「家よりも快適に、ホテルよりも特別に。」がコンセプトの「illi Stays（イリー ステイズ）」とはどんなホテルブランド？ メリットやデメリットなどHOTTELの記者がわかりやすく解説

旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター”TAKA”です。近年、東京を訪れる旅行者の間で「illi Stays（イリーステイズ）」というホテルブランド名を耳にする機会が増えているようです。「家よりも快適に、ホテルよりも特別に。」という印象的なコンセプトを掲げるこのブランドは、一体どのようなホテルなのでしょうか。今回は、ネット上の情報を幅広くリサーチし、その実態に迫ります。

結論：illi Staysとはグループ滞在に特化した無人運営のブティックホテル

illi Staysは、株式会社BARE NOTE STUDIOが企画・開発・運営する、グループ向け滞在に特化したブティックホテルブランドと言われています。最大の特徴は、4名以上のグループでの宿泊に最適化された広々とした客室設計と、無人運営でありながら高品質なサービスを提供するという、一見矛盾したかのような独特のスタイルにあるようです。

「Where Home Meets Hotel（ホームとホテルが出会う場所）」をコンセプトに、ホテルのホスピタリティと自宅のような安らぎを兼ね備えた「イイトコドリ」な宿泊体験を提供することを目指していると言われています。

illi Stays（イリー ステイズ）とは何か：ブランドの成り立ちと特徴

ブランドの誕生と発展

illi Staysブランドは、2019年12月に東京・下北沢に第一号店「illi Shimokitazawa」をオープンしたのが始まりと言われています。株式会社BARE NOTE STUDIOは2017年に設立され、代表取締役の黒木郁己氏がホステル運営の経験から、グループで宿泊できる施設の少なさに着目したことがブランド誕生のきっかけとなったようです。

2025年7月時点で都内に15施設を展開し、年間ADR（平均客室単価）は5万円超、稼働率も97％を超えるという高い実績を誇っているとされています。2025年9月には大阪・心斎橋エリアに初の関西拠点「illi Jam Shinsaibashi」をオープンし、東京以外への展開も始まっているようです。

ブランドコンセプトの背景

ブランド名の「illi」という言葉には、自宅のような安らぎとホテルのようなホスピタリティをかけ合わせた、シンプルでハイブリッドな宿泊施設という意味が込められていると言われています。代表の黒木氏がイタリアで体験した2つの民泊施設での対照的な経験が、このブランドコンセプトの原点になっているようです。

一つ目は清潔感に欠ける残念な民泊、二つ目は心温まるホスピタリティあふれる素晴らしい民泊だったとのこと。この経験から、ホテルのような信頼性と清潔感、民泊のような独自性と機能性、そして自宅のような快適さを兼ね備えた施設を作りたいという想いが生まれたと言われています。

ホテル一覧：都内中心に展開する個性的な施設

東京都内の主要施設

2025年11月時点で、illi Staysは東京都内を中心に以下のような拠点を展開していると言われています。

下北沢エリアでは、ブランド発祥の地として「illi Shimokitazawa」「illi Com Shimokitazawa」「illi Amu Shimokitazawa」の3施設が運営されているようです。下北沢駅から徒歩2分から5分という好立地で、それぞれ異なるデザインコンセプトを持った客室が用意されていると言われています。

渋谷エリアには「illi Mani Shibuya」「illi Tria Shibuya」「illi Pal Shinagawa Gotanda」が展開されており、渋谷駅から徒歩5分から10分の範囲にあるようです。渋谷エリアの施設では約9割が外国人観光客で、平均滞在日数は3泊、長い場合は1カ月ほどになることもあると言われています。

新宿・四ツ谷エリアでは「illi Tas Shinjuku」「illi Enu Yotsuya」などが運営され、新宿御苑前駅徒歩7分、四ツ谷駅徒歩5分といったアクセスの良さが特徴のようです。

浜松町・芝公園エリアには「illi Rom Hamamatsucho」「illi Rug Hamamatsucho」「illi Noa Hamamatsucho」「illi Surp Shiba-Park」が集積しており、東京タワーや増上寺へのアクセスが良好な立地にあると言われています。特に「illi Surp Shiba-Park」は83㎡以上という、illi Stays最大級の広さを誇る施設とのことです。

その他、中野には「illi Esu Nakano」、青山には「illi Tex Aoyama」、麻布十番には「illi Gran Azabujuban」、錦糸町には「illi Mia Kinshicho」などが展開されているようです。

大阪への展開

2025年9月には大阪初出店となる「illi Jam Shinsaibashi」が本町駅徒歩5分、心斎橋駅徒歩7分の立地にオープンしたと言われています。64㎡の広さで最大6名まで滞在可能な施設となっており、東京から関西への展開の第一歩となったようです。

ブランドとしては2025年度に100室、2026年度には計200室の開業を目標に掲げており、大阪や京都といったインバウンド需要の高いエリアへの進出も計画していると言われています。

料金体系：大人数になるほどお得になる仕組み

基本的な料金設定

illi Staysの料金設定は、一般的なホテルとは異なる特徴があると言われています。基本的には1室あたりの料金設定となっており、大人数での宿泊になるほど一人あたりの料金が安くなる仕組みのようです。

例えば「illi Shimokitazawa」の場合、大人2名1泊あたり素泊まりで最安価格25,420円（1名あたり12,710円）程度からとなっており、「illi Com Shimokitazawa」では3名様まで基本料金でご宿泊可能で、おひとり様追加料金2,000円という設定になっていると言われています。6人で利用すれば、一人あたりの宿泊費を大幅に抑えることができるとのことです。

ADR（平均客室単価）の実績

ブランド全体としては、年間平均ADR（平均客室単価）が5万円超を維持していると言われています。これは都内のホテルとしては比較的高めの水準と言えるでしょう。一泊あたり平均6万円台の宿泊単価を維持しつつ、平均宿泊日数は3日以上、稼働率は常時90％超という高い実績を誇っているようです。

料金は宿泊日によって価格変動が大きいという口コミもあり、需要に応じたダイナミックプライシングを採用していると考えられます。

割引プランとキャンセルポリシー

公式サイトや予約サイトでは、早期予約割引プランが用意されていることがあるようです。例えば「60日前予約で25%OFF」や「30日前予約で20%OFF」といった早期割引プランが設定されている施設もあると言われています。2泊以上の連泊が条件となっているプランもあるようです。

キャンセルポリシーについては、施設や予約プランによって異なるようですが、宿泊約款によると宿泊30日前からキャンセル料が発生する場合があるとされています。ある口コミでは「宿泊30日前からキャンセル料100％という他では見たことがないキャンセル条件」という指摘もあり、予約時には十分な注意が必要と言えるでしょう。

予約方法：複数の予約サイトから選択可能

主な予約チャネル

illi Staysの予約は、公式ウェブサイトのほか、複数の大手予約サイトから可能と言われています。具体的には、楽天トラベル、Booking.com、Expedia、じゃらんnet、Airbnbなどの主要OTA（オンライン旅行代理店）で予約できるようです。

公式サイトは「https://illi-group.com/」となっており、各施設の詳細情報や空室状況を確認できると言われています。

チェックイン手順の特徴

illi Staysの最大の特徴の一つが、無人セルフチェックインシステムと言われています。予約完了後、チェックイン方法の案内がメールなどで送られてくるようです。

施設にはフロントスタッフが常駐しておらず、エントランスに設置されたタブレットやキオスク端末を操作して、無人でチェックインを行う仕組みとのことです。チェックイン時間は16時から、チェックアウト時間は10時という設定が一般的なようです。

無人チェックインは「フロントスタッフと接触することなく、安心してチェックインが可能」というメリットがある一方で、「チェックインとチェックアウトがスムーズに出来ませんでした。少し難しかったです」という口コミもあり、操作に不慣れな方には戸惑いもあるようです。

24時間サポート体制

無人運営ではあるものの、24時間対応のチャットサポート体制が整っているとされています。滞在中に問題やリクエストが発生した場合には、24時間対応のカスタマーサポートがリモートで対応する体制があると言われています。お客様からの質問やリクエストに対して、メールや電話、チャットシステムを活用した遠隔サポートを通じて対応しているようです。

支払い方法：クレジットカード決済が基本

利用可能な支払い手段

illi Staysでの支払い方法は、基本的にクレジットカードによる事前決済または現地決済となるようです。宿泊約款によると、「通貨又は当ホテルが認めた宿泊券、クレジットカード等これに代わり得る方法により、予約時、宿泊客の出発の際又は当ホテルが請求した時にお支払いいただきます」とされています。

利用可能なクレジットカードは、Visa、American Express、JCBなどが挙げられており、一部施設では現金での支払いができない場合もあるようです。

宿泊サイトによっては、事前決済で割引が適用されるプランも用意されていると言われています。

宿泊税について

東京都の宿泊税が別途かかる場合があるようです。税額は1泊の宿泊料金に基づき、1泊1名につき100円～10,000円となっており、宿泊料金によって変動すると言われています。

メリット：グループ滞在に最適な機能性

広々とした客室空間

illi Staysの最も大きなメリットは、4名以上のグループ滞在に特化した広々とした客室設計と言えるでしょう。全施設が50㎡以上、最大83㎡超という広さを確保しており、一般的なビジネスホテルの4～5倍の広さがあると言われています。

各部屋にはリビング、ダイニング、キッチン、洗濯乾燥機が完備されており、最大6名から8名までの宿泊が可能とされています。従来のホテルでは、グループでの宿泊時に複数の客室を予約する必要がありましたが、illi Staysでは一つの客室でグループ全員が快適に滞在できるため、宿泊費用の節約だけでなく、グループ内のコミュニケーションも促進されると期待されているようです。

長期滞在に適した設備

キッチンや洗濯乾燥機の完備により、長期滞在時の生活利便性が非常に高いことも大きな利点と言われています。IH付きシステムキッチン、電子レンジ、冷蔵庫、電気ケトル、調理器具、食器類などが揃っており、自炊を楽しみたい方にもぴったりとのことです。

洗濯乾燥機（洗剤付き）も各部屋に備え付けられているため、大人数での長期滞在でも清潔に過ごせると言われています。これらの設備は、2週間以上の長期滞在を予定している海外からの観光客や、ワーケーション目的での利用者にとって非常に魅力的とされています。

充実したアメニティと設備

基本的なアメニティとして、シャンプー、ボディソープ、タオル、ドライヤー、歯ブラシ、マウスウォッシュなどが用意されていると言われています。スリッパ、ハンガー、衣類用アイロン、アイロン台なども備えられているようです。

各部屋にはチューナーレスTV（スマートモニター）が設置され、Netflix、YouTubeなどの動画配信サービスが視聴できるとされています。ただし、地上デジタル放送は視聴できない場合があるという口コミもあります。無料Wi-Fiも全室で利用可能と言われています。

コストパフォーマンスの高さ

無人運営によるコストメリットがゲストの宿泊料金に反映されることで、コストパフォーマンスの高い宿泊体験を提供できる点もおすすめできる要素と言われています。6人で利用すれば一人あたり3,000円台から宿泊できる場合もあるとされ、大人数になればなるほどお得にご宿泊が可能とのことです。

立地の良さ

すべての施設がインバウンド需要の高い主要エリアに位置し、観光の拠点として抜群の利便性を誇ると言われています。駅から徒歩5分以内という好アクセスの施設が多く、渋谷、新宿、下北沢、浜松町など、都心の人気エリアに集中しているようです。

24時間いつでもチェックイン可能

無人運営だからこそのメリットとして、24時間いつでもチェックイン可能という柔軟性があると言われています。特に、国際線の到着時間が不規則になりがちなインバウンド観光客にとって、この柔軟性は大きな価値となるとされています。

デメリット：無人運営ゆえの課題も

対面サービスの限界

悪い点として考慮すべきは、無人運営ゆえの対面サービスの限界と言われています。従来のフルサービスホテルのようなコンシェルジュサービスや、対面でのきめ細やかなおもてなしは期待できないと考えられます。フロントスタッフが常駐していないため、緊急時や複雑な問い合わせに対する即座の対応が難しい場合もあるかもしれません。

チェックインシステムの操作が難しいと感じる利用者もいるようで、「チェックインとチェックアウトがスムーズに出来ませんでした。少し難しかったです」という口コミも見られます。ただし、「非対面チェックインも難しくなく」という肯定的な意見もあり、慣れや個人差があるようです。

少人数利用のコストパフォーマンス

4名以上のグループ滞在に特化した設計のため、カップルや単身での利用者にとっては客室が広すぎて、コストパフォーマンスの面でおすすめしない場合もあると言われています。最大収容人数で利用することを前提とした料金設定となっているため、少人数での利用では割高に感じられる可能性があるようです。

キャンセルポリシーの厳しさ

宿泊30日前からキャンセル料100％という、他のホテルと比較して厳しいキャンセルポリシーが設定されている場合があるという指摘もあります。予約時には十分な注意が必要で、予定が確定してから予約することをおすすめするとの声もあるようです。

設備面での課題

口コミでは、いくつかの設備面での欠点も指摘されています。「ルームウェアがあったらいいなと思いました」という意見や、「テレビが動画配信サービスの視聴しかできなかった。できれば、地デジが見れるとありがたかった」という指摘もあるようです。

また、「7人で予約しましたが、ベッドのまくらは6つしかなく、1人はリビングのクッションを使用しました」という口コミや、「一番高額な部屋を6名で予約できたから予約したのに、大人6人寝れるスペースがなかった。4人寝れるとふれこみのロフトが狭すぎて、ソファーを使っても5人が限度」という厳しい指摘もあります。収容人数の表示と実際の快適性に乖離があると感じる利用者もいるようです。

立地による騒音の可能性

新宿などの繁華街に近い施設では、夜間の騒音レベルが比較的高い可能性があり、静寂を重視する宿泊者にとっては環境面での欠点となる場合もあると考えられます。ただし、「防音設備」を備えている客室もあるとされており、施設によって対応は異なるようです。

おすすめしたい方

グループ旅行者

4名以上のグループ、特に友人同士やファミリーでの旅行者に最適と言われています。広々とした空間で、まるで自宅にいるかのようにくつろぎながら、グループ全員で思い出を共有できる環境が整っているようです。

長期滞在者

キッチンや洗濯乾燥機などの設備が整っているため、1週間以上の長期滞在を予定している旅行者にも適していると言われています。特に、インバウンドの外国人観光客で、日本を拠点に複数の都市を回る計画をしている方にとって、東京での長期滞在の拠点として理想的とされています。

ワーケーション利用者

ワーケーション目的での利用や、東京でのビジネス出張を兼ねた家族旅行を計画している方にも適していると考えられます。キッチンと洗濯機能があることで、長期滞在時の生活コストを大幅に削減できるとされています。

コストパフォーマンス重視の方

大人数での利用を前提とすれば、一人あたりの宿泊費を大幅に抑えることができるため、コストパフォーマンスを重視する旅行者にもおすすめと言われています。

おすすめできない方

対面サービスを重視する方

フルサービスホテルのような対面でのきめ細やかなサービスや、コンシェルジュによる観光案内などを期待する方にはおすすめしないとされています。無人運営というスタイルに抵抗がある方や、何かあった時にすぐにスタッフに相談したいという方には向かない可能性があるようです。

カップルや単身旅行者

1～2名での利用を考えている方にとっては、客室が広すぎてコストパフォーマンスが悪いと感じられる可能性があるため、おすすめできない場合もあると言われています。少人数向けの一般的なホテルを選んだ方が、より適切な料金で宿泊できるかもしれません。

静寂を最優先する方

繁華街に近い立地の施設では、夜間の騒音が気になる可能性があるため、静寂を最優先する方にはおすすめしない場合もあると考えられます。

Q&A：よくある疑問にお答えします

Q1： illi Staysの読み方は？

A： 「イリーステイズ」と読むようです。ブランド名の「illi」は、自宅のような安らぎとホテルのようなホスピタリティをかけ合わせた、シンプルでハイブリッドな宿泊施設という意味が込められていると言われています。

Q2： チェックイン・チェックアウトの時間は？

A： チェックインは16時から、チェックアウトは10時が一般的とされています。無人チェックインシステムのため、16時以降であれば24時間いつでもチェックイン可能なようです。レイトチェックアウトは有料で、料金は3,000円/時間という設定があると言われています。

Q3： 何人まで泊まれる？

A： 施設や客室タイプによって異なりますが、最大6名から8名まで宿泊可能とされています。多くの客室が最大6名での宿泊を想定した設計になっているようです。

Q4： 料理はできる？

A： はい、全室にIH付きシステムキッチンが完備されており、自炊が可能と言われています。電子レンジ、冷蔵庫、電気ケトル、調理器具、食器類などが揃っているとされています。

Q5： 洗濯はできる？

A： はい、全室にドラム式洗濯乾燥機が備え付けられており、洗剤も用意されていると言われています。長期滞在でも清潔に過ごせる環境が整っているようです。

Q6： 駐車場はある？

A： 施設内に駐車場は完備されていないようです。お車でお越しの際は、お近くのコインパーキングをご利用いただく必要があるとされています。

Q7： 喫煙はできる？

A： 館内はバルコニーも含め完全禁煙となっているようです。

Q8： ペットは同伴できる？

A： 明確な記載は確認できませんでしたが、一般的なホテルと同様、ペット同伴不可の可能性が高いと考えられます。詳細は予約時に確認することをおすすめします。

トラベルライター”TAKA”の考察

ここからは、ネット上の情報を総合的に分析した上での、私なりの考察をお伝えしたいと思います。

illi Staysというホテルブランドは、日本の宿泊業界において、極めてユニークなポジショニングを確立しつつあると感じています。その最大の特徴は、一見相反する要素を高い次元で融合させようとしている点にあると言えるでしょう。

無人運営でありながら高品質なサービス、ホテルのホスピタリティと自宅の快適さの両立、プライバシーと共同体験の共存——これらの要素を一つの施設内で実現しようという試みは、従来のホテル業界の常識を覆すものと言えます。

特に注目すべきは、インバウンド需要を的確に捉えたビジネスモデルの構築です。年間稼働率97％超、ADR5万円超という実績は、グループでの長期滞在という需要が確実に存在し、それに対して適切なソリューションを提供できていることの証左と言えるでしょう。渋谷エリアで約9割が外国人観光客という数字も、インバウンド市場での強固なポジションを示しているように思います。

一方で、口コミの内容を詳しく見ていくと、サービスレベルにはまだムラがあるように感じられます。特に、表示されている収容人数と実際の快適性との間に乖離があるという指摘は、施設側が真摯に受け止めるべき課題でしょう。無人運営というスタイルを採用する以上、事前の情報提供や期待値管理の精度が、顧客満足度を左右する重要な要素になると考えられます。

また、キャンセルポリシーの厳しさについても、予約時の柔軟性を求める旅行者にとっては大きなハードルとなり得ます。これは無人運営で固定費を抑えているビジネスモデルゆえの必然とも言えますが、旅行計画の不確実性が高い現代において、顧客体験の向上という観点からは改善の余地があるかもしれません。

興味深いのは、2025年度に100室、2026年度には計200室の開業を目標に掲げ、大阪や京都への展開も計画しているという積極的な拡大戦略です。これは、ブランドとして明確な成長ビジョンを持っていることの表れと言えるでしょう。

特に、大阪・心斎橋への初出店は、東京で培ったノウハウを関西圏でどのように展開するかという試金石になると思われます。関西は東京とは異なる独自の文化や観光特性を持つ地域ですから、単純な横展開ではなく、地域特性に合わせたカスタマイズが求められるでしょう。

また、illi Staysのビジネスモデルは、日本が抱える不動産課題の解決にも貢献しようとしている点で、社会的意義も大きいと感じます。時代や社会のニーズと合わず、稼働率や収益率が低下している不動産をホテルに再生させることで、遊休不動産の有効活用と観光産業の発展という二つの目標を同時に追求している姿勢は評価に値するでしょう。

創業者の黒木郁己氏の経歴も興味深く、音楽活動からの転身、営業代行業を経てのホテル事業立ち上げという非伝統的なキャリアパスが、既存のホテル業界にはない発想や柔軟性の源泉になっているように思います。「消去法でも経営者になれる」という率直な自己分析は、起業に対する敷居を下げ、多様な人材が新しいビジネスに挑戦する勇気を与えるメッセージとも言えるでしょう。

今後の展望として、illi Staysが持続的な成長を遂げるためには、いくつかの課題に取り組む必要があると考えます。

第一に、サービス品質の標準化です。無人運営というスタイルを維持しながら、どの施設でも一定水準以上の顧客体験を提供するためには、清掃品質の管理、設備の維持管理、リモートサポートの対応品質など、バックエンドのオペレーション体制をさらに強化する必要があるでしょう。「清掃のクオリティ、迅速なサポートを常にアップデートし続けている」という姿勢は評価できますが、施設数が増えるほど、この品質管理は難易度が上がるはずです。

第二に、多様なニーズへの対応です。現在のilli Staysは4名以上のグループ滞在に特化していますが、今後は少人数利用者向けの客室タイプの開発や、ビジネス利用者向けの機能強化など、ターゲット層の拡大を検討する価値があると思います。これにより、稼働率のさらなる向上と、より幅広い顧客層の獲得が期待できるでしょう。

第三に、テクノロジーの活用強化です。無人運営を支える基盤として、チェックインシステムのUI/UX改善、AI活用によるサポート業務の効率化、IoT機器を活用した客室管理の高度化など、テクノロジー投資の継続的な実施が重要になると考えられます。特に、チェックイン操作が難しいという指摘に対しては、より直感的で分かりやすいインターフェースの開発が求められるでしょう。

第四に、地域との共生です。観光産業の発展に貢献するという理念を実現するためには、単に宿泊施設を増やすだけでなく、地域の飲食店や観光スポットとの連携、地域文化の発信、地域雇用への貢献など、エリア全体のエコシステムに価値を提供する取り組みが重要になると思います。各施設が立地する街の魅力を最大限に伝える「ローカルガイド」の充実なども、その一環として評価できる取り組みでしょう。

最後に、ブランドストーリーの確立と発信です。「Where Home Meets Hotel」というコンセプトは魅力的ですが、それを体験した顧客が自然とブランドのファンになり、口コミで広がっていくような、感情的なつながりを生み出すストーリーテリングが今後さらに重要になると考えます。創業者の原体験や、各施設に込められた想い、実際の宿泊者の体験談など、人間味あふれるストーリーを積極的に発信していくことで、単なる宿泊施設を超えた、愛されるブランドへと成長していく可能性があるでしょう。

illi Staysというホテルブランドは、日本の宿泊業界に新しい風を吹き込む、挑戦的で革新的な試みだと感じています。従来のホテルと民泊の良いところを取り入れ、グループ滞在という明確なニーズに応える——このシンプルかつ明快なバリュープロポジションが、高い稼働率と顧客満足度を生み出しているのでしょう。

課題はまだ残されているものの、顧客からのフィードバックを真摯に受け止め、サービスを改善し続ける姿勢があれば、今後さらに多くの旅行者に支持されるブランドへと成長していくと期待しています。特に、インバウンド需要が今後も拡大し続ける中で、グループでの長期滞在という宿泊スタイルのニーズはますます高まっていくはずです。

旅行者の皆さんにとって、illi Staysは「自宅のような快適さ」と「ホテルのような特別感」を同時に味わえる、新しいタイプの宿泊体験を提供してくれる選択肢の一つと言えるでしょう。グループ旅行や長期滞在を計画している方は、一度検討してみる価値があると思います。ただし、予約前にはキャンセルポリシーや収容人数の詳細をよく確認し、自分たちのニーズに合っているかを慎重に判断することをおすすめします。

最後に、illi Staysのような革新的なホテルブランドが日本国内でどのように成長し、宿泊業界全体にどのような影響を与えていくのか、トラベルライターとして今後も注目していきたいと思います。旅の選択肢が広がり、より多様な宿泊体験が楽しめるようになることは、旅行者にとって素晴らしいことですから。

皆さんも、次の旅行の際には、illi Staysという新しいスタイルのホテルを選択肢の一つとして、検討してみてはいかがでしょうか。きっと、従来のホテルとは一味違った、特別な思い出が作れるはずです。