- 2023-12-20
- 旅行 プレスニュース
新NISAで、あなたはどのように投資対象を選ぶのでしょうか。複眼経済塾は、株主総会を訪問することで、企業価値を肌感覚で見極めようとしています。今回はジョイフルの株主総会訪問記をお届けします。
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広報担当小笹にゆかりがある大分県大分市内で11月24日に開かれたジョイフル株主総会に参加しました
9月の熊本県リブワーク<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000097619.html>に続く株主総会訪問記です。第2弾は、大分県大分市に本社があるジョイフルの株主総会です。
大分空港につくと、名物の巨大海老寿司が荷物レーンで私を迎えてくれました。心和みます。
複眼経済塾広報担当の小笹俊一です。今をさかのぼること約30年前、私はNHK大分放送局でアナウンサーをしていました。社会人最初の赴任地となった大分勤務の4年間で得たものはあまりにも多く、今でも大分を訪れるたびにたくさんの思い出がよみがえります。
東京育ちの私にとって当時衝撃だったのが、今まで見たこともなかった大分発祥のファミリーレストラン「ジョイフル」があちこちにあったことです。破格でカジュアルなサービスが人気でした。あと中高年のおばさまが、活き活き働いているのがとても印象的でした。当時私には、「ファミレスは若者がバイトする場所」という先入観があり、ジョイフルで働く方々の姿が新鮮だったのです。私が大分駐在中の1993年に上場しています。
上場から30年、身近な存在であったジョイフルが、株主総会について先進的なことをしているのに、7月に出版した「株主総会を楽しみ、日本株ブームに乗る方法」<https://honto.jp/netstore/pd-book_32409587.html>を準備している時に、偶然、気が付いたのです。どうしてこんな画期的な取り組みができたのだろう。ジョイフルの株主になり、総会に向かいました。
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株主総会会場に掲げられた「沿革」と「接客七大用語」
大分駅から車で20分位でしょうか。会場となるジョイフル本社に着きました。4階にある会場までエレベーターであがると、スーツケースを預かってくれて荷札までくれました。これは今までに経験したことがないです。飲み物は、ペットボトルを温蔵庫からとることができました。至れり尽くせりです。
正面には、「沿革」と書かれた年表と「接客七大用語」が掲げられています。これもいいですね。初めての経験です。七大用語を見てみましょう。https://twitter.com/joyfull_info/status/1494642869571047426
・「いらっしゃいませ。ジョイフルへようこそ」
・「失礼致します。」
・「ハイ、かしこまりました。」
・「少々、お待ちくださいませ。」
・「お待たせ致しました。」
・「申し訳ございません。」
・「ありがとうございます。又お越しくださいませ。」
看板には「第49期定時株主総会」とありました。来年が50期なのですね。<https://www.joyfull.co.jp/company/history/>
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「株主にしっかり判断してもらえるよう基準日も決算時期も変更したが問題なし」と穴見会長
今日のテーマに入っていきます。株主総会ウォッチャーとして、とても気になるのが、なぜ6月決算の会社が11月末に株主総会を開くのかということです。普通だったら、6月末の議決権行使基準日から3カ月以内の開催ですので、9月のはずですよね。この会社は基準日を8月末にずらしているんです。それでそこから3カ月以内の11月末開催になっています。
基準日をずらすのは、合法なのですが、殆どすべての企業は、慣習を変えるのが面倒くさいからなのか、ずらさないんです。それで日本企業の株主総会が集中する問題は、抜本的に解決していません。
集中日対策で経済産業省も10年くらい前から、基準日変更が可能であることをリポートで伝えています。最近のものでは、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示FAQ(制度編)の15ページ」で示しています。<https://www.meti.go.jp/press/2020/01/20210118001/20210118001-1.pdf>。ここには、2021年6月11日に東京証券取引所が発行したコーポレートガバナンス・コード<https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf>【原則1-2. 株主総会における権利行使】の【原則1-2】の補充原則1-2③に「上場会社は、株主との建設的な対話の充実や、そのための正確な情報提供等の観点を考慮し、株主総 会開催日をはじめとする株主総会関連の日程の適切な設定を行うべきである」と記載されており、その為の方策として「議決権行使基準日を現状より後に変更して、株主総会を後ろ倒しにする」方法があること。欧米では、「決算日」「議決権行使基準日」「配当基準日」は一致しておらず、決算日から株主総会までの期間は 4~ 5 か月となっていることが記されています。さらには、 上場企業等が定時株主総会の開催日を柔軟に設定できるよう、平成29年度(2017年度)税制改正により法人税の申告期限の特例が講じられ(法人税法第75条の2第1項)、決算日から3カ月を超えた日に定時株主総会を開催する場合、定時株主総会後に法人税の確定申告を行うことが可能となったことが記されています。
しかし、変更しようという会社は皆無に近いので、株主総会集中日問題は解決していない大きな要因となっています。
なぜジョイフルは後ろにずらそうと思ったのか。2018年2月13日の開示資料によると、「当社の事業年度は、毎年1月1日から 12 月 31 日までとしておりますが、当社グループの繁忙期は毎年7月から9月という季節要因が有り、当社グループの業績に与える影響が大きいこと及び季節要因を踏まえたより適時・適切な経営情報を把握し開示することを目的として、当社の事業年度を毎年7月1日から翌年6月 30 日までに変更することとし、これに伴う所要の変更を行うものであります。また、株主の皆様の議案検討期間を拡大すること及び情報開示の準備や監査期間を十分確保すること等を目的として、定時株主総会の議決権行使の基準日を毎年8月 31 日、定時株主総会を毎年 11 月に招集することとし、これに伴う所要の変更を行うものであります。」とあります。<https://www.joyfull.co.jp/ir_news/archives/124>
基準日をずらしただけでなく、そもそもの決算時期も株主に配慮して変更しているのです。変更を決定して5年の歳月がたちました。どんな実感を持っているのか、聞いてみました。
回答してくれたのは、議長を務めた穴見陽一会長です。今は亡き創業者を継いだ2代目です。衆議院議員だった時代もあります。回答を聞いていると、衆議院議員時代に、コーポレートガバナンス関連の政策立案に携わっていたことから、この分野での改革に先駆けて乗り出したようでした。
「私たち、それまでは、決算をしてからできるだけ早いタイミングで総会を開く必要があると思っていました。しかし、株主、特に機関投資家の方からすると、実は、そうではなくて、しっかりと吟味をする時間が必要なんだということを理解しました。当社としては、なんら不都合はありませんのでそのような対応をさせていただくことにいたしました。
これはかつての株主総会でも皆さんにお諮りしてご承認をいただいたわけですが、決算時期に関しましても、当初は、12月末決算でしたが、私どもの業態は、夏の繁忙期のボリュームがとても大きいので年間の業績の大半は、夏の期間でほとんどそこで決まってしまう。そんな状況がありましたので、あえて7月から、夏の始まりからの期で、第一四半期で、通期の業績が判断できるということもございまして,あえて、決算時期を変えさせてもらいました。
これまで5年間やってきて、とりたてて大きな問題は感じてございません。決算時期の変更もそうだが、それをして問題があった、今まで大きく違ったということは特に感じてございません」と、おっしゃいました。
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株主総会集中日問題回避のための施策が広まるためには
このように、実施すれば、株主だけでなく事業会社側にも、大きなメリットがあると考えられる基準日の変更。日経Quickの2020年の記事「決算見てから配当権利が得られる「期末日≠基準日」銘柄って?」<https://moneyworld.jp/news/05_00028613_news>によれば、ジョイフル以外に実施している企業は、トシン・グループしかないそうです。しかしトシン・グループは2023年3月に上場廃止してしまいました。広まるための条件について、IR/ESGコンサルティング会社「浜辺真紀子事務所」代表の浜辺真紀⼦さんに聞きました。浜辺さんは、IRやESGの専⾨家 で、著作に「IRの基本 この1冊ですべてわかる」<https://honto.jp/netstore/pd-book_32831234.html>、「『株主との対話』ガイドブック ターゲティングからESG、海外投資家対応まで」<https://honto.jp/netstore/pd-book_32373690.html>、「ヤフージャパン市場との対話 20年間で時価総額50億円を3兆円に成⻑させたヤフーの戦略」<https://honto.jp/netstore/pd-book_29084629.html>があります。
「ジョイフルの取組みについて初めて知りました。株主の皆さまの利便性をゴールに定め、『そのためには、どうすればよいか』と逆算して考えて到達した結論なのですね。常識に囚われずに物事を検討し実行している姿に感銘を受けました。
事業年度の変更については、『繁忙期を年度初めに持ってくることにより経営情報を適切に把握する』ことが目的とされています。上場会社においては、時々『経営』の前に『開示』の『本末転倒』な議論になってしまいがちなのですが、『まずは経営ありき』という考え方が、この短い文章にも表れていて素晴らしいですね。
日本企業はどうしても横並び志向が強く、『日常業務に忙殺されている中、他社が行っていない革新的な取り組みを敢えて推進する』ことの難易度は高いです。ジョイフルのような取組みを広く上場企業に知らしめ、重要なステークホルダーである株主/投資家、そして官庁から、こうした取り組みの必要性を上場会社に伝え続けることが重要だと思います。
尚、このように革新的な仕組みを取り入れた後は、ポジティブな影響のみならずネガティブな影響も出る可能性があります。会社側はステークホルダーから継続的にフィードバックをもらうことで、ネガティブな影響が発生していないか、配慮すると良いでしょう。」
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「地域で一番安価で、一番身近なレストラン」は健在
株主総会終了後、本社横にあるジョイフルに入り、約30年ぶりにランチをいただきました。今回も元気なおばさまが働いていました。
ランチはなんと500円!。30年前より100円位価格があがったかもしれないけれど、引き続き懐にありがたい価格で胃袋も満ち足りたお昼でした。
ココロもフトコロも豊かになりたいという私のモットーを思い出しながら、私は株主総会会場をあとにしました。
※複眼経済Bizとは、投資教育を祖業とする複眼経済塾が、株式投資家だけでなくビジネスパーソン向けにも役立つことを、普段以上に意識して作成しているコンテンツシリーズの総称です。
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