株式会社アクティバリューズが提供する 宿泊・観光特化の会員システム 「talkappi MEMBER(トーカッピ メンバー)」とは? メリットやデメリットなどHOTTELの記者がわかりやすく解説
旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター”TAKA”です。株式会社アクティバリューズが提供する宿泊・観光特化の会員システム「talkappi MEMBER(トーカッピ メンバー)」について徹底的にリサーチしました。2025年2月に正式リリースされたばかりの新サービスですが、すでにロイヤルパインズホテル浦和やホワイト・ベアーホテルズなど複数の宿泊施設で導入が進んでいるようです。ホテルや旅館の経営者の皆さま、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)に興味を持つ観光業界関係者の方々に向けて、このサービスの全貌を明らかにしていきましょう。
結論:talkappi MEMBERは「低コスト・短期間導入」と「宿泊業特化」が最大の強み
まず結論からお伝えしますと、talkappi MEMBERは宿泊施設・観光事業者が抱える「自社会員の育成」「直接予約の強化」という重要課題を解決するために設計されたSaaS型の会員プログラムシステムと言われています。
従来、宿泊施設が会員システムを導入しようとすると、専用アプリの開発に莫大なコストがかかったり、汎用CRMがホテル専用システム(PMS)と連携できなかったりする問題がありました。talkappi MEMBERは、こうした業界特有の課題を解消し、アプリ開発やシステム構築が不要で、短期間・低コストで導入できる点が最大の特徴のようです。
さらに、talkappiプラットフォーム全体(チャットボット、旅ナカアプリVERY、メール配信ツールなど)との統合により、予約から滞在中、チェックアウト後まで、シームレスなゲスト体験を提供できる点も見逃せません。
talkappi MEMBERとは何か?サービスの全体像を理解する
運営会社「株式会社アクティバリューズ」について
talkappi MEMBERを提供しているのは、東京都渋谷区に本社を置く株式会社アクティバリューズです。2016年6月の設立以来、「テクノロジーで旅の感動と観光の未来を創る」というミッションのもと、観光・宿泊業界向けのソリューションを提供し続けています。
資本金は4億9,195万円(資本準備金を含む)と、スタートアップとしては安定した財務基盤を持っているようです。代表取締役社長は陳適氏で、「省人化DX」「予約・販売」「顧客データのマーケティング活用」を軸に事業を展開しています。
同社の主力プロダクト「talkappi」は、現在日本国内の1,800以上の宿泊施設および自治体・観光協会・DMOに導入されており、利用継続率は98%以上という驚異的な数字を誇っています。北海道から沖縄まで、全国各地の有名ホテル・旅館が採用している点からも、その信頼性の高さがうかがえます。
talkappiプラットフォームの全サービス一覧
talkappi MEMBERは、talkappiプラットフォームの一部として提供されています。プラットフォーム全体で提供されているサービスは以下の通りです。
CHATBOT(チャットボット):多言語AIチャットボットで、自動応答率は業界最高水準の96%以上を実現。日本語、英語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語を標準対応し、最大109言語に対応可能とされています。
FAQ:チャットボット連動のFAQシステムで、「よくある質問ページ」を自動生成します。
PAGE:多言語Webページ作成ツール。
INQUIRY:在庫管理と決済可能な多機能予約・問い合わせフォーム。月額1万円から利用できるようです。
PAY:観光特化の決済サービス。
BOOKING:手数料0円の直販チャンネル。
MEMBER:今回の主役である宿泊・観光特化の会員システム。
SURVEY:アンケートツールで、クーポン機能も搭載。
NEWSLETTER:メール配信ツールで、月額5,000円から利用可能。
COUPON:電子クーポン発行ツール。
ENGAGE:宿泊施設向けのCRMシステム。
これらのサービスが統合的に連携することで、宿泊施設は「旅マエ」(予約前)、「旅ナカ」(滞在中)、「旅アト」(帰国・帰宅後)の全てのフェーズで顧客との関係を構築できるようになっています。
talkappi MEMBERの開発背景
観光・宿泊業界では、新規顧客やリピーターの獲得が重要な課題とされています。しかし、多くの施設では効果的な会員プログラムを運用できていないのが現状のようです。
その要因として、アクティバリューズ社は以下の課題を挙げています。
- 物理カード型会員証の運用負荷:発行・確認・照合・更新に人的リソースを要し、現場の作業負荷が大きい
- アプリ開発コストと低い費用対効果:個別開発に高いコストがかかる一方、ダウンロード数が伸びず費用対効果が低い
- 汎用CRMの連携困難:世の中の汎用的なCRMや会員システムは宿泊施設向けに設計されておらず、PMSやサイトコントローラーなどのホテル専用システムとの連携が難しい
- 継続運用のハードル:機能追加やカスタマイズに都度コストがかかり、導入・継続運用のハードルが高い
talkappi MEMBERは、これらの課題を解消し、宿泊業に最適化された会員制度運用を実現するために設計されたシステムと言われています。
talkappi MEMBERの主要機能を詳しく解説
1. SaaS型で低コスト・短期間導入
talkappi MEMBERの最大の特徴は、SaaS(Software as a Service)型で提供される点です。これにより、以下のメリットが得られるようです。
- 初期投資を抑制:専用アプリの開発や複雑なシステム構築が不要
- 月額費用も低コスト:利用制限のない定額料金プランが採用されている模様
- 短期間で導入可能:talkappiをすでに導入している施設であれば、既存の管理画面で会員管理が可能
- メンテナンス・アップデートの手間不要:SaaS型のため、運営会社側でシステムの維持・更新を行う
実際に、ホワイト・ベアーホテルズでは2025年6月の相談からわずか約5ヶ月という短期間で複雑な会員制度を実現できたと報告されています。
2. 宿泊実績に応じたステージ制会員プログラム
talkappi MEMBERでは、宿泊実績に応じた会員ランク付けに対応しています。これは「ロイヤルティプログラム」とも呼ばれ、航空会社のマイレージプログラムやMarriott Bonvoyなどの大手ホテルチェーンで採用されている手法です。
具体的な機能としては:
- ランクに応じた会員証画面の表示:会員証のカラーがランクによって異なり、視覚的にステータスを表現
- 次のランクまでの残泊数を可視化:会員マイページで「あと何泊でランクアップ」が確認できる
- ランクアップ時の自動更新:会員証のカラーとステータスが自動的に更新される
このような仕組みにより、会員が自身のステータスを理解しやすくなり、継続利用を自然に促進する効果が期待できるようです。
3. 会員ポイントの効果的運用
ポイントプログラムは会員制度の核となる機能ですが、talkappi MEMBERでは以下のような特徴があるようです。
- ポイント獲得タイミングごとの有効期限設定:自動で有効期限が設定される
- 会員マイページでの一覧表示:「保有ポイント」「有効期限」「獲得・利用履歴」が確認可能
- 特別ポイントの自動付与:新規会員登録や誕生日に期間限定ポイントを自動付与
宿泊施設にとっては、ポイントを「貯めたくなる」「使いたくなる」仕組みを構築することで、継続利用につながりやすいポイント施策が実現できると言われています。
4. PMS連携による自動化
talkappi MEMBERの大きな強みの一つが、PMS(Property Management System:宿泊施設管理システム)との連携です。
PMSとは、宿泊施設の予約管理、客室管理、フロント業務、売上管理などを一元的に行うシステムのことで、ホテルや旅館の基幹システムとして位置づけられています。talkappi MEMBERがPMSと連携することで、以下のような自動化が実現できるようです。
- 予約情報と連携した会員登録促進:事前オンラインチェックイン動線(案内メール等)の中で新規会員登録を自然に誘導
- チェックアウト後のポイント付与の完全自動化:手作業が不要となり、現場の業務負担を大幅に軽減
- 各種PMSとの連携によるポイント自動付与:予約システムやPOSとの連携により、ポイント利用をより簡単に
これにより、フロント業務の省力化と自社会員基盤の拡大を同時に実現できると期待されています。
5. 旅ナカアプリ「VERY」とのシームレス連携
talkappi MEMBERは、同社が提供する旅ナカアプリ「VERY(ベリー)」とシームレスに連携します。
VERYは、旅をより快適に楽しむための情報を多言語で提供するアプリで、以下のような機能を備えています。
- 館内案内・周辺観光情報の多言語表示
- 館内施設の混雑状況リアルタイム表示
- ランドリー利用状況の確認
- レストランの順番待ち受付
- ルームサービスの注文
- 付帯サービス・アクティビティの予約
- デジタルクーポンの取得と利用
- 内線電話(施設との無料通話)
- TVインフォメーション表示(VERY SMART TV)
- エクスプレスチェックアウト
VERYの最大の特徴は、アプリのダウンロードが不要という点です。ゲストは客室内や館内に設置されたQRコードをスマートフォンで読み取るだけで利用を開始できます。
talkappi MEMBERとVERYが連携することで、アプリ内に会員登録の導線を設置し、滞在中のゲストの目に触れる機会を増やすことができるようです。また、VERYの会員情報を活用した簡単な会員登録機能により、スムーズな登録が可能になると言われています。
6. AIを活用した顧客データ分析
talkappi MEMBERでは、AIを活用した顧客データ分析機能も提供されているようです。
- テキストマイニング:登録された会員情報に加え、予約情報や利用履歴をテキストマイニング
- ユーザー属性の自動判定:旅ナカの手配情報やリクエスト履歴などを基に自動判定
- パーソナライズされたサービス提供:分析結果に基づき、より効果的なマーケティング施策の実施が可能
talkappiプラットフォーム全体では、1.3億件を超える対話データをテキストマイニングし、非エンジニアでも直感的に分析できるBI機能を備えているとされています。
料金体系について|具体的な費用はどのくらい?
talkappi MEMBERの具体的な料金については、公式サイトでは詳細が公開されていないようです。ただし、talkappiプラットフォーム全体の料金体系から、ある程度の目安を推測することができます。
talkappiの料金体系(参考)
talkappi CHATBOTの料金体系を見ると、施設の規模(部屋数)や業態によって月額費用が異なるようです。
シティホテルの場合:
- 〜100部屋:30,000円/月
- 〜200部屋:40,000円/月
- 〜300部屋:50,000円/月
- 301部屋〜:応相談
ビジネスホテルの場合:
- 〜100部屋:20,000円/月
- 〜200部屋:30,000円/月
- 〜300部屋:40,000円/月
- 301部屋〜:応相談
リゾートホテル・旅館:応相談
また、以下の特徴があるようです。
- 初期費用不要:導入時の初期費用がかからない
- 最低利用期間の設定なし:縛りがない
- 定額制:利用回数やユーザー数の増加による追加料金なし
- 複数施設を運営する法人には割引適用
talkappi MEMBERについては、公式の資料請求やお問い合わせで詳細な見積もりを取得することをおすすめします。
他サービスの料金(参考)
talkappiの他サービスの料金は以下の通りです。
- talkappi INQUIRY:月額1万円〜(初期費用なし)
- talkappi NEWSLETTER:月額5,000円(初期費用不要、月間配信数3万件まで)
- talkappi ORDER:月額10,000円〜(初期費用0円)
これらから推測すると、talkappi MEMBERも初期費用なし・月額数万円程度の価格帯ではないかと考えられますが、詳細は要問い合わせです。
導入事例|実際に使っている施設はどんな評価をしているのか
事例1:ロイヤルパインズホテル浦和
talkappi MEMBER初の導入施設として注目されているのが、埼玉県さいたま市のロイヤルパインズホテル浦和です。
施設概要:
- 所在地:埼玉県さいたま市浦和区
- 開業:1999年
- 客室数:196室
- レストラン&バー:8店舗
- その他施設:個室サウナ、宴会場13室、チャペル、神殿など
導入の背景: 同ホテルでは2018年からtalkappiの各種サービス(CHATBOT、FAQ、INQUIRY、VERY)を導入し、業務効率化に取り組んできました。2025年3月に既存の会員カードシステムのサービス終了を控え、新たな会員システムの導入を検討した結果、talkappi MEMBERの採用に至ったとのことです。
導入による効果:
- 業務の効率化:従来の会員カードを廃止し、デジタル管理へ移行。PCへの情報入力作業などの業務負担を軽減
- 会員様の利便性向上:WEBアプリで保有ポイント数やポイント有効期限を確認可能に
- マーケティング施策の強化:イベント情報や新メニューの告知など、会員向けの情報配信が可能に
既存のtalkappi管理画面で会員管理が可能なため、新システムの学習コストが削減されたという点も評価されているようです。
事例2:ホワイト・ベアーホテルズ「WB Connect MEMBERS」
2025年11月20日より運用開始されたホワイト・ベアーホテルズの新会員制ポイントプログラム「WB Connect MEMBERS」では、talkappi MEMBERが採用されています。
ホワイト・ベアーホテルズについて:
- 本社:大阪市北区
- 運営施設:5施設(大阪のグランピング施設、志賀高原・渋温泉、玉名温泉の旅館など)
- グループ:ホワイト・ベアーファミリー
プログラムの特徴:
- 予約から滞在中、チェックアウト後まで、シームレスでパーソナライズされたデジタル体験を提供
- 宿泊実績に応じたステージ制を導入
- 公式サイト(Web・電話)での直接予約への感謝を還元
導入担当者のコメント: ホワイト・ベアーホテルズ マーケティング&セールス部長の岡上岳彦氏は以下のようにコメントしています。
「WB Connect MEMBERS」は、お客様をファン化し、リピートしていただくという課題を解決するための重要な施策です。これまでの会員制度では、自社公式サイトからの予約促進が主で、滞在中の体験をより豊かにするアップセルにつながるポイント活用などのDX化が不十分だと感じていました。
特に、PMS連携による会員登録強化は、自社会員基盤の拡大と直接予約比率の向上につながると期待しています。この複雑な会員制度を、2025年6月の相談からわずか約5ヶ月という短期間で実現できたのは、アクティバリューズ様の迅速かつ柔軟なご対応力と高いシステム開発力のおかげです。
事例3:JR西日本ホテルズ(talkappiプラットフォーム導入事例)
talkappi MEMBERではありませんが、talkappiプラットフォームを活用した成功事例として、JR西日本ホテルズの導入事例は参考になります。
JR西日本ホテルズでは2022年5月にtalkappiを導入し、以下のような活用を行っています。
- チャットボット:公式サイトのどのページで立ち上げるかによってメニュー表示を変更(例:ウェディングページではブライダルフェアを案内)
- SURVEY(アンケート):回答結果をグループ各ホテルの強み/弱み分析に活用、クーポン機能でリピーター獲得
- INQUIRY:応募キャンペーンの実施に活用し、応募数増加に貢献
- VERY:多言語案内の強化と各種案内書面のペーパーレス化を実現
- LINE連携:LINE公式アカウントのお友だち数が増加し、プロモーションに活用
その他の導入施設
talkappiプラットフォーム全体では、以下のような施設・団体に導入されているようです。
- JR九州ホテルズアンドリゾーツ(12施設)
- サンシャインシティ(池袋の大型複合施設)
- ホテルリバージュアケボノ(福井)
- JRホテルクレメント徳島
- 下呂温泉 ホテルくさかべアルメリア
- おごと温泉湯元舘
- 二子玉川エクセルホテル東急
- 岐阜グランドホテル
- クラブメッド
これらの施設の多くがtalkappi MEMBERへの移行・導入を検討している可能性があります。
メリット|talkappi MEMBERの良い点を詳しく解説
良い点1:低コストで導入・運用が可能
talkappi MEMBERの最大のメリットは、アプリ開発や複雑なシステム構築が不要で、短期間・低コストで導入できる点です。
独自アプリを開発する場合、一般的に数百万円から数千万円のコストがかかると言われています。また、開発後もアップデートや保守に継続的なコストが発生します。SaaS型のtalkappi MEMBERであれば、こうした負担を大幅に軽減できると考えられます。
おすすめポイント2:宿泊業界に特化した設計
汎用CRMや会員システムは、宿泊施設向けに設計されていないため、PMS(宿泊施設管理システム)やサイトコントローラーとの連携が難しいという課題がありました。
talkappi MEMBERは宿泊業に最適化されており、PMSとの連携によるポイント自動付与や、チェックイン動線での会員登録促進など、宿泊施設特有のニーズに対応しています。
利点3:talkappiプラットフォームとの統合
talkappi MEMBERを導入することで、同社が提供する他のサービス(CHATBOT、VERY、SURVEY、NEWSLETTERなど)との統合的な運用が可能になります。
これにより、以下のような「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」を通じた顧客体験の一元管理が実現できるようです。
- 旅マエ:チャットボットでの問い合わせ対応、予約促進
- 旅ナカ:VERYアプリでの館内案内、会員登録促進、サービス予約
- 旅アト:NEWSLETTERでのフォローアップ、リピート促進
良い点4:スタッフの業務負担軽減
従来の物理カード型会員証では、発行・確認・照合・更新に人的リソースを要していました。talkappi MEMBERでは以下のような業務効率化が期待できます。
- 会員様がWEBアプリで保有ポイント数や有効期限を確認できるため、施設への問い合わせが減少
- ポイント処理は「omotenashi」アプリで簡単に実現
- チェックアウト後のポイント付与も完全自動化
人手不足が深刻化する宿泊業界において、このような省人化効果は大きなメリットと言えるでしょう。
利点5:データ活用によるマーケティング強化
talkappi MEMBERを通じて蓄積された会員データは、マーケティング施策に活用できます。具体的には:
- 利用履歴を基にしたゲストのニーズ分析
- セグメント別プロモーションの実施
- イベント情報や新メニューの告知など、会員向け情報配信
これらの機能により、OTA(オンライン旅行会社)依存からの脱却と直接予約率の向上が期待できると言われています。
おすすめポイント6:柔軟なカスタマイズ対応
会員プログラムの設計や会員ランクの設定、ポイント・特典の付与などは施設ごとのニーズに合わせてカスタマイズ可能とされています。また、機能の拡張を迅速に行い、施設の要望をいち早く反映させる姿勢も評価されているようです。
デメリット|talkappi MEMBERの注意点・欠点
一方で、talkappi MEMBERにはいくつかの注意点やデメリットも考えられます。公平な情報提供のため、以下にまとめました。
悪い点1:観光・宿泊分野以外には不向き
talkappiプラットフォーム全体に言えることですが、宿泊施設や観光事業者向けに設計されたサービスであるため、他の業種や用途には適さない可能性があります。
一般企業の社内向けシステムなどとして導入する場合、機能が過剰となり十分に活用できない可能性があるとの指摘もあるようです。
欠点2:包括機能ゆえの取捨選択困難
talkappiは問い合わせ対応から予約、決済まで幅広い機能をオールインワンで備えていますが、特定の機能のみを選んで導入することは想定されていないとの指摘があります。
不要な機能がある場合でも基本的にパッケージ全体での提供となるため、小規模施設で一部の機能しか使用しない場合も、全体のシステムを維持する必要があるかもしれません。
おすすめしない点3:導入・運用に社内調整が必要
talkappi MEMBERは多機能なシステムであるため、現場への展開にはフロントスタッフからIT担当まで社内での十分な調整と周知が求められるとの見方があります。
チャットボット対応や予約フローの変更など、従来業務プロセスの見直しが必要になる場合があり、社内で使いこなすまでに一定の学習期間が発生する可能性も考慮すべきでしょう。
デメリット4:新規サービスゆえの実績の少なさ
talkappi MEMBERは2025年2月に正式リリースされたばかりの新しいサービスです。そのため、長期運用による実績やユーザーからの評価がまだ蓄積されていないという面があります。
ただし、親プラットフォームであるtalkappi全体では1,800以上の施設での導入実績があり、利用継続率98%以上という数字は、サービス品質の高さを示唆しているとも言えます。
悪い点5:具体的な料金が不明確
公式サイトでtalkappi MEMBERの料金体系が明確に公開されていないため、予算計画を立てにくいという点は欠点と言えるかもしれません。
導入を検討される場合は、まず資料請求やお問い合わせで見積もりを取得されることをおすすめします。
こんな施設におすすめ|talkappi MEMBERが向いている方
これまでの分析を踏まえ、talkappi MEMBERをおすすめしたい施設・事業者の特徴をまとめました。
おすすめしたい方1:既にtalkappiを導入している施設
既存のtalkappi管理画面で会員管理が可能なため、新システムの学習コストを削減できます。また、プラットフォーム全体での統合的な運用により、相乗効果が期待できます。
おすすめしたい方2:会員カードのデジタル化を検討している施設
物理カードからWEBアプリへの移行を考えている施設にとって、talkappi MEMBERは有力な選択肢となるでしょう。ロイヤルパインズホテル浦和の事例のように、既存会員データの移行サポートも提供されているようです。
おすすめしたい方3:OTA依存からの脱却を目指す施設
自社会員の育成と直接予約の強化を通じて、OTA手数料の削減と収益性の向上を目指す施設にとって、talkappi MEMBERは効果的なツールとなり得ます。
おすすめしたい方4:複数施設を運営するホテルグループ
ホワイト・ベアーホテルズの事例のように、グループ施設向けの会員プログラムへの最適化も可能とされています。複数施設を運営する法人には割引が適用される可能性もあります。
おすすめしたい方5:インバウンド対応を強化したい施設
talkappiプラットフォームの多言語対応(標準5言語、最大109言語)は、訪日外国人観光客への対応を強化したい施設にとって大きなメリットです。
こんな施設にはおすすめしない|talkappi MEMBERが向いていない方
一方で、以下のような施設にはtalkappi MEMBERはおすすめしにくいかもしれません。
おすすめできない方1:宿泊業以外の事業者
前述の通り、宿泊施設・観光事業者向けに特化したサービスであるため、他業種での活用は難しいと考えられます。
おすすめできない方2:特定機能だけを安価に利用したい施設
必要な機能だけを切り出して安価に利用するという柔軟な運用は難しいとの指摘があり、ごく一部の機能のみを利用したい小規模施設には負担となる可能性があります。
おすすめできない方3:社内のDX推進体制が整っていない施設
導入・運用には社内調整や学習期間が必要となるため、ITリテラシーや変革への意欲が不足している施設では、せっかくのシステムを活かしきれない可能性があります。
Q&A|よくある質問と回答
Q1:talkappi MEMBERを導入するのにどのくらいの期間がかかりますか?
A1:ホワイト・ベアーホテルズの事例では、相談から約5ヶ月で複雑な会員制度を実現したと報告されています。既にtalkappiを導入している施設であれば、さらに短期間での導入が可能と考えられます。具体的な期間は施設の状況や要件によって異なるため、お問い合わせでご確認ください。
Q2:既存の会員データを移行することはできますか?
A2:はい、既存会員データの移行については運営会社がサポートしてくれるようです。ロイヤルパインズホテル浦和では、従来の会員カードからWEBアプリへの切り替えを実現しています。
Q3:talkappi MEMBERを単独で導入することは可能ですか?
A3:talkappi MEMBERはtalkappiプラットフォームの一部として提供されるため、他のサービス(CHATBOTなど)との併用が前提となっている可能性があります。詳細は運営会社にお問い合わせください。
Q4:どのようなPMSと連携できますか?
A4:具体的な対応PMS一覧は公開されていないようですが、主要PMSとの連携を推進中とのことです。導入を検討される際は、ご利用のPMSとの連携可否を確認されることをおすすめします。
Q5:会員ランクの設定は自由にカスタマイズできますか?
A5:はい、会員プログラムの設計や会員ランクの設定は、施設ごとのニーズに合わせてカスタマイズ可能とされています。
Q6:外国人ゲストにも対応していますか?
A6:talkappiプラットフォームは標準で日本語含む5言語(英語、中国語繁体字・簡体字、韓国語)に対応し、最大109言語への対応が可能です。VERYアプリも多言語で館内案内を提供できるため、インバウンド対応にも適しています。
Q7:導入後のサポート体制はどうなっていますか?
A7:アクティバリューズ社では「カスタマーサクセスチーム」が設置されており、導入施設へのサポートを行っているようです。利用継続率98%以上という数字は、充実したサポート体制を反映している可能性があります。
Q8:料金はどのくらいかかりますか?
A8:talkappi MEMBERの具体的な料金は公開されていませんが、talkappiプラットフォーム全体としては初期費用不要、定額制の料金体系が採用されているようです。詳細な見積もりは資料請求やお問い合わせでご確認ください。
コラム:旅行業界の「隠語・スラング」解説
トラベルライター”TAKA”として、ここで旅行業界で使われる用語や隠語について解説させていただきます。本記事でも何度か登場した言葉がありますので、知っておくと役立つでしょう。
「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」
インバウンドマーケティングでよく使われる用語です。
- 旅マエ(たびまえ):旅行前の情報収集・計画期間。訪日旅行の1〜4か月前を指すことが多い
- 旅ナカ(たびなか):旅行中、日本滞在期間。観光地を訪問し、食事やショッピングを楽しむ段階
- 旅アト(たびあと):旅行後、帰国して間もない期間。SNSへの投稿や口コミ投稿など、体験を共有する時期
最近の調査では、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」の境界が曖昧になってきているとの指摘もあります。旅行中でも柔軟に予定を変更する行動が増えており、ホテルが重要なコンタクトポイントになっているようです。
「OTA」
Online Travel Agency(オンライン旅行会社)の略称です。楽天トラベル、じゃらんnet、Booking.com、Expediaなどがこれに該当します。
宿泊施設はOTAに掲載することで集客力を得られる一方、予約成立時に手数料(一般的に10〜20%程度)を支払う必要があります。このため、多くの施設が「OTA依存からの脱却」「直接予約率の向上」を経営課題として掲げています。
「ダイレクト予約」「直販」
OTAを介さず、公式サイトや電話などから直接予約を受けることを指します。OTA手数料がかからないため利益率が高く、顧客データも自社で蓄積できるというメリットがあります。
「ビルボード効果」
OTAにホテル情報を掲載すると、公式サイトからの直接予約が増える現象のことです。顧客がOTAでホテルを発見した後、公式サイトで直接予約するという行動パターンから生じます。ある実験では、直接予約数が9〜26%増加したとの報告もあります。
「PMS」
Property Management System(宿泊施設管理システム)の略称です。予約管理、客室管理、フロント業務、売上管理などを一元的に行う、ホテル・旅館の基幹システムです。
「CRM」
Customer Relationship Management(顧客関係管理)の略称です。顧客データを収集・分析し、顧客との関係を構築・維持するための手法やシステムを指します。
「LTV」
Life Time Value(顧客生涯価値)の略称です。一人の顧客が生涯にわたってもたらす利益の総額を意味し、リピーター獲得やロイヤルティ向上の文脈でよく使われます。
「SaaS」
Software as a Serviceの略称で、クラウド上で提供されるソフトウェアサービスを指します。talkappi MEMBERもSaaS型で提供されており、自社でシステムを構築・保守する必要がないというメリットがあります。
トラベルライター”TAKA”の独自考察|talkappi MEMBERの真価と今後の展望
ここまでtalkappi MEMBERについて詳しく見てきましたが、最後に私”TAKA”の独自の視点から考察を加えさせていただきます。
宿泊業界が直面する「会員化」の壁
日本の宿泊業界、特に中小規模のホテルや旅館は、長らく「会員化」に苦戦してきました。大手ホテルチェーン(マリオット、ヒルトンなど)のロイヤルティプログラムは非常に洗練されていますが、それを独立系ホテルや中小旅館が真似しようとしても、システム開発費用や運用コストがネックとなっていました。
また、日本独自の事情として「旅館文化」があります。「一期一会」の精神を大切にする旅館では、リピーター獲得よりも一回一回の接客を重視する傾向があり、会員システムへの関心が低いところも少なくありませんでした。
しかし、コロナ禍を経て状況は大きく変わりました。インバウンド需要の回復、人手不足の深刻化、OTA手数料の負担増—こうした環境変化の中で、「自社会員の育成」と「直接予約の強化」は、もはや避けて通れない経営課題となっています。
talkappi MEMBERが解決しようとしていること
talkappi MEMBERは、まさにこの課題に対する解答として登場したサービスだと私は見ています。
従来の選択肢は大きく2つでした:
- 大手ベンダーの高額なCRMシステムを導入する:数百万円〜数千万円のコスト、PMS連携の困難さ
- 自社でアプリを開発する:開発費用、ダウンロード数が伸びない問題、保守コスト
talkappi MEMBERは第3の選択肢を提示しています。SaaS型で初期投資を抑え、宿泊業に特化した設計でPMS連携も視野に入れ、既存のtalkappiプラットフォームとの統合で相乗効果を狙う—これは非常に合理的なアプローチだと思います。
「All in One Hospitality Cloud」という構想
アクティバリューズ社は「All in One Hospitality Cloud」という構想を掲げています。問い合わせ対応(CHATBOT)、情報案内(FAQ、PAGE、VERY)、予約・決済(INQUIRY、PAY、BOOKING)、会員管理(MEMBER)、マーケティング(NEWSLETTER、SURVEY、ENGAGE)—これらを一つのプラットフォームで統合的に提供するという発想です。
この構想が実現すれば、宿泊施設は複数のベンダーと契約する必要がなくなり、管理の手間が大幅に軽減されるでしょう。また、顧客データが一元管理されることで、より精度の高いマーケティングが可能になります。
競合との差別化ポイント
宿泊施設向けのDXツールは、tripla(トリプラ)をはじめ複数の企業が提供しています。talkappiの差別化ポイントは何でしょうか?
私の見立てでは、以下の3点が挙げられます。
- 導入施設数と継続率:1,800施設以上の導入実績、98%以上の利用継続率は信頼の証
- 多言語対応の充実:標準5言語、最大109言語対応はインバウンド対応に強み
- VERYアプリの存在:ダウンロード不要の旅ナカアプリは、会員登録への導線として非常に有効
特にVERYアプリは、従来のホテルアプリが抱えていた「ダウンロードしてもらえない」問題を解決する画期的なアプローチだと思います。QRコードをスキャンするだけで使えるため、ゲストの心理的ハードルが低く、そこから会員登録への流れも自然です。
今後の展望と期待
talkappi MEMBERは2025年2月にリリースされたばかりの新サービスです。今後の機能拡張として、以下が予告されています。
- ポイントの活用(宿泊・館内サービスでの利用)
- ステップメール
- MA(マーケティングオートメーション)機能
これらが実現すれば、より高度なリピーター育成施策が可能になるでしょう。
また、PMS連携の拡大も重要なポイントです。日本の宿泊施設では様々なPMSが使われており、連携可能なPMSが増えるほど、talkappi MEMBERの導入対象施設も広がります。
最後に
私が取材を重ねてきた感触では、talkappi MEMBERは「本気でDXに取り組みたいが、大手ベンダーのシステムは高すぎる」という中規模以上のホテル・旅館にとって、非常に有力な選択肢になると感じています。
一方で、「小規模旅館で一部機能だけを使いたい」「宿泊業以外で活用したい」というニーズには応えにくい面もあるでしょう。
重要なのは、自施設の課題と目標を明確にした上で、talkappi MEMBERがその解決策として適切かどうかを判断することです。そのためにも、まずは資料請求やお問い合わせで詳しい情報を入手し、可能であればデモや導入事例の詳細をヒアリングされることをおすすめします。
宿泊業界のDXは、もはや「やるかやらないか」ではなく「いつやるか」「どのツールを選ぶか」の段階に入っています。talkappi MEMBERが、皆さまの施設のDX推進と顧客満足度向上の一助となれば幸いです。
旅についての疑問や噂がありましたら、ぜひまたお声がけください。トラベルライター”TAKA”が、皆さまの旅の疑問を解決するお手伝いをいたします。










