えてくるわけです。
地域別に見ると、FIT客が訪問する先としては、東京や京都、大阪といった大都市だけでなく、金沢や広島、そして奥の深い地方都市へも足を運ぶということが明らかになっています。北陸新幹線の開通により金沢への訪問が増えたことや、世界遺産である原爆ドームなど、歴史的意義のある地域への関心が高いことが、このような分散型の訪問パターンを生み出しているのです。
FIT客のメリット(良い点):ホテル・旅館にとってのプラス面
ホテルや旅館の経営者からすると、FIT客を積極的に受け入れることには、実は数多くのメリットがあります。
まず最初に挙げられるメリットとしては、FIT客の高い満足度と口コミの力です。FIT客は、ホテルや旅館での体験を、ソーシャルメディアを通じて世界中に発信する傾向があります。特に、良い体験をした場合、彼らは自発的に美しい写真と共に肯定的なコメントを投稿してくれるのです。このオーガニックな口コミは、どんな有料広告よりも効果的であり、新しい顧客を呼び込むための強力な武器となるのです。
また、澤の屋旅館の調査によると、特に「清潔さ」と「ホスピタリティ」に対して「大変満足」と評価する割合が高かったということです。つまり、FIT客は、基本的なサービス品質と日本特有のおもてなしの心を高く評価しているということなのです。
第二のメリットとしては、FIT客は長期滞在により、その地域に落とす経済効果が大きいということです。彼らは複数の飲食店を利用したり、地域の民芸品や工芸品を購入したり、地元のアクティビティに参加したりします。これにより、ホテルだけでなく、地域全体の経済活性化に貢献するのです。
第三のメリットとしては、FIT客はリピーター化する傾向が高いということです。一度良い体験をした宿泊施設には、再度訪問する傾向があり、これにより安定した収益基盤を作り出すことができるのです。
さらに、フィット客の多くは、「日本ならでは」「日本らしさ」を求めているため、旅館のような伝統的な宿泊施設は非常に有利な立場にあります。茶室での茶道体験、禅寺での宿泊体験、あるいは高いレベルの日本人スタッフによるおもてなしなど、ホテルでは提供しきれない体験を求めているのです。
FIT客のデメリット(悪い点):ホテル・旅館にとっての課題
しかしながら、FIT客の受け入れには、当然のことながらデメリットも存在します。
最大のデメリットとしては、予約システムの複雑性と対応の難しさが挙げられます。FIT客は、オンライン・トラベル・エージェント(OTA)と呼ばれるBooking.com、Expedia、Skyscannerといったウェブサイトを通じて予約することが多いのです。これらのOTAは、複数の言語での対応が必要であり、返金条件や変更条件に関しても複雑です。さらに、OTAを通じた予約の場合、顧客満足度に関する評価がリアルタイムで反映され、低い評価を付けられると、その施設の信用が大きく傷つく可能性があるのです。
第二のデメリットとしては、言語対応の負担と文化的ギャップの問題が挙げられます。FIT客は、様々な国から訪れるため、言語が統一されていません。ホテルや旅館は、少なくとも英語での対応は必須になりますし、特にアジア系のFIT客に対しては、中国語や韓国語、タイ語など複数言語での対応が求められる場合もあります。スタッフの言語教育に関しては、相応の投資と時間が必要なのです。
また、文化的なギャップも問題になることがあります。例えば、一部のアジア系FIT客は、公共浴場や温泉に入ることに慣れていない傾向があり、特に異性との共浴に抵抗感を示す場合があります。あるいは、食事の際の習慣や礼儀作法の違いから、思わぬ誤解やトラブルが生じることもあり得るのです。
第三のデメリットとしては、個別対応の手間とコスト増加が挙げられます。FIT客の多くは、パッケージツアーと異なり、各自が異なる到着時間、異なる食事内容、異なるアクティビティの参加希望を持っています。ホテルや旅館のスタッフは、これらの個別の要望に対応する必要があり、一律の団体対応よりも圧倒的に手間がかかるのです。
さらに、キャッシュレス決済や多言語ウェブサイトの整備といった、インフラ投資が避けられません。FIT客の多くは、クレジットカードやスマートフォンの決済サービスを利用することが多く、現金払いのみの対応では問題が生じる可能性があります。また、ホームページを多言語化し、予約サイトを複数のOTAに対応させるには、相応の技術的知識と投資が必要なのです。
おすすめできる施設・おすすめできない施設
これまでのメリット・デメリットから考えると、FIT客の受け入れについては、以下のような指針が考えられます。
FIT客の受け入れをおすすめできる施設としては、以下のような条件を備えた施設が挙げられます。まず第一に、小規模から中規模の旅館やブティックホテルです。これらの施設は、大規模な団体客に対応するインフラが限定的である代わりに、個別対応と高いホスピタリティを実現しやすいのです。実際、澤の屋旅館のような12室程度の小規模旅館が、FIT客を対象とした高い満足度を実現しているのは、この理由からです。
第二に、伝統文化や地域特性を強く打ち出せる施設です。茶道体験、禅寺宿泊、あるいは地域の食文化を体験させることができる施設は、FIT客からの需要が極めて高いのです。
第三に、英語を含む複数言語での対応体制が整っている施設、そして多言語でのウェブサイトを既に構築している施設です。これらは、OTAでの評価を高く保ちやすく、継続的な予約を見込めるのです。
一方、FIT客の受け入れをおすすめできない施設としては、以下のような特徴を持つ施設が考えられます。まず第一に、日本語のみでの対応に限定されている施設です。言語対応の整備をせずにFIT客を受け入れると、顧客満足度が大きく低下し、結果としてOTAでの評価が低くなる傾向があります。
第二に、標準化されたサービス提供のみを実施している大規模チェーンホテルです。これらの施設は、個別対応の要望に応じられず、FIT客の期待値とのギャップが生じやすいのです。
第三に、地域への高い関心やユニークな体験を提供できない施設です。単なる寝泊まりのみを提供する施設では、FIT客から選ばれにくいのです。
実例に見るFIT客対応の工夫
実際のホテルや旅館がどのようにしてFIT客に対応しているのか、いくつかの事例を見てみましょう。
澤の屋旅館の事例は非常に参考になります。この旅館は、メール による個別対応を大切にしており、OTAではなく直接メール予約を推奨しています。これにより、顧客との詳細なコミュニケーションが可能になり、「ベジタリアン食に対応する」「ハラール対応のメニューを用意しない」といった方針を明確に伝えることができるため、のちのちのミスマッチが減少するのです。このアプローチにより、訪問してくる外国人宿泊客の質が向上し、結果として館全体の満足度が高まるということなのです。
また、小樽などの地域では、FIT客向けに特化した「Goodday北海道」というウェブページを構築し、定番では飽き足らない層、ドライブ観光ができる層をターゲットとした情報発信を行っています。このように、地域ごとにFIT客のニーズに合わせたプラットフォームを構築することで、継続的な集客が可能になるのです。
さらに、北海道では、北関東などの団体客が少ない地方で、FIT(個人旅行者)に対応できるような対策が重要であると認識されており、二次交通の充実(乗り継ぎの改善、乗合タクシーの導入など)や、無料Wi-Fi環境の整備といった、FIT客の利便性を高める取り組みが積極的に推進されているのです。
FIT対応における言語とコミュニケーション
FIT客への対応において、言語とコミュニケーションは最も重要な要素の一つです。
FIT客の調査によると、不便を感じることとして最も多く挙げられるのは、「無料Wi-Fi環境」と「交通手段に関する情報」なのです。これは、FIT客がスマートフォンを通じてリアルタイムに情報収集をしながら旅行する傾向を強く示しています。ホテルや旅館は、少なくとも以下の点を整備する必要があります。無料Wi-Fiの完全カバレッジ、英語による施設情報の詳細な提供、周辺交通機関に関する多言語での説明資料の用意、スマートフォン向けアプリの多言語対応など。
さらに、予約サイトにおける説明文の充実も重要です。Expediaなどの大手OTAの調査によると、施設の紹介ページに掲載されている写真の枚数が30枚以上あると予約率が飛躍的に高まり、特にバスルームの写真は必須であると指摘されています。これは、顧客が写真による詳細な情報を求めていることを示しており、視覚的な情報提供がいかに重要であるかを物語っているのです。
Q&A:FITについての疑問に答える
Q1. FITとはなぜ訳語ではなくカタカナ表記で使われるのでしょうか?
A. 旅行業界では、特定の用語をそのまま業界用語として定着させることで、国際的な理解を統一させる傾向があります。FITは、日本語で「個人旅行」と訳されることもありますが、ビジネス用語としては英語のままの使用が定着しています。これにより、国際的なホテルチェーンやOTAとの間でも、統一的なコミュニケーションが可能になるのです。
Q2. FIT客は本当に団体客よりも消費金額が多いのでしょうか?
A. はい、データが示す通り、FIT客の日本滞在中の消費金額は、団体ツアー客よりも有意に高いということが複数の調査で立証されています。これは、FIT客が長期滞在し、複数の異なるサービスを利用する傾向があることが理由です。
Q3. 小規模な旅館がFIT客に対応するために、最初に取り組むべきことは何でしょうか?
A. まず第一に、英語での基本的な情報発信です。ホームページを英語版で用意し、Booking.comなどの主要なOTAに登録することが最優先です。次に、スタッフの英語教育と、Wi-Fi環境の整備です。
Q4. FIT客を受け入れることで、地域経済にはどのような効果がもたらされますか?
A. FIT客は、複数の飲食店やアクティビティ施設を利用することで、地域全体に経済効果をもたらします。さらに、彼らの好意的な口コミは、他の観光客をも呼び込む波及効果をもたらすのです。
Q5. アジア系のFIT客と欧米系のFIT客では、どのような違いがありますか?
A. 調査によると、アジア系のFIT客は旅館を選ぶ傾向が高く、欧米系のFIT客はホステルやゲストハウスを選ぶ傾向が高いということが示されています。また、欧米系のFIT客は長期滞在をする傾向があり、アジア系のFIT客は比較的短期滞在の傾向があります。
トラベルライター「TAKA」の独自視点からの考察
ここまで、FITについて客観的なデータと事例をもとに説明してきましたが、私トラベルライター「TAKA」としての独自の視点から、今後の日本の観光産業について考察させていただきたいと思います。
まず注目すべき点として、FIT化は単なるトレンドではなく、旅行スタイルの本質的な変化だということです。かつて、海外旅行は物珍しいものであり、添乗員がガイドしてくれるツアーに頼ることが自然でした。しかし、旅行経験者が増え、またインターネットが普及した現在、個人旅行は特別なものではなく、むしろスタンダードになりつつあります。このような大きな社会的変化の中で、ホテルや旅館が生き残っていくためには、FIT客のニーズに対応できるかどうかが死活問題になると言えるのです。
第二の視点として、FIT化により、地方の小規模旅館に逆転の可能性が生まれているということです。かつて、全国的なチェーン展開をしている大規模ホテルが圧倒的に有利でした。しかし、FIT客は「日本ならでは」の体験を求めているため、小規模旅館こそが競争の最前線になる可能性があるのです。私が何度も訪れた地方の小さな旅館の中には、外国人FIT客でほぼ満室状態が続いている施設も少なくありません。彼らは、都市部の高級ホテルではなく、地域の文化を肌で感じることができる小さな旅館を選んでいるのです。
第三の視点として、SNSの力が旅館・ホテル経営における最重要要素になってきているということです。かつて、旅行の情報源は、旅行ガイド本や旅行代理店の窓口でした。しかし、現在ではインスタグラムやフェイスブック、TikTokといったSNSが、旅行の意思決定に極めて大きな影響を与えています。一人の有名なインフルエンサーが投稿した写真が、世界中の旅行者に見られ、その旅館へのアクセス数が一気に増える、というような現象が日々起きているのです。ホテルや旅館は、SNS時代の到来を単なる宣伝手段としてではなく、顧客とのコミュニケーション手段として捉える必要があるのです。
第四に、多言語対応とデジタルリテラシーが、今後の旅館経営の必須スキルになるだろうということです。従来は、フロントスタッフが来客と対面して、日本語で対応することが基本でした。しかし、FIT客の多くは事前にメール、チャット、あるいはアプリを通じてコミュニケーションをとり、到着予定時刻も異なれば、食事の内容リクエストも様々です。ホテルや旅館のマネジメント層は、単なる「おもてなし」の心だけでなく、デジタルツール を使いこなし、複数言語での情報提供ができる体制を作り上げる必要があるのです。
そして、最も重要な点として、FIT化は、日本の観光産業における「質の転換」をもたらしているということです。かつて、訪日観光客を増やすことが最優先課題でした。しかし、FIT客の増加により、単に客数を増やすのではなく、「良質な顧客体験」を提供することが重要になってきているのです。オーバーツーリズムの問題が指摘される昨今、ホテルや旅館の経営者は、「できるだけ多くの客を泊める」のではなく、「満足度の高い客に泊ん でもらい、彼らが世界中に良い評判を発信してくれるようにする」という戦略シフトを迫られているのです。
まとめ
ホテルや旅館業界で使われる「FIT」という言葉は、単なる業界用語ではなく、日本の観光産業の未来を左右する極めて重要なコンセプトだと言えます。FIT客は、単なる宿泊客ではなく、日本の文化や地域の魅力を世界に発信してくれるアンバサダーとしての役割を果たしているのです。
このような現状を踏まえると、これからの日本の旅館・ホテル業界は、FIT客との関係をいかに構築するか、彼らの満足度をいかに高めるか、そして彼らの好意的な口コミをいかに最大化するかということに、全力で取り組む必要があるのです。それは、技術的な投資かもしれませんし、スタッフ教育かもしれませんし、あるいは施設の改修かもしれません。しかし、これらの投資なくしては、これからの時代の旅館・ホテル経営は成り立たないのではないでしょうか。
最後に、皆さんが旅行者として旅館やホテルを利用される際も、自分たちがFIT客として分類されていること、そしてその立場がホテルや旅館の経営戦略にいかに大きな影響を与えているのかということを、少しの間、意識してみていただきたいと思います。そうすることで、ホテルスタッフがいかに皆さんの満足度向上のために努力しているのか、そして、良い体験をした後に皆さんが発信する口コミがいかに重要であるのかということが、より深く理解できるようになるのではないでしょうか。
旅を通じて、世界とつながり、地域とつながり、そしてホテル・旅館のスタッフとつながる。そのような旅の体験こそが、これからの時代における「真の旅の価値」なのだと、私は考価値」なのだと、私は考えています。








