マンダリン オリエンタルが2030年にオープン予定の「マンダリン オリエンタル ジェッダ」とは？ メリットやデメリットなどHOTTELの記者がわかりやすく解説
旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター”TAKA”です。旅についての疑問や噂について真相をつきとめわかりやすく解説します。
今回は、世界的なラグジュアリーホテルブランドであるマンダリン オリエンタルが2030年にサウジアラビアのジェッダにオープン予定の新規ホテル「マンダリン オリエンタル ジェッダ」について、詳しくご紹介していきたいと思います。このプロジェクトは2025年11月に正式発表されたばかりの注目案件で、中東地域におけるラグジュアリーホスピタリティの新たなベンチマークになると言われているようです。
結論：紅海を望む最高級のウォーターフロントリゾートが誕生予定
マンダリン オリエンタル ジェッダは、サウジアラビア第二の都市ジェッダの中心部に位置するジェッダ・セントラル開発プロジェクト内に建設される予定の最高級ホテルです。2030年の開業を目指しており、紅海を一望できる理想的なウォーターフロントの立地に、140室の客室とスイート、115室の長期滞在向けアパートメント、そして187戸のブランデッドレジデンスを擁する複合施設となるようです。
このホテルの最大の特徴は、世界的に著名な建築設計事務所KPFによって設計された低層・低密度の持続可能な建造物であること、そして「伝説的」とも称されるマンダリン オリエンタルならではの卓越したサービスが提供される点にあると言われています。マンダリン オリエンタルは既にドバイ、アブダビ、ドーハ、マスカット、リヤドといった中東の主要都市で高い評価を得ているホテルを展開しており、ジェッダでの開業は同グループの中東地域におけるポートフォリオをさらに強化することになるようです。
プロジェクトの詳細と立地について
マンダリン オリエンタル ジェッダが建設されるジェッダ・セントラルは、総投資額750億サウジリヤル（約200億ドル）にも及ぶ、サウジアラビアの国家戦略構想「ビジョン2030」の中核を成す大規模ウォーターフロント開発プロジェクトのようです。このプロジェクトは570万平方メートルという広大な敷地に、オペラハウス、水族館、スタジアム、博物館という4つの象徴的なランドマーク施設に加え、最新設備を備えたマリーナ、プライベートレジデンス、ショッピング・レストラン街、文化施設などが建設される計画となっているようです。
ジェッダ・セントラルプロジェクトは3つのフェーズに分かれて開発が進められる予定で、第1フェーズ（全体の45%）は2027年末までに完成し、オペラハウス、スタジアム、水族館が含まれるとのことです。第2フェーズ（全体の36%）は2030年までの完成を目指しており、博物館、図書館、ウェルネス地区が含まれる計画のようです。マンダリン オリエンタル ジェッダはこの壮大な開発の中心部、紅海に面したプライムロケーションに位置することになると言われています。
ジェッダという都市について少し説明しておきましょう。ジェッダは人口約360万人を擁するサウジアラビア第二の都市で、紅海に面した重要な経済・文化・観光の中心地です。年間約600万人が訪れるとされており、イスラム教の二大聖地であるメッカとメディナへの玄関口としても機能しています。また、紅海沿岸という戦略的な立地を活かし、グローバルビジネスの重要なハブとしても発展を続けているようです。
ホテルの施設構成と特徴
マンダリン オリエンタル ジェッダは、ホテル部門、長期滞在向けアパートメント、そしてブランデッドレジデンスという3つの主要な構成要素から成り立つ複合施設となる予定のようです。
まず、ホテル部門には140室のエレガントに設えられた客室とスイートが用意され、すべての客室から紅海の壮大なパノラマビューを楽しむことができるとされています。さらに、115室の広々としたアパートメントが長期滞在のゲスト向けに設計され、プライベートダイニング施設なども備えられる計画のようです。
そして特筆すべきは、187戸のブランデッドレジデンスの存在です。2ベッドルームから4ベッドルームまでの私有住宅として販売される予定で、レジデンス所有者は専用のラウンジ、エンターテインメントスペース、図書室、映画館、ゲームルーム、ゴルフシミュレーター、キッズクラブ、スイミングプール、フィットネスセンターといった豪華な専用アメニティへのアクセスが可能となり、さらにマンダリン オリエンタルの伝説的なサービスを受けられるとのことです。
ダイニング施設としては、マンダリン オリエンタルの特徴である美食体験を提供する5つのレストランとラウンジが計画されているようです。マンダリン オリエンタルグループは、世界中で最も多くのミシュラン星付きレストランを持つホテルブランドとして知られており、ピエール・ガニェール、ヘストン・ブルメンタール、ダニエル・ブールーといった著名シェフとのコラボレーションでも有名です。ジェッダでも同様の高水準な美食体験が提供されることが期待されているようです。
ウェルネス施設に関しては、「ザ・スパ・アット マンダリン オリエンタル」が設けられ、包括的なウェルネス、美容、スパサービスが提供される予定とのことです。マンダリン オリエンタルのスパは世界中で高い評価を受けており、フォーブス・トラベルガイドで5つ星を獲得している施設も多数あるようです。また、キッズクラブと託児施設も完備され、家族連れのゲストにも配慮された設計となっているようです。
さらに、大規模な宴会場を中心とした充実したミーティング・イベントスペースも用意される計画で、ビジネス利用にも対応した施設構成となる見込みのようです。
建築デザインとサステナビリティ
マンダリン オリエンタル ジェッダの建築デザインを手がけるのは、国際的に著名な建築設計事務所KPFです。KPFは、上海ワールドファイナンシャルセンター、シカゴの333ワッカー・ドライブ、ワシントンDCの世界銀行本部など、世界中で300以上の賞を受賞してきた実績を持つ、グローバルで最も尊敬される建築設計事務所の一つとされています。
KPFの建築責任者であるブルース・フィッシャー氏によれば、このホテルとブランデッドレジデンスは「地元の伝統的な建築要素から着想を得たデザインに、マリーナの活気ある雰囲気と紅海の静けさを調和させた、コンテンポラリーなウォーターサイド体験」を創出することを目指しているとのことです。低層・低密度の建造物として設計されることで、マリーナという特別な立地を活かした都市型サンクチュアリとなり、洗練された暮らし、文化的交流、そしてウェルビーイングが融合する空間が実現される予定のようです。
特に注目すべきは、サステナビリティへの強いコミットメントです。KPFのデザインビジョンは、持続可能性と場所への深い敬意に根ざしており、これはマンダリン オリエンタルの職人技とデザイン・エクセレンスへの価値観と完全に一致していると言われています。将来を見据えた独創的かつサステナブルな建造物を生み出すことが、このプロジェクトの重要な目標の一つとなっているようです。
メリット・良い点について
マンダリン オリエンタル ジェッダには、数多くのメリットと魅力的な良い点があると考えられます。
まず第一の利点は、その圧倒的なロケーションの素晴らしさでしょう。紅海を一望できるウォーターフロントという立地は、世界中の旅行者にとって大きな魅力となるはずです。紅海は世界第4位の規模を誇るバリアリーフを有しており、美しい珊瑚礁と透明度の高い海水で知られています。海水温も年間を通じて25.5℃から31℃と快適で、一年中海を楽しむことができる環境のようです。
第二のおすすめポイントは、マンダリン オリエンタルブランドが持つ「伝説的なサービス」を体験できることです。マンダリン オリエンタルは150年近い歴史を持つバンコクのオリエンタルホテルと、1963年開業の香港のマンダリンホテルという二つの伝統を受け継いでおり、優雅なスタイル、職人技の習熟、そして比類なきサービスの伝統で知られています。同グループは「Legendary Quality Experiences（伝説的な品質体験）」というシステムを全ホテルで実施しており、基本的な高級基準ではなく体験に焦点を当て、ゲストの変化する要求に応じて定期的に見直されているとのことです。
第三のメリットは、ジェッダ・セントラルという壮大な開発プロジェクトの一部であることです。オペラハウス、水族館、スタジアム、博物館といった世界クラスの文化施設や、最新設備を備えたマリーナが徒歩圏内にあるという環境は、ホテル滞在を超えた充実した体験を提供してくれるでしょう。ショッピングやレストラン街も併設される予定で、滞在中に退屈することはなさそうです。
第四の良い点として、ブランデッドレジデンスという選択肢があることも挙げられます。ホテルのような5つ星サービスを享受しながら、自分の家として所有できるという新しいライフスタイルは、富裕層にとって非常に魅力的な投資対象となると言われています。専用のアメニティへのアクセスや24時間コンシェルジュサービスなど、ホテル暮らしの利便性を日常生活に取り入れられるのは大きな利点でしょう。
第五のおすすめポイントは、美食体験の充実です。マンダリン オリエンタルは世界で最も多くのミシュラン星付きレストランを持つホテルグループであり、ジェッダでも同様の高水準な料理が期待できるでしょう。5つのダイニング施設が計画されており、様々な美食体験を楽しめるようです。
第六の利点として、ウェルネス施設の充実も見逃せません。マンダリン オリエンタルのスパは世界中でフォーブス5つ星を獲得するなど高い評価を受けており、ホリスティックなアプローチによる包括的なウェルネス体験が提供されるとされています。
第七のメリットは、サウジアラビアの「ビジョン2030」という国家戦略の中核プロジェクトである点です。政府の強力なバックアップと莫大な投資により、インフラ整備や交通アクセスの改善が進められており、将来的には世界トップクラスの観光デスティネーションとなることが期待されています。
デメリット・悪い点について
一方で、マンダリン オリエンタル ジェッダには考慮すべきデメリットや欠点も存在すると考えられます。
第一の悪い点は、開業時期が2030年と5年以上先である点です。大規模建設プロジェクトでは遅延が発生することも珍しくなく、ホテル建設プロジェクトの46.6%が遅延し、38.1%が25ヶ月から60ヶ月も遅れているというデータもあるようです。特に中東地域の大規模開発では、資材調達や熟練労働者の確保、複雑な承認プロセスなどにより、予定通りの開業が困難になるケースも報告されているようです。
第二のデメリットは、ジェッダの気候条件です。紅海沿岸のジェッダは高温多湿な気候で知られており、7月の平均最高気温は38℃（100°F）に達し、湿度も非常に高いとされています。夜間でもあまり気温が下がらず、年間を通じて暑く蒸し暑い環境のようです。暑さに弱い方や、快適な気候での滞在を重視する旅行者にとっては、欠点となる可能性があります。
第三のおすすめしない点は、宿泊料金の高さが予想されることです。マンダリン オリエンタルは最高級ラグジュアリーホテルブランドであり、世界各地の同グループホテルでも高額な宿泊料金が設定されています。ジェッダでも同様に、一般的な旅行者には手が届きにくい価格帯になると予想されます。また、ブランデッドレジデンスも富裕層向けの投資物件となるため、一般の購入者にとっては高すぎる価格設定となる可能性が高いでしょう。
第四の悪い点として、文化的・宗教的な制約があることも挙げられます。サウジアラビアはイスラム教の厳格な戒律に基づいた国であり、アルコールの提供は禁止されています。多くの高級ホテルで提供されているバーやラウンジでのアルコール飲料を楽しむことができない点は、一部の旅行者にとってはデメリットとなるでしょう。また、服装規定や男女の行動に関する文化的規範にも配慮が必要となるようです。
第五のデメリットは、競争の激化です。サウジアラビアは2030年までに36万2000室の新しいホテル客室を追加する計画を進めており、ジェッダ周辺でも多数の高級ホテルが開業予定とのことです。アトランティス、ワン&オンリー、フォーシーズンズ、セントレジス、リッツカールトンなど、世界的なラグジュアリーブランドが相次いで進出しており、マンダリン オリエンタル ジェッダも厳しい競争環境に直面する可能性があるようです。
第六の欠点として、現時点では詳細な情報が限られていることも挙げられます。2025年11月に発表されたばかりの新しいプロジェクトであり、具体的な料金、予約開始時期、詳細な施設情報、オープン日程などはまだ公表されていないようです。旅行計画を立てる上で必要な情報が不足している点は、現時点でのデメリットと言えるでしょう。
第七のおすすめできない点は、アクセスの問題です。ジェッダは国際空港があり比較的アクセスしやすいとされていますが、日本からの直行便はなく、中東の主要ハブ空港での乗り継ぎが必要となるようです。また、ジェッダ・セントラルが紅海沿岸の新開発地区であることから、既存の市街地からの移動手段や所要時間など、詳細な交通アクセス情報もまだ明らかになっていない点は注意が必要でしょう。
おすすめしたい方・おすすめできない方
これらのメリットとデメリットを踏まえると、マンダリン オリエンタル ジェッダは以下のような方々に特におすすめできると言えるでしょう。
まず、最高級のラグジュアリー体験を求める富裕層の旅行者にとっては、まさに理想的な選択肢となるはずです。マンダリン オリエンタルの伝説的なサービスと、紅海を望む絶景ロケーション、世界クラスの建築デザイン、そして充実したダイニングとスパ施設は、特別な記念日や贅沢な休暇を過ごすのに最適な環境を提供してくれるでしょう。
次に、中東地域への投資やビジネスに関心がある方にもおすすめです。サウジアラビアの「ビジョン2030」という国家戦略の中核プロジェクトであり、今後の経済成長が期待される地域です。ブランデッドレジデンスへの投資を検討している富裕層にとっては、資産価値の向上も見込める魅力的な投資対象となる可能性があるようです。
また、新しい旅行デスティネーションを開拓したい冒険心旺盛な旅行者にも向いています。サウジアラビアは近年観光ビザの発給を開始し、急速に観光産業を発展させている注目の新興デスティネーションです。世界遺産の歴史地区アル・バラドや、紅海のダイビングスポットなど、まだあまり知られていない魅力的な観光資源が豊富にあるとされています。
一方で、以下のような方々にはあまりおすすめできないかもしれません。
まず、予算を重視する旅行者や、コストパフォーマンスを求める方には向いていないでしょう。最高級ラグジュアリーホテルであるため、宿泊料金は高額になることが予想されます。より手頃な価格で快適な滞在を求める方は、他のホテルを検討した方が良いかもしれません。
次に、暑さや湿気に弱い方、快適な気候での旅行を重視する方にもおすすめしにくいと言えます。ジェッダは年間を通じて高温多湿で、特に夏季は非常に暑くなるため、気候面での快適性を重視する方には向いていない可能性があります。
また、お酒を楽しみたい方や、リゾートでの飲酒を重視する方にもおすすめできません。サウジアラビアではアルコールの提供が法律で禁止されているため、バーやラウンジでの飲酒を期待する方には物足りない滞在となってしまうでしょう。
さらに、近い将来の旅行を計画している方にも現時点ではおすすめできません。開業が2030年と5年以上先であり、詳細な予約情報もまだ公表されていないため、具体的な旅行計画を立てることが困難な状況です。
Q&A：よくある質問
Q1： マンダリン オリエンタル ジェッダはいつ開業する予定ですか?
A1： 2030年に開業予定と発表されていますが、具体的な開業月日はまだ公表されていないようです。大規模建設プロジェクトでは遅延が発生する可能性もあるため、最新情報を随時確認することをおすすめします。
Q2： 客室数はどのくらいありますか?
A2： ホテル部門に140室の客室とスイート、長期滞在向けに115室のアパートメント、さらに187戸のブランデッドレジデンスが計画されているとのことです。合計で442室・戸の宿泊施設が提供される見込みのようです。
Q3： ジェッダ・セントラルとはどのようなプロジェクトですか?
A3： 総投資額750億サウジリヤル（約200億ドル）にも及ぶ、サウジアラビアの「ビジョン2030」の中核を成す大規模ウォーターフロント開発プロジェクトです。570万平方メートルの敷地に、オペラハウス、水族館、スタジアム、博物館などの文化施設や、マリーナ、ショッピング街、1万7000戸の住宅などが建設される計画とのことです。
Q4： マンダリン オリエンタル ジェッダの最大の魅力は何ですか?
A4： 紅海を一望できる絶景ロケーション、マンダリン オリエンタルの伝説的なサービス、世界的建築事務所KPFによる持続可能な建築デザイン、充実したダイニングとスパ施設、そしてジェッダ・セントラルという壮大な開発プロジェクトの一部であることなど、多くの魅力があると言われています。
Q5： ジェッダへのアクセス方法は?
A5： ジェッダにはキング・アブドゥルアズィーズ国際空港があり、世界各地からの国際便が就航しているようです。日本からは直行便がないため、ドバイ、ドーハ、アブダビなどの中東主要ハブ空港での乗り継ぎが必要となるでしょう。また、ジェッダ・セントラル地区専用の紅海国際空港も開発計画に含まれているという情報もあるようです。
Q6： サウジアラビア旅行で注意すべきことは?
A6： イスラム教の戒律に基づいた国であるため、アルコールの提供は禁止されており、服装や行動にも一定の配慮が必要とされているようです。また、お祈りの時間や宗教的な慣習を尊重する必要があります。ただし、近年は観光客の受け入れに向けた規制緩和も進んでおり、以前よりも旅行しやすくなってきているとの情報もあります。
Q7： マンダリン オリエンタルは他にサウジアラビアでホテルを展開していますか?
A7： はい、マンダリン オリエンタルは既に首都リヤドで「マンダリン オリエンタル アル ファイサリア リヤド」を運営しているようです。2021年から運営を開始し、2024年に大規模なリノベーションを経てリブランディングされた325室の大型ホテルで、高い評価を得ているとのことです。
Q8： 予約はいつから可能になりますか?
A8： まだ具体的な予約開始時期は発表されていないようです。開業予定が2030年であることを考えると、おそらく2028年から2029年頃に予約受付が開始されるのではないかと予想されますが、公式発表を待つ必要があるでしょう。
トラベルライターTAKAの考察と意見
長年世界中のホテルを取材してきた私トラベルライターTAKAとして、このマンダリン オリエンタル ジェッダのプロジェクトについて、いくつかの独自の視点から考察をお伝えしたいと思います。
まず最初に注目すべきは、このプロジェクトが単なる高級ホテルの開業ではなく、サウジアラビアという国家そのものの変革を象徴する取り組みであるという点です。「ビジョン2030」という国家戦略のもと、石油依存経済から観光・文化・エンターテインメントを中心とした多様な経済への転換を図っているサウジアラビアにとって、マンダリン オリエンタルのような世界トップクラスのラグジュアリーホテルブランドの誘致は、極めて重要な意味を持っていると考えられます。
私が特に興味深いと感じるのは、この開発が「ウォーターフロント」という点に徹底的にこだわっている点です。紅海という美しい海を最大限に活用し、マリーナを中心とした新しいライフスタイルを提案しようとしている姿勢は、従来の砂漠の国というサウジアラビアのイメージを大きく変える可能性を秘めていると思います。実際、紅海は世界第4位の規模を誇るバリアリーフを有しており、透明度の高い海水と豊かな海洋生態系で知られています。これまであまり注目されてこなかったこの海洋資源を、観光の目玉として前面に押し出そうとする戦略は、非常に理にかなっていると言えるでしょう。
また、KPFという世界的建築事務所を起用し、「持続可能性」と「地元の伝統的建築要素」を融合させようとしている点も注目に値します。近年、世界中のラグジュアリーホテル開発において、単なる豪華さだけでなく、環境への配慮と地域文化への敬意が重要な評価基準となってきています。マンダリン オリエンタル ジェッダがこの点を開発の初期段階から明確に打ち出していることは、長期的な成功を見据えた賢明な判断だと感じます。
一方で、いくつかの懸念材料があることも正直に指摘しておきたいと思います。まず、2030年という開業時期の設定です。5年以上先の開業予定ということは、その間に多くの不確定要素が発生する可能性があります。世界的なホテル建設プロジェクトの遅延率の高さを考えると、予定通りの開業は決して容易ではないでしょう。特に、ジェッダ・セントラル全体が段階的に開発される大規模プロジェクトであることを考えると、周辺インフラの整備状況や、他の施設の完成時期なども、ホテルの成功に大きく影響すると思われます。
次に、競争環境の激化です。サウジアラビア全体で36万室以上の新規ホテル客室が計画されており、ジェッダ周辺でもアトランティス、ワン&オンリー、フォーシーズンズ、セントレジスなど、名だたるラグジュアリーブランドが相次いで進出を表明しています。これらの競合ホテルとの差別化をどのように図るかが、マンダリン オリエンタル ジェッダの成否を分ける重要なポイントになるでしょう。
私の経験から言えば、マンダリン オリエンタルの最大の強みは、そのサービスの質にあります。「伝説的なサービス」と称される同グループのホスピタリティは、単なるマニュアル通りの対応ではなく、一人ひとりのゲストの好みや要望を細かく把握し、期待を上回る体験を提供することに重点を置いています。これは、最新設備や豪華な内装といったハード面よりも、むしろソフト面での卓越性を追求するアプローチです。
特に中東地域では、もともと「おもてなし」の文化が非常に強く根付いています。サウジアラビアのビジネス文化においても、人間関係と信頼関係の構築が何よりも重視され、ゲストをもてなすことは神聖な価値観として捉えられているようです。この地域特有のホスピタリティ文化と、マンダリン オリエンタルが長年培ってきたアジアと欧州のサービス哲学が融合することで、まったく新しい形のラグジュアリー体験が生まれる可能性があると、私は期待しています。
また、ブランデッドレジデンスという概念が、今後のラグジュアリー不動産市場において重要な位置を占めるようになってきている点も見逃せません。単なる高級住宅ではなく、5つ星ホテルのサービスを日常生活に組み込むことができるという新しいライフスタイルの提案は、グローバルな富裕層の間で急速に支持を広げています。特に、複数の拠点を持つ国際的なビジネスパーソンや、一年のうち数ヶ月を異なる場所で過ごすような「ノマド富裕層」にとって、ブランデッドレジデンスは非常に魅力的な選択肢となっているようです。
マンダリン オリエンタル ジェッダが提供する187戸のレジデンスは、単なる不動産投資としてだけでなく、紅海沿岸という新興ラグジュアリーデスティネーションにおける「先行者利益」を享受できる機会としても注目されるべきでしょう。ジェッダ・セントラルという壮大な開発プロジェクトの中核に位置し、オペラハウスやマリーナといった文化・レジャー施設に囲まれた環境は、長期的な資産価値の向上も期待できると思われます。
気候面での課題については、正直に言えば無視できない要素だと考えています。私自身、夏季の中東を何度も訪れた経験がありますが、その暑さと湿度は想像以上に厳しいものがあります。ただし、最近の高級ホテルは冷房設備が非常に充実しており、屋内では快適に過ごすことができます。また、マリーナやビーチといったウォーターフロントの利点を活かし、海からの涼しい風を取り込む設計や、日陰を多く作る建築デザインなど、暑さ対策が施されることを期待したいところです。
文化的・宗教的な制約、特にアルコールが提供されないという点は、一部の旅行者にとってはデメリットとなるでしょう。しかし、これをむしろ新しい体験の機会と捉えることもできると私は考えています。アルコールに頼らない美食体験、ノンアルコールの創造的なカクテル、伝統的なアラビアコーヒーや多様なティーセレクションなど、中東ならではの飲食文化を深く味わうことができるかもしれません。実際、近年のウェルネスツーリズムのトレンドを考えると、アルコールフリーの環境がむしろ健康的で魅力的だと感じる旅行者も増えてきているように思います。
最後に、私がこのプロジェクトに最も期待していることをお伝えしたいと思います。それは、マンダリン オリエンタル ジェッダが、サウジアラビアという国を世界に向けて再定義する役割を果たす可能性があるという点です。多くの人々にとって、サウジアラビアはまだまだ未知の国であり、訪れることを躊躇する方も少なくないでしょう。しかし、マンダリン オリエンタルのような信頼できるラグジュアリーブランドがこの国に進出し、世界水準のホスピタリティを提供することで、より多くの旅行者がサウジアラビアを訪れるきっかけとなるはずです。
そして、一度この国を訪れた人々は、メディアを通じて得ていたイメージとは異なる、豊かな歴史と文化、美しい自然、そして温かいホスピタリティを持つ国であることを発見するでしょう。ジェッダの歴史地区アル・バラドの風情ある街並み、紅海の美しい珊瑚礁、近郊の砂漠の壮大な景観など、まだ世界的にはあまり知られていない魅力的な観光資源が豊富に存在しています。
マンダリン オリエンタル ジェッダは、こうした素晴らしい体験へのゲートウェイとなり、サウジアラビア観光の新時代を切り開く存在になる可能性を秘めていると、私は確信しています。2030年の開業まではまだ時間がありますが、このプロジェクトの進展を今後も注意深く見守っていきたいと思います。そして、開業の暁には、ぜひとも自分自身でこのホテルを訪れ、紅海を望む客室から眺める夕日と、マンダリン オリエンタルの伝説的なサービスを体験してみたいと考えています。
旅行者の皆様にとっても、このホテルの開業は、中東という魅力的な地域をより深く知る素晴らしい機会となるはずです。今から情報収集を始め、2030年の開業時には、新しい旅のデスティネーションとしてサウジアラビア・ジェッダを検討してみてはいかがでしょうか。きっと、忘れられない旅の思い出を作ることができるはずです。
