マリオット「シティエクスプレス」大阪に2軒オープンへ ─ 中価格帯の新顔が西成に誕生
ブランド初のアジア太平洋進出、その意義とは
米マリオット・インターナショナルは2025年11月10日、メキシコ発のミッドスケールブランド「City Express by Marriott」を日本に導入すると発表しました。今回の契約ではパシフィカ・ホテルズG.K.と提携し、大阪市西成区で既存2ホテルを転換。2026年春の再開業を目指します。中価格帯ながらマリオット・ボンヴォイのロイヤルティプログラムが利用でき、品質とコストパフォーマンスの両立を図る戦略です。アジア太平洋で同ブランドが展開されるのはこれが初めてで、同社の「ホワイトスペース(未開拓価格帯)」を埋める試金石といえます。TTR Weekly 2025年11月11日
ホテル1:シティエクスプレス大阪シンイマミヤ
一つ目の物件は、2017年開業の「FP HOTELS なんば南」を9階建て・100室で転換する「City Express by Marriott Osaka Shin-Imamiya」です。場所はJR大阪環状線・南海本線・Osaka Metroが交差する新今宮駅に隣接する萩之茶屋一丁目。利便性と開発余地の両方を備え、通勤需要と観光需要の取り込みを狙います。客室はシンプルな内装にワークスペースと高速Wi-Fiを完備、セルフサービスのランドリーや軽食コーナーなど、短期滞在者にフォーカスした設備構成が特徴です。Hospitality Net 2025年11月10日
- 客室数:100室
- 建物:地上9階
- アクセス:新今宮駅徒歩1分
- 再開業予定:2026年春
ホテル2:シティエクスプレス大阪なんばサウス
二つ目は花園北に立つ14階・143室の「Hotel Blumen Hanazonokita」をリブランドする「City Express by Marriott Osaka Namba South」。こちらはOsaka Metro四つ橋線・花園町駅至近、国道26号沿いの南北動線に面し、難波や天王寺エリアへのアクセスがスムーズです。全館リノベーションにより、共用ラウンジや朝食会場を刷新。機能性を重視しつつ、温かみのある木調デザインで“Affordable Yet Comfortable”を訴求します。Hospitality Net 2025年11月10日
- 客室数:143室
- 建物:地上14階
- アクセス:花園町駅徒歩2分
- 再開業予定:2026年春
西成南部のポテンシャルとインバウンド再拡大
両ホテルが位置する西成区南部は、再開発が進む「新今宮ゲートウェイ」構想や大阪・関西万博(2025年開催)による観光需要の拡大が期待されるエリアです。JR・南海・Osaka Metroの結節点であり、関西空港からの直通アクセスも確保。さらに難波・道頓堀・天王寺など主要観光地へ電車で10分以内と利便性が高い一方、宿泊単価は梅田や心斎橋よりも抑えられる点が特徴です。ミッドスケールブランドの導入は、価格感度が高い個人旅行者や長期滞在ニーズに応える格好の選択肢となります。TRAICY 2025年11月10日
マリオットのミッドスケール強化と成長シナリオ
マリオットは2023年のシティエクスプレス買収後、北米・中南米で約150物件を展開。2025年第3四半期の決算では客室数が前年同期比+4.7%増と堅調です。日本では既に「フェアフィールド」「Moxy」などを展開していますが、平均ADRが高騰する都市部で“宿泊主体型”ニーズを取り込むブランドが不足していました。今回の大阪2軒は、①リノベーションによる投資回収スピードの短縮、②ボンヴォイ経由の集客力、③フランチャイズモデルによるオペレーション効率を三位一体で実証する役割を担います。TTR Weekly
競合比較:国内外チェーンの動向
大阪の中価格帯は東横イン、アパホテル、相鉄ホテルズなど国内勢が多数を占める一方、海外勢ではヒルトンの「トゥルー」、IHGの「ホリデイ・イン エクスプレス」やアコーの「イビス」などが進出を強めています。シティエクスプレスは「客室100~150室・立地重視」のフォーマットで都市近郊×コスト意識というニッチを突く設計。ローカルチェーンよりブランド力が高く、外資上位ブランドより価格を抑える“ギャップ狙い”が肝要といえます。今後は京都・福岡・札幌などでも同様の転換案件が増える可能性が指摘されています。
開業までの工程とキーマイルストーン
- 2025年Q4:契約締結・設計詳細決定
- 2026年1月:改装着工(外装サイン・ロビー/客室更新)
- 2026年3月:ソフトオープン、スタッフトレーニング
- 2026年4月:グランドオープン予定(桜シーズン需要を想定)
パシフィカ・ホテルズG.K.は既存の「Moxy Tokyo Kinshicho」運営で培ったノウハウを活用し、ローカル採用・多言語オペレーションの強化を進める計画です。内装工期は約3か月と短く、資本効率を最大化。インバウンド回復が続く市場環境を踏まえ、開業初年度の平均稼働率は70%超を見込んでいます(同社想定)。TRAICY
まとめ:大阪宿泊市場に新たな選択肢
マリオットの「シティエクスプレス」大阪2軒は、①中価格帯不足の解消、②西成南部の再評価、③ブランドポートフォリオ拡充という三つの観点で意義深いプロジェクトです。開業後は国内チェーンと外資ブランドの価格競争が一層活発化し、旅行者にとっては選択肢と利便性が高まることが期待されます。マリオットが示す“Affordable Quality”の挑戦が、ポスト万博の大阪観光をどこまで底上げできるか注目されます。










