- 2025-2-26
- ホテル プレスニュース
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熱海市が生成AIを活用しインバウンド対応の効率化を実証
熱海市が新たに導入した生成AI技術によるインバウンド対応の効率化実証が成功を収めました。この取り組みでは、観光客からの問い合わせに対してAIがリアルタイムで対応することで、観光業務の負担を軽減。さらに、地域の観光情報を多言語で提供し、訪問客の利便性を向上させる目的があります。生成AIの導入により、観光産業のデジタル化が進み、熱海市の新たな観光振興策として注目されるでしょう。
この記事の要約
- 熱海市が生成AIを使い観光客対応を実証。
- AIが多言語で情報提供し利便性向上。
- 観光業務のデジタル化に向けた取り組みが進む。
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村 吉弘、以下リクルート)の観光に関する調査・研究、地域振興機関『じゃらんリサーチセンター』(以下JRC)は、自治体・DMO(観光地域づくり法人)が生産性高くインバウンド推進するための生成AI活用実証実験(※1)を実施しました。
本実験では、観光マーケティングのデータ分析、多言語対応、地域情報発信を生成AIで効率化し、業務負担を最大約15分の1に削減できることを実証しました。本研究を通じ、自治体・DMOの生産性向上に貢献しつつ、今後は、他エリアでの活用やサービス化の可能性を検討し、さらなる観光DXの推進に貢献してまいります。
(※1)観光庁の「観光DXにおける生成AIの適切かつ効果的な活用に関する調査事業」として実施したプロジェクト。熱海市とじゃらんリサーチセンター、位置情報データを提供するブログウォッチャーの協業によって実行。リクルートとブログウォッチャーで生成AIツールを共同開発。
本研究の背景
近年、日本のインバウンド市場は急速に回復し、2024年の訪日外国人旅行者数は2019年比115.6%に達しました。(※2)観光庁も「観光DX」を推進し、地方自治体やDMOに対し、データ活用の高度化や多言語対応の強化を求めています。しかし、多くの自治体・DMOでは、限られたリソースの中で膨大なデータ分析や多言語対応を求められており、訪日客の動向データ不足や、多言語対応の品質・コスト維持に課題を抱えています。
こうした課題に対応するため、JRCは自治体・DMOのインバウンド推進を支援するべく、生成AIを活用した観光マーケティングの実証実験を実施しました。本研究では、マーケティング分析の精度向上、多言語対応の効率化、データ活用の持続可能なモデル構築に焦点を当て、熱海市をモデルケースとして実証を行いました。その結果、生成AIの活用により、観光情報の整備やデータ分析の生産性が飛躍的に向上し、自治体・DMOの業務負担軽減に大きく寄与できることが明らかになりました。
(※2)出典:JNTO『訪日外客数(2024年12月および年間推計値)』
実証実験の概要
本実証実験は、生成AIを活用して自治体・DMOのインバウンド推進を支援することを目的とし、静岡県熱海市をモデルケースとして実施しました。熱海市は、国内外からの観光客が多く訪れる人気エリアである一方、インバウンド対応の本格化を進める段階にあり、限られたリソースの中で効率的なマーケティングと多言語対応が求められていました。
実証では、以下の3つの主要なアプローチを用いて、生成AIの効果を検証しました。
① AIインバウンドマーケティングツールの活用
生成AIを活用し、台湾・香港・アメリカ市場を中心に訪日旅行者の行動特性やニーズを分析。口コミや掲載記事、検索トレンドなどのデータを組み合わせ、熱海市の競争優位性や訴求ポイントを明確化しました。また、台湾・香港・アメリカ市場への訪日プロモーションを実施している専門家へのヒアリングを行い、AIによる分析の精度や妥当性を検証しました。
② AI分析支援による観光データの活用
観光案内所が日々収集する訪日観光客の問い合わせデータを生成AIで要約し、頻度高く関係者と共有する仕組みを構築しました。これにより、観光案内所スタッフの業務負担を軽減するとともに、旅ナカ(滞在中)のインバウンド対応を強化しました。
③ AI多言語ツールによる情報発信の最適化
既存の観光情報を英語・繁体字(中国語)に翻訳し、その品質をネイティブチェックで評価。さらに、観光案内所の問い合わせデータをもとに、最新の観光情報を多言語発信できるようにする仕組みを構築しました。生成AIを活用することで、SNSやWEBサイトの各タッチポイントに応じた適切な表現を瞬時に生成することも可能となりました。
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成果
本実証実験を通じて、生成AIの活用がインバウンド対応の生産性向上と情報発信の高度化に大きく貢献することが明らかになりました。特に、マーケティング分析、データ活用、多言語対応の3つの領域で顕著な成果が得られました。
① マーケティング分析の効率化
AIインバウンドマーケティングツールを活用することで、市場別の訪日旅行者の特徴や行動特性を分析し、競争優位性を明確化することが可能になりました。例えば、台湾・香港・アメリカ市場について、口コミや掲載記事などのデータを組み合わせて分析した結果、競合エリアとの差別化ポイントやキーメッセージ、適切なビジュアル案を抽出することができました。さらに、これらの分析結果は、台湾人・香港人を対象とした定量調査の結果とほぼ一致し、専門家からも高い納得感を得ました。
また、生成AIを活用することで、通常のマーケティング分析に比べて作業時間を約15分の1に削減(※3)することができました。従来は多言語の記事や口コミを手作業で収集し、翻訳・要約する必要がありましたが、AIを活用することで迅速かつ正確な分析が可能になりました。
(※3)業務内容を細かく分類し、生成AIを使わない場合の想定時間を算出して生成AIを使った場合の時間と比較
② 旅ナカデータ分析の最適化
観光案内所で蓄積されている訪日観光客の問い合わせデータを、生成AIを活用して要約・分析し、頻度高く自治体やDMOの関係者と共有することを可能にしました。これにより、観光案内所のデータを迅速に活用できるようになり、地域のインバウンド対応の意思決定をスピーディーに行っていきます。
また、生成AIを活用することで、旅ナカデータの分析に係る工数が約4分の1に削減されました。これまでは、エクセルデータやメールで送られる箇条書きの情報を手作業でまとめる必要がありましたが、AIが自動でデータを整理・要約することで、関係者が瞬時に情報を把握しやすくなりました。
③ 多言語対応の質とスピードの向上
観光情報の翻訳は3パターンで実施。1つ目は「機械翻訳システムでの翻訳」、2つ目はChatGPT4oにプロンプト指示して対象の日本語文章を多言語化する「ChatGPTローカライズ翻訳」、3つ目は日本語文章なしでプロンプト指示する「ChatGPT多言語文章新規作成」。英語・繁体字(中国語)の翻訳精度を検証した結果、ネイティブチェックでも高い評価を獲得しました。特に、「機械翻訳システム」「ChatGPTローカライズ翻訳」「ChatGPT多言語文章新規作成」の3パターンを比較し、5段階評価(※4)を行ったところ、WEBサイトへ掲載できるレベルかについては「機械翻訳システム」が平均2.9(英)/3.0(繁)、「ChatGPTローカライズ翻訳」は平均4.0(英)/4.4(繁)、「ChatGPT多言語文章新規作成」は平均3.9(英)/4.0(繁)となり、生成AIを活用した方がより自然で違和感のない文章レベルであることが証明されました。
また、生成AIを活用することで、従来の翻訳作業に比べて工数を約12分の1に削減することができました。さらに、InstagramやWEBサイトなど、タッチポイントごとに最適な表現を即時に生成できるため、観光情報の発信スピードも大幅に向上しました。
(※4)5:ネイティブ並みで最適掲載可、4:自然で違和感なく掲載可、3:問題なく掲載可能だが改善余地あり、2:不自然さが目立ち掲載には不向き、1:意味不明で掲載不可
④ 持続可能なデータ活用モデルの構築
今回の実証を通じて、生成AIを活用した持続可能なデータ活用の仕組みを検証し、自治体・DMOが低コストで始められる「スモールスタート型」AI活用モデルを構築しました。具体的には、以下のようなアプローチをすることで、持続的にAIを活用できる仕組みとなっています。
・AIで定量/定性データを効率的に収集・整理(※5)し、マーケティング施策や情報整備に生かす
・人手とAIを適切に組み合わせ、効率的な業務プロセスを構築する
・プロンプト設計を工夫することで、精度の高いアウトプットを得る
(※5)収集するデータは、利用者個人が特定できないような形式で収集・管理しています。
担当者のコメント
株式会社リクルート じゃらんリサーチセンター 研究員 松本 百加里
生成AIを活用することで、十分なインバウンド誘客実績データがなくても、ネット上の定性情報や地域の旅行者対応履歴を組み合わせて効率的に方針を策定し、多言語対応の整備を進められることが分かりました。さらに、専門知識や人的リソースが限られた自治体でも、持続可能な体制を構築しやすく、スモールスタートが可能である点も大きな利点です。今後は、今回の実証結果を踏まえ、サービス化や他エリアへの展開の可能性を検討してまいります。
なお、本実証の取り組み詳細は、3月5日(水)に開催される観光庁主催の報告会 「”NextTourism Summit 2025” – 地域一体で進める観光DX」にて発表します(オフライン/オンラインのハイブリッド開催)。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/topics12_00004.html
熱海市インバウンド戦略検討チーム
生成AIを活用することで、限られたリソースの中でも効率的に訪日観光客への情報発信ができることを実感しました。市場動向が端的に整理されるため、各国ごとの検討を行う際に瞬時に見立てを立てることができます。特に、誰でも迷うことなく必要な情報を抽出できる点は非常に有用だと感じました。
また、市だけでなく、関係団体や地域の事業者とも情報を共有することで、地域全体で統一した視点を持ち、戦略を進めることができると考えます。今回の生成AIの活用を通じて、多角的な視点からの提案を受けることで、新たな発想やアイデアが生まれ、考えの幅が広がりました。今後も積極的に活用し、さらなるインバウンド対応の強化につなげていきたいと思います。
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