株式会社アジェンダの旅行会社向けクラウドサービス「マタタビ Suite」が旅行者・出張者向けマイページサービス「タビマド」を提供開始
旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター”TAKA”です。旅についての疑問や噂について真相をつきとめわかりやすく解説します。
今回は、2025年10月1日から提供が開始された株式会社アジェンダの旅行者・出張者向けマイページサービス『タビマド』について、その評判や機能、そして旅行業界に与える影響について詳しく解説していきます。このサービスは、旅行会社向けクラウドサービス『マタタビ Suite』の新たなオプション製品として登場したもので、旅行会社とその顧客を結ぶ新しいコミュニケーション手段として注目を集めているようです。
タビマドとは何か:結論
タビマドは、旅行会社の業務負担を軽減しながら、旅行者や出張者に対する案内精度と利便性を高めることを目的とした「旅の窓口」とも言えるマイページサービスのようです。このサービスを利用することで、旅行者や出張者はスマートフォンやパソコンから、いつでもどこでも最新の旅程や必要書類にアクセスできるようになると言われています。
特に注目すべき点は、旅行会社側の『マタタビ Suite』とリアルタイムでデータ連携される仕組みになっており、急な変更があってもすぐに情報が更新され、旅行者が常に最新の情報を確認できる点だと考えられます。これまで旅行会社では、旅程や料金、渡航要件などに関する問い合わせ対応が日常的に多く発生しており、膨大なコミュニケーションコストや情報伝達の齟齬、手作業による誤案内や連絡ミスといった課題が長らく存在していたようです。タビマドは、こうした旅行業界が抱える構造的な課題を解決するために開発されたシステムと言えるでしょう。
タビマド開発の背景にある旅行業界の課題
旅行業界におけるデジタルトランスフォーメーション、いわゆるDXの推進は、近年急速に進んでいると言われています。特に人手不足が深刻化する中で、問い合わせ対応の効率化は多くの旅行会社やホテル・旅館にとって喫緊の課題となっているようです。
実際に、ある宿泊施設では最先端のAIを活用したDX化により、ホームページ経由の問い合わせ数を70件から25件へ、入電数を500件から300件へと大幅に削減することに成功したという事例も報告されています。また、小田急トラベルでは旅行商品販売のDXに成功し、問い合わせ対応用の電話回線を従来の半分の2回線に減らし、常駐担当者も4人から3人に縮小できたと言われています。
こうした業界全体の流れの中で、タビマドのようなマイページサービスの登場は、まさに時代の要請に応えるものだと評価できるのではないでしょうか。
タビマドの主要機能を詳しく解説
マルチデバイス対応
タビマドは、パソコン、スマートフォン、タブレットのすべてに対応しているようです。これにより、旅行者は自宅のパソコンで旅程を確認したり、移動中にスマートフォンでフライト情報をチェックしたり、旅先でタブレットから必要書類を参照したりと、場面に応じて最適なデバイスを選択できると言われています。対応ブラウザはGoogle Chrome、Mozilla Firefox、Microsoft Edgeの各種最新版となっており、多くの利用者が追加のソフトウェアをインストールすることなく使用できる設計になっているようです。
データ連携機能
タビマドの最も重要な機能の一つが、『マタタビ Suite』とのリアルタイムデータ連携だと考えられます。旅行会社が『マタタビ Suite』上で旅程やフライト情報を更新すると、その変更が即座にタビマドのマイページに反映される仕組みになっているようです。これにより、旅行会社は個別にメールや電話で連絡する手間が省け、旅行者側も常に最新かつ正確な情報を確認できるため、双方にとって大きなメリットがあると言えるでしょう。
『マタタビ Suite』自体が、Amazon Web Service(AWS)で稼働するクラウドサービスであり、独自のデータ構造により高速な動作を実現していると言われています。従来の基幹システム「Travel Meister」では約10秒かかった予約の検索が約1秒で完了し、約2時間かかった締め処理がわずか10分ほどで完了するようになったという報告もあります。こうした高速処理能力が、タビマドへのリアルタイム連携を支える基盤技術になっていると推測されます。
ファイル共有機能
請求書や旅程表、Eチケット、渡航に必要な各種書類などをオンラインでダウンロードできる機能が搭載されているようです。これまで旅行会社では、こうした書類をメールで個別に送付したり、場合によっては郵送したりする必要があったと言われています。しかし、タビマドを導入することで、旅行会社は必要な書類をシステム上にアップロードするだけで、旅行者が自分のタイミングでダウンロードできるようになるため、双方の手間が大幅に削減されると考えられます。
マタタビ Suiteには、予約データや個人顧客データ、法人データなどに書類を紐付けて保存できるペーパーレス化機能が搭載されており、これがタビマドのファイル共有機能の基盤になっているようです。アルプス・トラベル・サービス株式会社の導入事例では、請求書・領収書・納品書などの帳票類をすべてメール送付に移行し、紙・トナー・郵送費などのコストを削減できたという報告があります。
情報登録機能
パスポート番号やビザ情報、緊急連絡先など、渡航に必要な情報を旅行者自身がWEBから登録できる機能が提供されているようです。従来は、旅行会社のスタッフが電話で聞き取ったり、メールでやり取りしたりして情報を収集する必要があったと言われています。しかし、この機能により、旅行者が自分の都合の良い時間に必要な情報を入力できるようになるため、旅行会社の業務負担が軽減されるだけでなく、旅行者にとっても電話の時間を気にする必要がなくなるというメリットがあるようです。
また、旅行者が直接入力することで、聞き間違いや入力ミスのリスクも低減できると考えられます。マタタビ Suiteを導入した株式会社アイラスでは、チーム全体での情報共有が可能になり、迅速な顧客対応ができるようになったという事例があります。
カード決済機能(オプション)
外部決済システムと連携したクレジットカードによるオンライン決済に対応しているようです。ただし、この機能を利用するにはオプション契約が必要とされています。従来は、旅行代金の支払いについて、口頭やメールで確認したり、銀行振込の場合は入金確認に手間がかかったりしていたと言われています。オンライン決済が可能になることで、必要な情報を必要な範囲にだけ適切に共有できるようになり、セキュリティ面でも向上が期待できるのではないでしょうか。
社員管理機能(オプション)
法人向けの機能として、社員の旅行情報をまとめて管理できる専用アカウントが提供されているようです。この機能もオプション契約が必要とされています。企業の総務部門や出張管理部門にとって、社員の出張状況を一元管理できることは大きなメリットだと考えられます。特に、海外出張時の危機管理の観点から、社員がどこにいるのか、どのような旅程で移動しているのかをリアルタイムで把握できることは、企業のBCP(事業継続計画)の観点からも重要だと言えるでしょう。
マタタビ Suiteの実績とタビマドの信頼性
タビマドのオプション元となる『マタタビ Suite』は、2018年から海外旅行を取り扱う旅行会社向けのクラウドサービスとして提供されており、すでに3年以上の稼働実績があると言われています。導入企業の事例を見ると、株式会社日本橋夢屋、HBCトラベル、株式会社アイラス、TRSトラベル株式会社、アルプス・トラベル・サービス株式会社など、業務渡航を中心とした総合旅行会社やインハウス・エージェントでの採用が進んでいるようです。
株式会社アイラスの導入事例では、「ストレスがないことが一番の魅力」という評価や、「アジェンダの皆さんのスキルや経験、そして人柄が一番の魅力」という声が寄せられており、システムの使いやすさだけでなく、サポート体制にも高い評価があるようです。また、以前のシステムではできなかったチーム間での情報共有ができるようになったことで、属人化が解消され、サービスレベルの向上が実現したという報告もあります。
マタタビ Suiteは旅行業務に適したデータ構造を発明したことで特許を取得しており(特許第7482458号)、複雑な経理処理を自動化できる機能を搭載していると言われています。この技術的な優位性が、タビマドの安定した動作とデータ連携の精度を支えていると推測されます。
タビマドの良い点・メリット
旅行者にとっての良い点
まず第一に、旅行者や出張者にとって最も大きなメリットは、いつでもどこでも最新の旅程情報にアクセスできる点だと考えられます。特に海外旅行や業務出張の場合、フライトの変更や集合時間の調整など、直前まで情報が変わることも珍しくないと言われています。そうした状況で、スマートフォンから簡単に最新情報を確認できることは、旅行前の不安を大きく軽減してくれるでしょう。
また、必要書類をいつでもダウンロードできる点も大きな利点です。旅行の直前に「Eチケットをどこに保存したか分からない」といった事態を避けることができますし、万が一スマートフォンを紛失した場合でも、別のデバイスからログインして再度ダウンロードできると考えられます。
さらに、パスポート情報などの個人情報を自分の都合の良い時間に入力できる点も便利だと言えます。旅行会社の営業時間を気にすることなく、深夜や早朝でも情報登録ができるため、忙しいビジネスパーソンにとっては特に助かる機能ではないでしょうか。
旅行会社にとっての良い点
旅行会社側のメリットとしては、問い合わせ対応の削減による業務負担の軽減が最も大きいと言われています。「旅程表を再送してください」「集合時間は何時でしたか」といった、本来であれば旅行者自身で確認できる情報に関する問い合わせが減少することで、スタッフはより付加価値の高い業務に時間を使えるようになると考えられます。
実際に、他の旅行関連企業でのDX導入事例を見ると、日本旅行ではFAQやチャットボットによる自己解決により、1日あたり102件の問い合わせを削減できたという報告があります。タビマドの場合も、同様の効果が期待できるのではないでしょうか。
また、手作業や連絡ミスを防ぐことで案内精度が高まる点も重要なメリットです。旅程情報がシステム上で一元管理され、自動的にマイページに反映されることで、メールの送信先を間違えたり、古い情報を送ってしまったりするリスクが低減されると言われています。結果として、顧客へのサービス品質向上につながり、顧客満足度の向上にも寄与すると考えられます。
さらに、ペーパーレス化によるコスト削減効果も見逃せません。アルプス・トラベル・サービス株式会社の導入事例では、請求書・領収書・納品書などの帳票類をすべてメール送付に移行したことで、紙・トナー・郵送費などのコストを削減できただけでなく、書類保管スペースの削減にもつながったと報告されています。
業界全体にとっての利点
旅行業界全体の視点から見ると、タビマドのようなデジタルツールの普及は、業界の生産性向上に大きく貢献すると期待されます。人手不足が深刻化する中で、限られた人材をより効果的に活用するためには、定型的な業務の自動化や効率化が不可欠だと言われています。
また、2025年のインバウンド対策として、訪日外国人数が4,200万人に増加し、消費額も8.5兆円に達すると予想されている中で、多言語対応や24時間対応可能なデジタルツールの重要性はさらに高まると考えられます。タビマドがこうしたニーズにどこまで対応できるかは今後の展開次第ですが、基盤となるマタタビ Suiteが様々なシステムとの連携に対応している点は、将来的な機能拡張の可能性を示唆していると言えるでしょう。
タビマドの悪い点・デメリット
システム導入のハードル
タビマドを利用するためには、旅行会社側が『マタタビ Suite』を導入している必要があります。マタタビ Suiteは旅行会社向けの基幹システムとして提供されているため、既に別の基幹システムを使用している旅行会社にとっては、システムの切り替えが必要になる可能性があります。基幹システムの変更は、データ移行や社員教育など、相当な時間とコストがかかると言われていますので、すぐにタビマドを利用できる旅行会社は限られている可能性があるという欠点が考えられます。
また、タビマド自体も『マタタビ Suite』のオプション製品として提供されているため、別途契約が必要になると思われます。特にカード決済機能や法人向けの社員管理機能はさらに追加のオプション契約が必要とされており、すべての機能を利用するには一定のコストがかかることが予想されます。中小規模の旅行会社にとっては、費用対効果を慎重に検討する必要があるかもしれません。
利用者側の学習コスト
旅行者や出張者にとって、新しいシステムを使いこなすまでには一定の学習期間が必要になる可能性があります。特にデジタルツールに不慣れな高齢者や、ITリテラシーの低い利用者にとっては、最初は使い方が分かりにくいと感じるかもしれません。ログイン方法やパスワードの管理、必要な情報の入力方法など、基本的な操作を理解するまでに時間がかかる場合があると考えられます。
また、すべての旅行者がスマートフォンやパソコンを持っているわけではありませんので、デジタルデバイスを持たない旅行者への対応をどうするかという課題も残ると推測されます。旅行会社としては、タビマドを導入した後も、一部の顧客に対しては従来通りの電話やメールでの対応を継続する必要があるかもしれません。
セキュリティとプライバシーの懸念
旅行情報には、パスポート番号や生年月日、クレジットカード情報など、個人情報が多く含まれています。こうした機密性の高い情報をクラウド上で管理することに対して、セキュリティやプライバシーの観点から不安を感じる利用者もいるかもしれません。
マタタビ SuiteはAmazon Web Service(AWS)で稼働しており、専門のスタッフがAWSの基準(CLI基準)やIPA基準に準拠するよう対応していると言われています。また、操作履歴の保存機能なども搭載されており、不正やミスを防ぐ仕組みが整備されているようです。しかし、それでもサイバー攻撃や情報漏洩のリスクをゼロにすることは難しいため、継続的なセキュリティ対策と監視が必要になるというデメリットがあると考えられます。
システムトラブル時の対応
クラウドサービスである以上、インターネット接続に依存しているため、通信障害が発生した場合や、サービス側でシステムトラブルが起きた場合に、情報にアクセスできなくなる可能性があります。特に旅行当日や出発直前に、システムが利用できなくなるという事態は、旅行者にとって大きな不安要因となるでしょう。
そのため、重要な情報については、念のため印刷して持参したり、スクリーンショットを保存しておいたりするなど、バックアップ手段を用意しておく必要があるかもしれません。このような対策が必要になる点は、完全にデジタル化することのデメリットだと言えます。
タビマドをおすすめしたい方
タビマドは、特に以下のような方々におすすめできると考えられます。
まず、頻繁に出張するビジネスパーソンの方には非常に便利なサービスだと言えるでしょう。移動中でもスマートフォンから簡単に旅程を確認でき、急な変更にもリアルタイムで対応できるため、業務効率が向上すると期待されます。特に、複数の出張を同時に管理している場合、それぞれの旅程をマイページで一元管理できることは大きなメリットになるはずです。
次に、IT機器の操作に慣れている若い世代の旅行者にとっても、使いやすいサービスだと考えられます。スマートフォンやタブレットを日常的に使用している世代にとって、アプリをダウンロードすることなくブラウザから利用できるマイページサービスは、直感的に使えるのではないでしょうか。
また、海外旅行を計画している方にもおすすめできます。パスポート情報やビザ情報、フライト情報など、海外旅行に必要な情報が一元管理されることで、準備段階での確認作業が楽になると考えられます。特に、入国要件が頻繁に変更される昨今の状況では、最新情報をリアルタイムで確認できることの価値は高いと言えるでしょう。
さらに、企業の総務部門や出張管理担当者の方にも有用なサービスだと思われます。法人向けの社員管理機能を利用することで、社員の出張状況を一元管理でき、危機管理やコンプライアンスの観点からもメリットが大きいと考えられます。
タビマドをおすすめできない方
一方で、以下のような方々には、タビマドが必ずしも最適とは言えない可能性があります。
まず、デジタル機器の操作が苦手な方や高齢の旅行者の場合、新しいシステムを使いこなすまでに時間がかかるかもしれません。従来通りの紙の旅程表や電話での問い合わせの方が、かえって安心感があるという方も少なくないでしょう。そのような方々にとっては、タビマドの導入がかえってストレスになる可能性も考えられます。
また、スマートフォンやパソコンを持っていない方や、インターネット環境が不安定な地域にお住まいの方にとっては、そもそもタビマドを利用すること自体が難しいという欠点があります。こうした方々に対しては、旅行会社側が従来通りの対応を継続する必要があるでしょう。
さらに、個人情報をオンラインで管理することに強い抵抗がある方や、セキュリティに対して非常に敏感な方にとっては、クラウドサービスに個人情報を登録することに不安を感じる可能性があります。そのような場合は、無理にタビマドを利用せず、別の方法で情報管理をすることをおすすめします。
トラベルライターTAKAの独自考察
ここからは、トラベルライターとして長年旅行業界を見てきた私の独自の視点から、タビマドというサービスが持つ可能性と課題について考察していきたいと思います。
旅行業界のDXにおけるタビマドの位置づけ
2025年現在、旅行業界全体でデジタルトランスフォーメーションが急速に進んでいると感じています。特に新型コロナウイルスのパンデミックを経験した後、非対面・非接触でのサービス提供の重要性が再認識され、デジタル化への投資が加速しているように見受けられます。
タビマドは、こうした業界全体の流れの中で、旅行会社と旅行者をつなぐ「デジタルブリッジ」としての役割を担うサービスだと私は考えています。これまでの旅行業界では、旅行会社側のシステム効率化は進んでいましたが、その恩恵が旅行者側に直接届くケースは少なかったように思います。タビマドは、旅行会社側の業務効率化と旅行者側の利便性向上を同時に実現しようとする、画期的な試みだと評価できるのではないでしょうか。
実際に、マタタビ Suiteの導入事例を見ると、経理業務の自動化で月間4~5人日分の手作業を削減したり、入金照合作業をURL共有により営業担当が自ら対応できるようになったりと、具体的な業務効率化が実現されているようです。こうした効率化で生まれた時間とリソースを、顧客サービスの質の向上に振り向けることができれば、業界全体の競争力強化につながるはずです。
情報の非対称性の解消がもたらす変化
旅行業界では長らく、旅行会社が持つ情報と旅行者が持つ情報の間に大きな「情報の非対称性」が存在していたと感じています。旅行会社は詳細な旅程情報やフライトの変更情報を持っているのに、旅行者側はそれを知るために電話をかけたり、メールを送ったりする必要がありました。
タビマドのようなマイページサービスは、この情報の非対称性を大幅に縮小する可能性を秘めていると私は考えています。旅行者が自分の旅行に関する情報に、いつでも自由にアクセスできるようになることで、旅行者と旅行会社の関係性が、より対等でオープンなものに変化していくのではないでしょうか。
この変化は、旅行会社にとってはある意味でプレッシャーにもなると思われます。なぜなら、情報が常に旅行者に公開されているということは、情報の正確性や更新のタイムリーさが、これまで以上に求められるようになるからです。しかし、それは同時に、真摯に顧客と向き合い、正確な情報提供と誠実なサービスを心がける旅行会社にとっては、差別化の大きなチャンスでもあると考えられます。
中小旅行会社への影響と課題
タビマドとマタタビ Suiteの組み合わせが持つ可能性は非常に大きいと感じる一方で、中小規模の旅行会社にとっては導入のハードルが高いという懸念もあります。基幹システムの入れ替えには、単なるシステム導入費用だけでなく、データ移行、社員教育、業務フローの見直しなど、様々なコストと労力がかかります。
特に、長年使い慣れた独自システムやカスタマイズされたシステムを使用している旅行会社にとって、標準化されたクラウドシステムへの移行は、業務プロセス自体の大きな変革を意味する場合があります。株式会社アイラスの導入事例で「業務をシステムにあわせる」ことで属人化が解消されたという報告がありますが、これは逆に言えば、従来の業務のやり方を変える必要があったということでもあります。
このような変革を受け入れられるかどうかは、経営者の決断と社員の理解・協力にかかっていると言えるでしょう。タビマドのメリットを最大限に活用するためには、単にシステムを導入するだけでなく、組織全体の意識改革が必要になる可能性があると私は考えています。
今後の機能拡張への期待
現時点でのタビマドは、基本的なマイページ機能を提供するものですが、今後の機能拡張に大きな期待を寄せています。例えば、現地の天気情報や観光情報との連携、旅行先でのレストラン予約やアクティビティ予約の統合、AIを活用した旅程のパーソナライズ提案など、様々な可能性が考えられます。
特に注目しているのは、多言語対応の可能性です。2025年のインバウンド需要を考えると、訪日外国人旅行者向けに多言語対応したマイページサービスを提供できれば、日本の旅行会社の国際競争力が大きく向上すると考えられます。ホテル・旅館業界では既に最大109言語に対応したデジタル館内案内サービスなどが導入されており、同様の技術をタビマドに応用することは十分可能だと思われます。
また、他の旅行関連サービスとの連携も重要だと感じています。例えば、航空会社のGDS(Global Distribution System)との連携により、フライトの遅延情報や出発ゲート変更などがリアルタイムで通知されるようになれば、旅行者の利便性はさらに向上するでしょう。マタタビ SuiteがAmadeus Travel PlatformのNDC機能との決済情報連携を開始したという報告もあり、こうした外部システムとの連携は今後も拡大していくと予想されます。
旅行業界の人材不足解決への貢献
日本の旅行業界では、少子高齢化による人材不足が深刻な課題となっています。特に、経験豊富なベテラン社員の退職により、業務の属人化や技術・知識の継承が困難になっているという声を多く聞きます。
タビマドとマタタビ Suiteの組み合わせは、こうした人材不足の問題に対する一つの解決策になると私は考えています。業務の標準化とシステム化により、経験の浅い社員でも一定レベルの業務をこなせるようになり、ベテラン社員はより高度な判断が必要な業務に集中できるようになるからです。
株式会社アイラスの導入事例では、「以前は社員がそれぞれのやり方で仕事を進めていたため、業務がバラバラになり管理者としてストレスを感じることが多くあった」が、マタタビ Suite導入後は「業務をシステムにあわせる」ことでこれが解消され、「今ではストレスなく業務を進められている」という声が紹介されています。これは、システム化による業務標準化が、人材育成や業務効率化に大きく貢献できることを示す好例だと言えるでしょう。
顧客体験(CX)の向上という視点
近年のマーケティングやサービス業界では、顧客体験(Customer Experience、CX)の重要性が強調されています。単に商品やサービスを提供するだけでなく、その過程で顧客がどのような体験をするかが、顧客満足度やリピート率に大きく影響すると言われています。
タビマドは、旅行という体験全体の質を向上させるツールとして機能する可能性があると私は考えています。旅行前の準備段階で必要な情報に簡単にアクセスでき、旅行中も最新情報を確認できることで、旅行者の不安が軽減され、より旅そのものを楽しむことができるようになるでしょう。
また、旅行会社側も、問い合わせ対応に追われることなく、より質の高いコンサルテーションや提案に時間を使えるようになれば、顧客との関係性がより深まり、長期的な信頼関係の構築につながると期待されます。日本旅行の事例では、Zendesk AI の活用により全社的なDX推進とCX向上を実現しており、タビマドも同様の効果をもたらす可能性があると考えられます。
データ活用による旅行サービスの進化
タビマドのようなデジタルプラットフォームが普及することで、旅行者の行動データや嗜好データが蓄積されていくことになります。このデータを適切に分析・活用することで、よりパーソナライズされた旅行提案や、潜在的なニーズの発掘が可能になると私は予想しています。
例えば、過去の旅行履歴から旅行者の好みを分析し、次回の旅行先やホテルの提案に活用したり、旅行時期の傾向から最適なタイミングでのプロモーション展開を行ったりすることができるでしょう。ただし、こうしたデータ活用には、個人情報保護やプライバシーへの配慮が不可欠であり、透明性の高い運用とオプトアウトの仕組みが必要になると考えられます。
環境負荷低減への貢献
最後に、環境面での貢献についても触れておきたいと思います。タビマドによるペーパーレス化は、単なるコスト削減だけでなく、環境負荷の低減にもつながる取り組みだと評価できます。
アルプス・トラベル・サービス株式会社の導入事例では、請求書・領収書・納品書などの帳票類をすべてメール送付に移行したことが報告されています。これにより、紙の消費量削減だけでなく、印刷に使用するトナーの削減、郵送に伴うCO2排出の削減など、様々な環境負荷低減効果があると考えられます。
2025年のUnpack調査では、旅行者が「自然と触れ合えること」を優先する傾向が強まっていることが報告されており、環境に配慮した旅行サービスへのニーズは今後さらに高まると予想されます。タビマドのようなデジタルツールを活用したペーパーレス化は、こうした環境意識の高い旅行者からの支持を得られる可能性があるでしょう。
結びとして
株式会社アジェンダが2025年10月1日から提供を開始した『タビマド』は、旅行会社と旅行者の双方にメリットをもたらす、非常に有望なサービスだと私は評価しています。旅行会社にとっては業務効率化と顧客サービス品質の向上を、旅行者にとっては利便性と安心感の向上を実現する可能性を秘めているからです。
一方で、システム導入のハードルや学習コスト、セキュリティへの懸念など、いくつかの課題も存在することは事実です。特に、デジタル化に対する抵抗感や不安を持つ方々への配慮は、今後も継続して必要になるでしょう。
しかし、人材不足や業務効率化、環境負荷低減といった旅行業界が直面する様々な課題に対して、タビマドは一つの有効な解決策を提示していると感じています。今後、機能拡張や他サービスとの連携が進むことで、さらに価値の高いサービスへと進化していくことを期待しています。
私としては、タビマドのようなデジタルツールと、人による温かいホスピタリティが適切に組み合わさることで、日本の旅行業界がより一層発展し、国内外の旅行者により良い旅の体験を提供できるようになることを心から願っています。2025年は、旅行業界のデジタルトランスフォーメーションが本格化する重要な転換点になるかもしれません。タビマドの今後の展開を、一人のトラベルライターとして、そして一人の旅行愛好家として、注意深く見守っていきたいと思います。