株式会社SQUEEZEが提供するクラウド型宿泊管理システム「suitebook(スイートブック)」とは? メリットやデメリットなどHOTTELの記者がわかりやすく解説

旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター”TAKA”です。旅についての疑問や噂について真相をつきとめわかりやすく解説します。

今回は、宿泊業界でじわじわと導入が進んでいる「suitebook(スイートブック)」という宿泊管理システムについて、その実態を徹底的にリサーチしてまいりました。株式会社SQUEEZEが提供するこのクラウド型システムは、ホテルや旅館、民泊施設の運営を劇的に変える可能性を秘めたサービスのようです。業界関係者の間では評判になっているものの、一般の方にはまだ馴染みが薄いこのシステムについて、料金体系から導入事例、メリット・デメリットまで、トラベルライターとしての視点から詳しくご紹介していきます。

suitebook(スイートブック)とは何か?

suitebookは、株式会社SQUEEZEが開発・提供しているクラウド型宿泊管理システム(PMS:Property Management System)と呼ばれるサービスのようです。PMSという言葉は宿泊業界の専門用語で、予約管理や客室管理、会計処理など、ホテル運営に必要なあらゆる業務を一括して管理できる基幹システムのことを指します。

このシステムの最大の特徴は、クラウドベースで動作するという点にあると言われています。つまり、従来のように高価なサーバーを設置する必要がなく、インターネット環境さえあれば、パソコンやタブレット、スマートフォンからいつでもどこでもアクセスできるのだそうです。これにより、複数の施設を運営する事業者であっても、一つの管理画面から全ての施設を一元管理できるようになるとのことです。

開発元のSQUEEZEは2014年9月に設立された企業で、北海道北広島市に本店を、東京都渋谷区にオフィスを構えているようです。興味深いことに、この会社は単にシステムを開発・販売するだけでなく、「Minn(ミン)」や「Theatel(シアテル)」といった自社ブランドのホテルを全国で50施設以上運営しているのだそうです。つまり、実際にホテル運営の現場で培ったノウハウをシステム開発にフィードバックしているという、非常にユニークな企業体質を持っていると言えるでしょう。

suitebookの料金体系について

宿泊施設の経営者にとって最も気になるのが、導入にかかる費用ではないでしょうか。調査したところ、suitebookの料金体系は以下のようになっているようです。

初期費用は1施設あたり30,000円程度からと言われています。ただし、設置するタブレットの台数や連携するシステムの数によって変動するとのことです。一般的なホテル管理システムの初期費用は数十万円から百万円を超えることも珍しくないと聞きますので、比較的リーズナブルな設定のようです。

月額費用については、5,000円程度から設定されているようですが、こちらも管理する物件数や客室数によって変動する従量課金制を採用しているとのことです。具体的には、10室前後の中規模施設であれば月額5,000円から10,000円程度、それ以上の規模になると段階的に料金が上がっていく仕組みのようです。

特筆すべきは、このシステムがIT導入補助金の対象になっているという点です。この補助金を活用すれば、クラウド利用料の最大2年分について、補助率1/2から最大4/5の補助を受けられる可能性があるとのことです。つまり、実質的な導入コストを大幅に抑えられる可能性があるわけです。これは中小規模の宿泊施設にとって、非常に魅力的な制度と言えるでしょう。

suitebookの使い方と主な機能

それでは、suitebookには具体的にどのような機能が搭載されているのでしょうか。調査した情報をもとに、主要な機能をご紹介していきます。

予約管理の一元化

suitebookの中核をなす機能が、複数のOTA(オンライン旅行代理店)からの予約を一元管理できるという点のようです。OTAとは、Booking.comやExpedia、楽天トラベル、じゃらんといったインターネット上の予約サイトのことを指す業界用語です。

従来、これらの予約サイトに掲載している施設は、それぞれのサイトで個別に在庫や料金を管理しなければならず、その作業には膨大な時間がかかっていたと言われています。しかし、suitebookでは「サイトコントローラー」と呼ばれる仲介システムと連携することで、一つの管理画面から全てのOTAの在庫・料金を更新できるようになっているとのことです。

さらに、各OTAから予約が入ると、自動的に他のサイトの在庫が調整されるため、ダブルブッキング(予約の重複)を防ぐことができるのだそうです。ダブルブッキングはホテル業界において最も避けたいトラブルの一つですから、この機能は非常に重要と言えるでしょう。

客室管理と稼働状況の把握

システム上で客室の稼働状況をリアルタイムで一覧表示できる機能も搭載されているようです。どの部屋がチェックイン済みで、どの部屋が清掃待ちなのか、あるいはどの部屋がチェックアウト済みなのかといった情報が、一目で分かるようになっているとのことです。

特に注目すべきは、料金カレンダーがExcelのようなテーブル表示になっており、複数日程をドラッグして一括編集できるという点です。これにより、繁忙期の料金変更作業が数分で完了するようになるのだそうです。従来のシステムでは一日ずつ手作業で料金を変更しなければならず、数十室のホテルで数週間分の料金を変更するだけで何時間もかかっていたと聞きますので、これは大幅な業務効率化につながる機能と言えるでしょう。

ゲストコミュニケーション機能

宿泊前後や滞在中のゲストとのコミュニケーションを、全てシステム上のメッセージ機能でやり取りできるようになっているとのことです。チェックイン方法の案内や、施設周辺の観光情報の提供、チェックアウト後のお礼メッセージなど、様々な場面で活用できるようです。

さらに興味深いのは、SQUEEZEがカンボジアのプノンペンに現地法人「SQUEEZE ASIA」を設立し、そこから24時間体制の多言語オンラインコンシェルジュサービスを提供しているという点です。日本語、英語、中国語はもちろん、要望に応じてタイ語やベトナム語にも対応できるとのことです。これにより、深夜のチェックインや海外からのゲストへの対応も、遠隔地から多言語でサポートできるようになっているのだそうです。

清掃管理との連携

客室清掃の管理機能も充実しているようです。チェックアウトした部屋の清掃指示が自動的に清掃スタッフのスマートフォンやタブレットに通知され、清掃が完了したらその場で完了報告ができる仕組みになっているとのことです。

清掃管理システム「ヤンクリ(Jtas)」との連携も可能で、清掃の進捗状況をリアルタイムで把握できるようになっているのだそうです。これにより、清掃が完了した部屋から順次次のゲストをアサインできるため、客室の回転率を高めることができると言われています。

会計・収益管理機能

suitebookには、予約・チェックイン・会計・売上管理を一元化する機能も搭載されているようです。宿泊料金はもちろん、館内のレストランや売店での売上、ミニバーの利用料金など、部屋代以外の売上(業界用語で「ミスク売上」と呼ばれます)も含めて一括管理できるとのことです。

特に2025年12月に発表された「suitebook POS」という新機能では、POSレジとの連携により、館内での全ての売上がリアルタイムでシステムに反映されるようになっているのだそうです。これにより、手作業による集計や締め処理が不要になり、会計ミスや報告遅延といった人的負荷を大幅に削減できると言われています。

レベニューマネジメント機能

近年、ホテル業界で注目されているのが「レベニューマネジメント(収益管理)」という概念です。これは、需要予測に基づいて客室料金を最適化し、収益を最大化する手法のことを指します。

suitebookでは、このレベニューマネジメント機能にも力を入れているようです。稼働率や客室単価(業界用語でADR:Average Daily Rateと呼ばれます)、客室あたりの収益(RevPAR)などの重要指標を自動で算出し、ダッシュボード形式で表示してくれるとのことです。

さらに、経理システムからデータを自動的に引き出す仕組みを採用しているため、手入力によるミスがなく、リアルなデータに基づいた分析ができるようになっているのだそうです。外部のレベニューマネジメントシステム「IDeaS G3 RMS」との連携も可能とのことです。

スマートロック・セルフチェックイン連携

suitebookの大きな特徴の一つが、様々なスマートロックやセルフチェックインシステムとAPI連携できるという点です。

例えば、「RemoteLOCK」という暗証番号型のスマートロックと連携すれば、予約情報に基づいて宿泊客ごとに異なる暗証番号が自動発行され、その番号は滞在期間中のみ有効になるとのことです。つまり、物理的な鍵の受け渡しが不要になり、完全キーレスでの運営が可能になるわけです。

さらに注目すべきは、2022年にJR東日本スタートアップと共同で実現した「Suicaスマートロック」との連携です。これにより、宿泊客が普段使っているSuicaやPASMOなどの交通系ICカードを客室の鍵として使えるようになったのだそうです。日本初の試みと言われています。

2025年10月には、さらに進化した「suitebook KIOSK」という自社開発のセルフチェックイン端末も発表されました。この端末では、モバイルSuicaや交通系ICカード、スマートフォン、スマートウォッチをルームキーとして利用でき、パスポートの読み取りにも対応しているとのことです。これにより、海外からのゲストも含めて、スムーズなセルフチェックインが実現できるようになっているのだそうです。

suitebookの導入事例

それでは、実際にsuitebookを導入した施設では、どのような成果が出ているのでしょうか。いくつかの導入事例をご紹介します。

株式会社ミナシア(ホテルウィングインターナショナル)の事例

最も注目すべき導入事例が、全国で約40施設のビジネスホテル「ホテルウィングインターナショナル」を展開する株式会社ミナシアのケースです。

同社は2025年、長年使用してきた外資系の大手PMSから、suitebookへの全面切り替えを決断したとのことです。注目すべきは、全37施設でのシステム切り替えを、わずか10ヶ月という短期間で完了させたという点です。通常、これだけの規模のシステム刷新には1年以上かかることも珍しくないと聞きますので、驚異的なスピードと言えるでしょう。

導入後に実施された社内アンケートでは、操作性や理解度など複数の項目で約90%以上のスタッフが「業務が改善された」と回答したとのことです。特に大きな成果として挙げられているのが、新人スタッフの学習期間の短縮です。従来のシステムでは習得までに1ヶ月程度かかっていたところ、suitebookでは大幅に短縮できたのだそうです。

また、全施設で統一のマニュアルとオペレーションを構築したことで、施設間の人員移動や交流がスムーズになったという副次的な効果も生まれたようです。あるスタッフが別の店舗に応援に行っても、同じシステムを使っているため即座に業務に入れるというわけです。

ミナシアの担当者によれば、suitebookを選んだ決め手は「機能の充実度」よりも、「SQUEEZEが単なるシステム提供者ではなく、経営課題を共に考え、解決策を提案してくれるパートナーである」という点だったとのことです。また、旧PMSの運用コストや外部システムとの連携にかかっていた莫大な費用と比較して、suitebookのトータルコストが非常に魅力的だったとも述べられています。

fav hospitality group(FAV LUX 札幌すすきの)の事例

霞ヶ関キャピタルグループのfav hospitality groupが運営する施設への導入も、大きな成果を上げているようです。

2025年11月時点で、同グループの6施設436室にsuitebookが導入されているとのことです。特に2025年7月に開業した「FAV LUX 札幌すすきの」では、最大6名まで宿泊可能なグループ向けの客室や、プライベートサウナ付きスイート、大浴場など多彩な設備を備えた84室の大型施設ですが、suitebookの会計機能やレポート機能、外部API連携により、経営管理の精度が飛躍的に向上したと言われています。

この導入プロジェクトでは、システムを入れるだけでなく、現場と二人三脚で業務フローを最適化していったことが成功の鍵だったようです。SQUEEZEは単にシステムを提供するだけでなく、「FAV LUX 札幌すすきの」の運営も担当しているため、現場のリアルな課題を捉えながら、最適なオペレーションを一緒に設計していくことができたのだそうです。

ホスピタリティオペレーションズ(スマイルホテル)の事例

全国69店舗のビジネスホテル「スマイルホテル」を展開する株式会社ホスピタリティオペレーションズも、suitebookの導入を進めているようです。

特に2023年9月に開業した「スマイルホテル東京新小岩」は232室という大規模施設ですが、200室以上の規模での初の導入事例として、suitebookが採択されたとのことです。この施設を含め、同社では8施設以上でsuitebookを導入しており、フロント業務の効率化、ペーパーレス化、DX化などの取組みが進められているようです。

導入によって、正確な予約情報の取り込みが実現し、作業コストの削減および運営効率化が実現したと報告されています。

その他の導入実績

調査によれば、suitebookは現在、全国で2,000〜2,300以上の施設に導入されているとのことです。その中には、北海道ボールパーク・Fビレッジ内のエスコンフィールドHOKKAIDOに隣接する「tower eleven hotel」や、世界遺産・熊野古道の1棟貸し宿「SEN.RETREAT」、大京穴吹不動産の特区民泊物件など、様々なタイプの宿泊施設が含まれているようです。

suitebookの良い点(メリット・利点)

ここまでの調査内容を踏まえて、suitebookの良い点をまとめてみましょう。

圧倒的な業務効率化

最大のメリットは、何と言っても業務効率化による時間とコストの削減でしょう。複数のOTAの予約を一元管理できることで、各サイトを個別に確認する手間が省け、ダブルブッキングのリスクも大幅に減少すると言われています。

特に、料金カレンダーのドラッグ編集機能により、繁忙期の料金変更が数分で完了するという点は、実務上非常に大きな利点と言えるでしょう。従来なら何時間もかかっていた作業が、わずか数分で終わるのですから、その分の時間を接客やサービス向上に充てることができるわけです。

省人化・無人運営への対応

人手不足が深刻化している宿泊業界において、省人化や無人運営を実現できるという点も大きな利点です。

モバイルチェックイン機能により、ゲストが自分のスマートフォンから事前にチェックイン手続きを完了できるため、フロントでの対面時間を大幅に短縮できるとのことです。さらに、スマートロックと連携すれば、鍵の受け渡しも不要になり、完全無人でのチェックインが可能になります。

深夜のチェックインや問い合わせ対応については、カンボジアからの24時間多言語オンラインコンシェルジュが対応してくれるため、小規模施設でも24時間対応が可能になると言われています。これは、限られた人員で運営している中小規模の宿泊施設にとって、非常に心強いサポートと言えるでしょう。

直感的な操作性と多言語対応

システムのUI(ユーザーインターフェース)がシンプルで直感的に操作できるという点も、高く評価されているようです。

ミナシアの事例でも触れましたが、新人スタッフでも短期間で習得できる操作性は、スタッフの教育コスト削減にも直結します。また、多言語表示が標準で備わっているため、外国人スタッフの採用や、海外からのゲスト対応もスムーズになるとのことです。

高い拡張性と柔軟な機能追加

suitebookの大きな強みの一つが、API連携による高い拡張性です。様々なOTA、サイトコントローラー、スマートロック、チェックインシステム、決済システムなど、幅広い外部サービスと連携できるため、施設の規模や運営スタイルに合わせた最適なシステム構成を組めるようです。

また、SQUEEZEは自社でホテル運営も行っているため、現場からのフィードバックを柔軟に開発に反映できる体制があるとのことです。つまり、システムが常に進化し続けており、新しい機能が段階的に追加されていくため、導入後も継続的に使いやすくなっていくと言われています。

コスト面での優位性

料金面でも、複数のメリットがあるようです。まず、初期費用が比較的リーズナブルで、30,000円程度から導入できる点は、中小規模の施設にとって導入のハードルを下げる要因となっているでしょう。

さらに、IT導入補助金の対象となっているため、最大2年分のクラウド利用料について補助を受けられる可能性があります。実質的な導入コストを大幅に抑えられるこの制度は、新規開業やシステム刷新を検討している施設にとって、非常に魅力的と言えるでしょう。

ミナシアの事例でも、旧PMSの運用コストや外部連携費用と比較して、suitebookのトータルコストが大幅に削減できたと報告されています。長期的な視点で見れば、大きなコストメリットがあると考えられます。

現場視点での開発という強み

他の多くのシステムベンダーと異なり、SQUEEZEは自社で累計1,000室以上の宿泊施設を運営してきた実績を持っているとのことです。つまり、システム開発者自身が実際にホテル運営の現場を熟知しているわけです。

「Minn」や「Theatel」といった自社ブランドのホテルで、新機能を実際に運用テストし、問題点を洗い出してから一般提供するという開発スタイルを取っているようです。このような運営とシステム開発の両輪体制は、他社にはない大きな強みと言えるでしょう。

現場で本当に必要な機能、本当に使いやすいインターフェースを追求できるため、「机上の空論」ではない、実践的なシステムになっていると評価されているようです。

おすすめしたい方

これらの利点を踏まえると、suitebookは以下のような方々に特におすすめできると考えられます。

  • 中小規模の宿泊施設を運営している方:10室から100室程度の規模で、コストを抑えつつ業務効率化を図りたい施設に最適と言われています。
  • 複数のOTAに掲載している方:予約の一元管理によって、作業時間を大幅に削減できるでしょう。
  • 省人化・無人運営を目指している方:スマートロック連携やオンラインコンシェルジュにより、最小限の人員での運営が可能になるようです。
  • 民泊とホテルの両方を運営している方:suitebookは民泊・ホテル両対応のハイブリッドPMSとして設計されているため、複数業態を統一システムで管理できます。
  • 海外からのゲストが多い施設:多言語対応やオンラインコンシェルジュにより、言語の壁を超えた対応が可能になると言われています。
  • 新規開業を予定している方:IT導入補助金を活用すれば、初期投資を抑えながら最新のシステムを導入できるでしょう。

suitebookの悪い点(デメリット・欠点)

一方で、suitebookにも課題や欠点がないわけではありません。公平な視点から、デメリットについても詳しく見ていきましょう。

機能の発展途上である点

ミナシアの導入事例でも率直に語られていますが、導入当初の段階では、他の成熟した大手PMSと比較して不足している機能があったとのことです。

長年市場に存在している大手外資系のPMSは、数十年の開発期間を経て機能が洗練されており、あらゆる業務に対応できる完成度の高さがあります。一方、suitebookは比較的新しいシステムであるため、導入時点では「あったらいいな」と思う機能が全て揃っているわけではないようです。

ただし、これはデメリットであると同時に、前述の「柔軟な機能追加」というメリットの裏返しでもあると言えるでしょう。現場の要望を取り入れながら継続的に機能が追加されていくため、中長期的には解消されていく課題かもしれません。

料金体系の不透明性

公式サイトや資料を見る限り、具体的な料金表が明確に公開されていないようです。物件数や室数によって料金が変動する従量課金制を採用しているため、実際の導入コストは個別見積もりを取らなければ分からないのが実情のようです。

競合他社の中には、ウェブサイト上で詳細な料金表を公開しているところもありますので、この点は改善の余地があると言えるかもしれません。導入を検討する側としては、事前におおよその予算感を把握しておきたいところですから、もう少し具体的な料金情報があると、検討しやすくなるのではないでしょうか。

大規模施設での実績の少なさ

suitebookは主に中小規模施設向けに開発されてきた経緯があり、200室を超える大規模施設での導入実績は限られているようです。

ミナシアの「スマイルホテル東京新小岩」(232室)が、200室以上の規模での初の導入事例として報告されています。つまり、それ以前には大規模施設での運用実績がほとんどなかったということになります。

大規模施設では、より複雑な業務フローや、多数のスタッフによる同時アクセス、大量のデータ処理など、中小規模施設とは異なる要件が求められます。このような大規模運用における信頼性や安定性については、まだ十分な実績が積み上がっていない段階と言えるかもしれません。

サポート体制の限定性

調査した情報によれば、suitebookのカスタマーサポートは主にチャット形式で提供されているようです。電話やメールでのサポートがどこまで充実しているかについては、明確な情報が見つかりませんでした。

競合の「ねっぱん!」や「手間いらず」などは、電話とメールによる手厚いサポート体制を強みとしているようですので、この点では若干見劣りする可能性があります。特に、システムに不慣れなスタッフが多い施設や、ITリテラシーが高くない経営者の場合、電話で直接質問できる体制の方が安心感があるかもしれません。

ただし、カンボジアのSQUEEZE ASIAを通じた24時間オンラインコンシェルジュサービスが提供されている点は、他社にはない強みと言えるでしょう。システムのサポートとゲスト対応のサポートは別物ではありますが、総合的な運営支援という観点では充実していると言えそうです。

クラウド型ゆえの課題

クラウド型システムの宿命として、インターネット接続が途切れると使用できなくなるというリスクがあります。RemoteLOCKとの連携についての説明では、「本体に同期済みの設定は通信トラブルや停電時でも変わらず利用できる」と記載されていますが、システム全体が常にインターネット接続に依存している点は、災害時や通信障害時のリスクとして認識しておく必要があるでしょう。

おすすめできない方

これらの欠点を踏まえると、以下のような方々には、慎重な検討が必要かもしれません。

  • 200室を超える大規模施設を運営している方:大規模運用の実績がまだ十分ではないため、他の成熟したPMSも併せて検討した方が良いかもしれません。
  • 電話サポートを重視する方:チャット主体のサポート体制に不安を感じる場合は、他社のシステムも比較検討する価値があるでしょう。
  • 完成度の高い全機能を最初から求める方:発展途上のシステムであるため、全ての機能が最初から完璧に揃っているわけではありません。段階的な機能追加を受け入れられる柔軟性が必要でしょう。
  • オフライン環境での運用を想定している方:クラウド型の性質上、安定したインターネット接続が必須となります。

suitebook利用者の口コミ・評判について

ネット上でsuitebookの口コミや評判を調査したところ、宿泊施設の運営者からの具体的な評価が複数見つかりました。

ミナシアの導入事例では、「導入後のアンケートで操作性や理解度など、複数の面で約90%以上のスタッフが『良くなった・改善した』と回答した」という非常にポジティブな評価が報告されています。特に「新人スタッフの学習期間が従来の1ヶ月から大幅に減らすことができた」「施設や部署間の人の移動や交流がしやすくなったことが嬉しかった」という現場の声は、実際の使い勝手の良さを物語っていると言えるでしょう。

また、ミナシアの担当者は「単なるシステム提供者ではなく、私たちの経営課題を共に考え、解決策を提案してくれるパートナーだと感じた」と述べており、SQUEEZEのサポート体制や伴走型の姿勢を高く評価しているようです。

fav hospitality groupの導入プロジェクトを担当したSQUEEZEの人見マネージャーは、「運営側から『安心して任せられる』と評価いただけたのは非常に励みになった」と語っており、導入先からの信頼が厚いことが窺えます。

一方で、民泊・ホテル運営者向けの情報サイトでは、「suitebookはシンプルな画面設計で初心者でも直感的に使える」という肯定的な評価がある一方で、料金については「コストを抑えつつ、基本的な一元管理と効率化を実現したい初心者〜中級者向け」という位置づけがなされています。つまり、高度な機能を求める上級者や大規模施設には、やや物足りない可能性があることが示唆されています。

エンジニア向けのレビューサイトや口コミプラットフォームでは、suitebookに関する具体的な評価がまだ少ないようです。これは、主にBtoB(企業間取引)のシステムであるため、一般消費者の目に触れにくいという性質によるものと考えられます。

ホテル運営者のブログなどを見ると、「suitebookを導入してから予約管理が楽になった」「OTAごとに個別に在庫を調整する手間がなくなった」といった業務効率化に関する肯定的な意見が散見されます。一方で、「もう少し詳細なレポート機能が欲しい」「カスタマイズの自由度をもっと上げて欲しい」といった改善要望も見られるようです。

総じて言えば、現場スタッフの使いやすさや業務効率化については高評価を得ている一方で、機能の網羅性や大規模運用については発展途上という評価が多いように感じられます。これは前述のメリット・デメリットの分析とも一致する結果と言えるでしょう。

Q&A:suitebookについてのよくある疑問

Q1: suitebookはどんな規模の施設に向いていますか?

A: 調査した情報によれば、10室から100室程度の中小規模施設に最適と言われているようです。民泊からビジネスホテル、旅館まで幅広く対応しており、特に複数のOTAに掲載している施設や、省人化を目指している施設に向いているとのことです。200室を超える大規模施設については、ミナシアの事例(232室)が初の大規模導入となっており、これから実績が積み上がっていく段階のようです。

Q2: IT導入補助金はどのように活用できますか?

A: suitebookは「IT導入補助金2025」の対象ITツールとして認定されているとのことです。通常枠では、補助額5万円から450万円、補助率は1/2(条件を満たせば2/3)で、クラウド利用料の最大2年分が補助対象になるようです。つまり、2年分の月額費用の半分から3分の2を補助金でカバーできる可能性があるということです。申請には一定の要件がありますので、IT導入支援事業者やSQUEEZEに直接問い合わせて、詳細を確認することをおすすめします。

Q3: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?

A: 具体的な導入期間は施設の規模や要件によって異なるようですが、ミナシアの事例では全37施設でわずか10ヶ月で切り替えが完了したとのことです。1施設であれば、もっと短期間での導入も可能と考えられます。まずは1施設でトライアル導入し、オペレーションを検証してから他施設へ展開していくアプローチも取られているようです。

Q4: 既存の予約データは移行できますか?

A: システム移行に際しては、既存データの移行サポートが提供されているようです。ただし、具体的な移行手順やデータ形式については、個別に相談が必要でしょう。ミナシアの事例では、長年使用していた外資系PMSからのデータ移行が成功しているようですので、実績はあると言えそうです。

Q5: スマートフォンだけで管理できますか?

A: suitebookはクラウドベースのシステムなので、スマートフォンやタブレットからもアクセス可能とのことです。ただし、料金カレンダーの一括編集など、一部の機能については、画面の大きいパソコンやタブレットの方が操作しやすいかもしれません。カンボジアのオンラインコンシェルジュスタッフも、遠隔地からシステムにアクセスして対応しているとのことですので、基本的な管理業務はモバイルデバイスでも十分可能と考えられます。

Q6: 他のPMSからの乗り換えは可能ですか?

A: ミナシアやホスピタリティオペレーションズの事例を見る限り、他のPMSからの乗り換えは十分可能のようです。特にミナシアは、長年使用していた大手外資系PMSからの全面切り替えを成功させています。ただし、システムの仕様や連携の都合上、一部のデータや機能が移行できない可能性もありますので、事前に詳細な移行計画を立てることが重要でしょう。

Q7: セキュリティ対策はどうなっていますか?

A: SQUEEZEはISMS認証(情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格)を取得しているとのことです。また、Airbnbの公式APIに接続する際も、個人情報保護に向けたセキュリティ強化に対応していると記載されています。プライバシーポリシーも整備されており、個人情報の取り扱いについては一定の基準を満たしていると言えるでしょう。

Q8: 無料トライアルはありますか?

A: 過去には「2ヶ月無料導入キャンペーン」が実施されたことがあるようです。現在も無料トライアルや割引キャンペーンが提供されているかどうかは、直接SQUEEZEに問い合わせて確認することをおすすめします。IT導入補助金を活用すれば、実質的な導入コストを大幅に抑えられる可能性がありますので、そちらも併せて検討されると良いでしょう。

コラム:宿泊業界の隠語・スラングについて

ここで少し趣向を変えて、宿泊業界で使われている面白い隠語やスラングについてご紹介したいと思います。旅行好きの皆さんなら、ホテルのバックヤードで飛び交っている業界用語に興味があるのではないでしょうか。

「タヌキ」は夕食抜きのお客様

宿泊業界で「タヌキ」と呼ばれるのは、夕食なしのプランで宿泊するお客様のことだそうです。これは「夕(タ)を抜く」→「タ抜き」→「タヌキ」という、まるでダジャレのような言葉遊びから生まれた隠語とのことです。素泊まりや一泊朝食付きのプランを選んだお客様が、知らず知らずのうちに「タヌキ」と呼ばれているわけです。決して悪い意味ではなく、単なる業務上の区分けの呼び方のようですが、知ってしまうと少し面白いですね。

「おばけ」は予約なしのお客様

「おばけが出た」というフレーズを聞くと、ホラー映画のようですが、ホテル業界では予約していないのに宿泊を希望して訪れるお客様のことを「おばけ」と呼ぶそうです。予約台帳に名前が載っていないのに突然現れることから、この呼び名がついたと言われています。ウォークイン(walk-in)という正式な業界用語もありますが、「おばけ」という隠語の方が現場では使いやすいのかもしれません。

「ノーショー」は来ないお客様

「おばけ」の反対が「ノーショー(No Show)」です。こちらは予約したのに連絡なく現れないお客様を指す用語とのことです。事前にキャンセル連絡があればキャンセル料を請求できますが、ノーショーの場合は料金回収が難しく、ホテル側にとっては大きな損失となるそうです。近年、このノーショー問題は宿泊業界全体の課題となっており、各社が様々な対策を講じているようです。

「溶ける」は予約キャンセル

予約がキャンセルになることを、業界では「溶ける」とか「トケ」と表現することがあるそうです。確かに、せっかく入っていた予約が消えてなくなる様子を「溶ける」と表現するのは、なかなか秀逸な比喩と言えるでしょう。「今日は3件溶けたよ」といった使い方をするのだとか。

「ミスク売上」は部屋代以外の売上

「ミスク売上」とは、宿泊料金以外の売上のことで、ミニバーの飲み物やルームサービス、ランドリーサービスなどが該当するとのことです。これは「ミセラニアス(miscellaneous:雑多な)」という英語から来た言葉のようです。ホテル経営において、このミスク売上をいかに伸ばすかが収益向上の鍵となるそうです。

その他の興味深い業界用語

その他にも、満室状態を「UC(ユーシー)」、客室稼働率を「OCC(オーシーシー)」、平均客室単価を「ADR(エーディーアール)」と呼ぶなど、アルファベット3文字の略語が数多く存在します。

また、「DDカード」は「Do Not Disturb(起こさないで)」の略で、部屋に入らないで欲しいことを示すドアノブに掛けるカードのこと、「フリッカー」は清掃が完了した状態のことなど、知っているとちょっと玄人っぽい用語がたくさんあります。

こうした業界用語を知っておくと、ホテルでの滞在がより楽しくなるかもしれませんね。ただし、お客様の前で使うことは避けた方が良い隠語もありますので、あくまで豆知識として楽しんでいただければと思います。

トラベルライター”TAKA”の考察と意見

ここまで、suitebookというクラウド型宿泊管理システムについて、様々な角度から調査してまいりました。最後に、トラベルライターとしての私”TAKA”の独自の視点から、このシステムが持つ可能性と、宿泊業界の未来について考察してみたいと思います。

宿泊業界のパラダイムシフトを感じる

私がsuitebookについて調査を進める中で最も強く感じたのは、このシステムが単なる「業務効率化ツール」の枠を超えて、宿泊業界全体のビジネスモデルを変革する可能性を秘めているということです。

従来、ホテルや旅館の運営には、フロントスタッフ、客室清掃スタッフ、予約管理スタッフなど、多くの人員が必要でした。特に24時間対応のフロントデスクを維持するには、最低でも3〜4名のシフト体制が必要で、これが中小規模施設にとって大きな固定費負担となっていました。

しかし、suitebookのようなクラウド型システムと、スマートロック、セルフチェックイン、カンボジアからの遠隔オンラインコンシェルジュといった技術を組み合わせることで、最小限の人員でも質の高い宿泊サービスを提供できる時代が到来しつつあるのだと感じました。

これは単なる省人化・コスト削減という次元の話ではありません。今まで「10室程度の小規模施設では収益が出ない」とされていた物件でも、運営コストを大幅に圧縮できれば、十分に事業として成立する可能性が開けてくるのです。つまり、遊休不動産の活用の幅が大きく広がるということです。

「運営×システム開発」という独自の強み

SQUEEZEという会社の最大の特徴は、システム開発会社でありながら、同時に自社でホテル運営も行っているという点です。「Minn」や「Theatel」といった自社ブランドのホテルを全国50施設以上運営し、さらにはエスコンフィールドHOKKAIDOの「tower eleven hotel」のような大型プロジェクトにも関わっているという事実は、非常に示唆に富んでいます。

多くのシステム開発会社は、顧客である宿泊施設からヒアリングを行い、要望に基づいてシステムを構築します。しかし、現場の本当の課題は、ヒアリングだけでは見えてこないこともあるでしょう。実際にフロントに立ち、清掃を指示し、ゲストからのクレームに対応し、収支を管理する。そうしたリアルな運営経験があってこそ、真に現場で使えるシステムが生まれるのだと思います。

ミナシアの担当者が「単なるシステム提供者ではなく、経営課題を共に考えるパートナー」と評価していた点も、この運営経験に裏打ちされた提案力があるからこそでしょう。机上の空論ではなく、実践から生まれた知見を提供できることが、SQUEEZEの大きな差別化要因になっていると感じます。

グローバル×ローカルの絶妙なバランス

カンボジアに現地法人を設立し、そこから日本の宿泊施設に24時間多言語サポートを提供するという発想も、非常にユニークだと感じました。

日本国内で24時間対応のコールセンターを運営しようとすれば、人件費だけで莫大なコストがかかります。しかし、カンボジアのような人件費の安い国で、かつ多言語人材が豊富に存在する環境を活用すれば、コストを抑えながら質の高いサービスを提供できるわけです。

これは単なるコスト削減策ではありません。グローバルな視点で最適な資源配分を行いながら、ローカルな日本の宿泊施設を支えるという、まさに現代的なビジネスモデルと言えるでしょう。

さらに言えば、カンボジアのスタッフにとっても、日本のホテル業界で働く経験は貴重なスキルアップの機会となるでしょうし、将来的には人材紹介や派遣といった形で、日本の労働力不足の解決にも貢献できる可能性があると語られています。これは、双方にとってwin-winの関係を構築しようとする、持続可能なビジネスモデルだと評価できます。

旅行者にとっての恩恵は何か

ここまで、主に宿泊施設の経営者側の視点で語ってきましたが、私たち旅行者にとって、suitebookのような システムの普及は何をもたらすのでしょうか。

まず考えられるのは、宿泊料金の適正化です。運営コストが下がれば、その分を価格に反映できる余地が生まれます。もちろん、全ての施設が値下げするわけではないでしょうが、少なくとも「人件費が高いから宿泊料金も高くせざるを得ない」という構造からは脱却できる可能性があります。

次に、チェックイン・チェックアウトの利便性向上です。セルフチェックイン端末やモバイルチェックインが普及すれば、フロントでの待ち時間がなくなり、到着したらすぐに部屋に入れるようになります。特に深夜到着の場合や、早朝出発の場合など、従来はフロントスタッフとの調整が必要だった場面でも、ストレスフリーな滞在が可能になるでしょう。

また、多言語対応の充実も旅行者にとって大きなメリットです。海外からの訪日旅行者はもちろん、日本人が海外旅行する際にも、こうしたシステムが普及していれば言語の壁を感じることなく快適に滞在できるようになります。

一方で危惧すべき点も

ただし、省人化・無人化が進むことで、人と人との触れ合いが失われるという懸念もあります。旅の醍醐味の一つは、現地の人との出会いやコミュニケーションにあります。ホテルのフロントスタッフから教えてもらった地元の美味しいレストランや、隠れた観光スポットの情報は、ガイドブックには載っていない貴重な体験です。

完全無人のホテルが増えれば、そうした偶然の出会いや、温かいおもてなしを受ける機会が減ってしまうかもしれません。効率化と人間味のバランスをどう取るかは、今後の宿泊業界全体の課題となるでしょう。

SQUEEZEの「One Platform」構想は、まさにこのバランスを追求しようとしているように見えます。定型業務を自動化することで、スタッフの負担を減らし、その分の時間と労力を「人にしかできない体験づくり」に注力できる環境を実現するという考え方です。

つまり、チェックインの事務手続きや予約確認といった定型業務は機械に任せ、人間のスタッフは、ゲストとの心の通った会話や、個別のニーズに応じた提案といった、より付加価値の高いサービスに集中できるようになるわけです。これは理想的な形と言えるかもしれません。

データ活用がもたらす新しい旅行体験

suitebookのようなシステムが蓄積する膨大なデータは、将来的にパーソナライズされた旅行体験を提供する基盤になる可能性があると私は考えています。

過去の宿泊履歴、利用したサービス、好みの部屋タイプ、チェックイン・チェックアウトの時間帯など、様々なデータを分析することで、一人ひとりのゲストに最適化されたサービスを提供できるようになるでしょう。

SQUEEZEの社内対談記事では、「suitebookに蓄積された宿泊履歴や購買データと組み合わせることで、ゲストの嗜好や滞在目的に応じたパーソナライズを実現し、旅前の情報提供、旅中の案内・追加提案、旅後のコミュニケーションまで、すべてのフェーズで体験価値を高めていく」という構想が語られています。

例えば、「前回サウナ付きの部屋を好んで利用したゲストには、次回も自動的にサウナ付きの部屋を優先的にアサインする」「朝食をよく利用するゲストには、朝食付きプランを割引価格で提案する」「観光地巡りが好きなゲストには、周辺の新しい観光スポット情報を事前に送る」といったことが可能になるわけです。

これは単なるマーケティングオートメーションではなく、真の意味での個別化されたおもてなしになり得ると思います。

地方創生への寄与

最後に、トラベルライターとして特に注目したいのが、suitebookのようなシステムが地方の宿泊施設や地域活性化に与える影響です。

地方の小規模な民宿や古民家宿は、人手不足や後継者不足に悩まされているケースが多いと聞きます。従来型の運営では、家族経営でもギリギリの人員で回しているため、少しでも誰かが休めば営業できなくなってしまう。そのため、せっかく魅力的な物件や立地があっても、運営を諦めざるを得ないケースが少なくないのだそうです。

しかし、suitebookのような省人化・遠隔運営が可能なシステムを活用すれば、最小限の人員でも持続可能な運営が可能になります。予約管理や問い合わせ対応はオンラインコンシェルジュに任せ、清掃は地域のクラウドワーカーに委託し、チェックインはスマートロックで無人化する。こうすることで、オーナー自身は本業(農業や漁業など)を持ちながら、副業として宿泊施設を運営することも現実的になるでしょう。

世界遺産・熊野古道の1棟貸し宿「SEN.RETREAT」の事例は、まさにこうした可能性を示していると感じます。無人運営のためにsuitebookとオンラインコンシェルジュを活用し、深い山中の立地でありながら、質の高い宿泊サービスを提供しているのです。

こうした取り組みが全国に広がれば、今まで宿泊施設がなかった魅力的な地域にも、新しい宿が誕生する可能性があります。それは、旅行者にとっても、より多様な旅の選択肢が増えることを意味します。

結びに代えて

suitebookというシステムを調査する中で、私が感じたのは、これが単なるソフトウェアではなく、宿泊業界の未来を形作るインフラになろうとしているということです。

まだ発展途上の部分もあり、全ての機能が完璧に揃っているわけではありません。大規模施設での実績もこれから積み上げていく段階でしょう。しかし、その柔軟性と拡張性、そして何より「現場の声を聞きながら共に成長していく」という姿勢に、大きな可能性を感じます。

ミナシアの担当者が語っていた「単なるシステム提供者ではなく、パートナー」という言葉が、suitebookの本質を最もよく表しているのかもしれません。システムを導入したら終わりではなく、導入後も二人三脚で業務改善を続けていく。そうした伴走型のサポート体制こそが、成熟した大手システムにはない、SQUEEZEの強みなのでしょう。

これから宿泊施設の開業を考えている方、既存のシステムからの乗り換えを検討している方には、suitebookは有力な選択肢の一つになると思います。ただし、全ての施設に最適というわけではありませんので、自施設の規模、運営スタイル、予算、求める機能などを十分に検討した上で、複数のシステムを比較されることをおすすめします。

私たち旅行者にとっても、こうしたシステムの進化は、より快適で、より多様な旅の体験につながっていくはずです。技術の進歩が、人と人との温かい交流を損なうのではなく、むしろそれを支え、増幅させる方向に進んでいくことを願ってやみません。

公式サイトはこちら