水上温泉は”やばい”とネットで頻繁に検索されている理由はなぜ? HOTTELの記者がわかりやすく簡単に解説
目次
結論:衰退から再生へ向かう水上温泉の現在地
「水上温泉 やばい」という検索キーワードの背景には、バブル崩壊後の急激な衰退と廃墟化が進んだ温泉街の実情があるようです。しかし、この「やばい」という表現は必ずしもネガティブな意味だけではなく、近年の再生プロジェクトや新しい観光スタイルへの注目度の高さを表している側面もあると考えられます。
現在の水上温泉は確かに多くの廃業旅館や閉鎖施設を抱えており、かつての「関東の奥座敷」としての賑わいは失われているものの、東京大学や民間企業との産官学連携による再生プロジェクトが本格化し、新たな観光地としての魅力を模索している過渡期にあると言えるでしょう。
水上温泉が「やばい」と言われる主な理由
バブル崩壊後の急激な衰退
水上温泉が「やばい」状況に陥った最大の原因は、1990年代のバブル経済崩壊にあるようです。高度経済成長期からバブル期にかけて、水上温泉は草津温泉や伊香保温泉と並ぶ群馬県の代表的な温泉地として隆盛を極めていました。
当時の水上温泉は団体旅行客を主要ターゲットとしており、大型旅館やホテルが次々と建設されました。最盛期には100を超える宿泊施設が軒を連ね、年間170万人近い宿泊客で賑わっていたと言われています。しかし、バブル崩壊とともに企業の慰安旅行が激減し、観光客のニーズも団体旅行から個人旅行へと大きく変化したのです。
廃墟化が進む温泉街の実情
現在の水上温泉街を歩くと、その衰退ぶりは一目瞭然のようです。温泉街の中心部であるふれあい通り商店街周辺には、廃業したホテルや旅館の建物が放置されており、「ゴーストタウン」と形容されることも少なくありません。
特に象徴的なのが、JR水上駅前に位置する「ホテル大宮」の廃墟です。1964年に開業したこのホテルは、1991年にエレベーター事故による営業停止を経て廃業に追い込まれ、現在も荒廃した状態で残っているようです。地域住民からは「駅前にいきなり廃墟なんて」という声が上がっているとされています。
また、水上温泉街最大級の廃墟として知られる「旧一葉亭(旧ひがきホテル)」も、この問題を象徴する存在と言えるでしょう。1948年に創業し、客室120室・収容人員650名を誇った大型ホテルでしたが、2019年に閉業し、延床面積約1万8,000平方メートルという巨大な廃墟となっています。
温泉偽装問題による信頼失墜
水上温泉の評判を大きく損ねた出来事として、2004年に発覚した温泉偽装問題があります。当時の水上町観光協会および水上温泉旅館協同組合が温泉の不正表示を公表し、謝罪するという事態に発展しました。
この問題では、温泉表記をしながら実際には水道水を利用していた施設が存在し、温泉のみ徴収可能な入湯税を不正に取っていた旅館もあったと報じられています。このスキャンダルは水上温泉のブランドイメージに深刻なダメージを与え、観光客離れを加速させる要因となったようです。
交通インフラ整備による日帰り化
皮肉なことに、水上温泉の衰退には交通アクセスの改善も影響しているようです。上越新幹線や関越自動車道の整備により首都圏からのアクセスは格段に向上しましたが、これにより日帰り旅行が主流となり、宿泊客の減少を招く結果となりました。
従来の大型旅館は宿泊客の館内滞在を前提としたビジネスモデルだったため、日帰り客の増加や個人旅行化の流れに対応できず、経営困難に陥る施設が続出したのです。
水上温泉の現在の問題点と課題
悪い点:景観の悪化と治安への懸念
水上温泉の最大のデメリットは、廃墟化した建物群が温泉街全体の景観を著しく損ねていることです。特に夜間は明かりもなく不気味な雰囲気を醸し出し、観光地としてのイメージを大きく損なっているようです。
また、老朽化が進んだ廃墟の中には危険な状態にある施設もあり、安全面での懸念も指摘されています。地域住民や観光客からは治安や景観の悪化を心配する声が上がっており、温泉地としての魅力を大きく削ぐ要因となっています。
湯量不足と温泉の質の問題
水上温泉のもう一つの課題は、温泉街の規模に対して湧出量が少ないことです。このため、大型旅館では源泉を大幅に加水し循環させる方式を採用せざるを得ず、「本物の温泉を楽しみたい」という現代の観光客のニーズに応えきれていない現状があるようです。
上越新幹線大清水トンネル工事の影響で源泉枯れや湯量減少も発生し、温泉地としての根幹に関わる問題も抱えているとされています。
おすすめできない方の特徴
現在の水上温泉をおすすめしない方は、華やかで賑やかな温泉街の雰囲気を求める方や、完璧に整備された観光地での滞在を希望する方でしょう。また、廃墟や荒廃した景観に対して強い不快感を覚える方にとっては、現在の水上温泉は決して快適な滞在先とは言えないかもしれません。
水上温泉の良い点と新たな魅力
良い点:豊かな自然環境とアクセスの良さ
水上温泉の最大のメリットは、谷川岳をはじめとする雄大な自然環境に恵まれていることです。利根川の清流と山々に囲まれた立地は、都市部では味わえない癒しの空間を提供しています。
また、東京から車で約90分、新幹線利用なら約80分という優れたアクセスの利点も健在です。関越自動車道水上ICから約5分という立地の良さは、気軽に温泉旅行を楽しみたい方にとって大きな魅力と言えるでしょう。
新しいホテルとリノベーション施設の台頭
近年の水上温泉では、新しいコンセプトのホテルやリノベーション施設が続々と開業しているようです。2022年11月に開業した「あらたし みなかみ」は、全42室すべてに露天風呂が付いた新しいスタイルの温泉ホテルとして注目を集めています。
この施設は若者や外国人旅行客をターゲットにした「NEW-tral」(new=新しい+neutral=公平)をコンセプトにしており、従来の温泉旅館とは一線を画す現代的なサービスを提供しているようです。
廃墟再生プロジェクトという新たな観光資源
水上温泉の注目すべき取り組みとして、「廃墟再生マルシェ」があります。2022年からスタートしたこのイベントは、東京大学大学院の学生たちが中心となって企画し、廃墟となった建物を活用したマルシェを開催しています。
第3回目となる2024年には4会場に拡大し、約36店舗が出店して多くの来場者で賑わったとされています。このような取り組みは、廃墟をネガティブな存在から新たな観光資源へと転換する画期的な試みと言えるでしょう。
アウトドアアクティビティの充実
水上温泉エリアは、ラフティングやキャニオニング、スキーなど多様なアウトドアアクティビティを楽しめる立地的優位性があります。特に、ニュージーランド出身のマイク・ハリス氏が設立した「キャニオンズ」などの取り組みにより、外国人観光客にも注目される国際的なアウトドアスポットとしての地位を確立しつつあるようです。
おすすめしたい方の特徴
現在の水上温泉をおすすめしたい方は、まず自然環境を重視する方です。都市部の喧騒を離れて、利根川のせせらぎや谷川岳の雄大な景色に癒しを求める方にとって、水上温泉は理想的な滞在先と言えるでしょう。
また、歴史や文化に興味がある方、特に日本の温泉地の変遷や地域再生に関心を持つ方にとっては、現在の水上温泉は非常に興味深い観察対象となるはずです。廃墟再生プロジェクトなどの取り組みを通じて、地域の未来を一緒に考えたいという方にも強くおすすめできます。
水上温泉の再生への取り組み
産官学金連携による大規模再生プロジェクト
水上温泉の将来に希望をもたらしているのが、2021年9月に締結された「産官学金包括連携協定」です。みなかみ町、東京大学大学院工学系研究科、群馬銀行、オープンハウスグループの4者が連携し、温泉街全体の活性化を目指す取り組みが本格化しています。
このプロジェクトでは、旧一葉亭を中心とした「水上温泉街再生プロジェクト」が進行中で、温泉街を「5つのヒロバ」から再生するコンセプトが立案されています。オープンハウスグループは企業版ふるさと納税として総額3億8,000万円を寄付し、廃墟の解体・減築費用を支援しているとされています。
新しい観光施設の開業ラッシュ
水上温泉エリアでは、既存の枠組みを超えた新しい観光施設が相次いで開業しているようです。2025年5月には、「別荘の小口所有」事業を展開するNOT A HOTELが「NOT A HOTEL MINAKAMI TOJI」を開業予定で、全5棟の別荘タイプの宿泊施設を提供するとされています。
このような新しいコンセプトの施設は、従来の大型旅館とは異なる顧客層にアピールし、水上温泉の新たな魅力を創出する重要な役割を果たしているようです。
リノベーションによる既存施設の再活用
温泉街では、廃業した施設をリノベーションして新たな飲食店や観光施設として再活用する動きも活発化しているようです。これらの取り組みは、廃墟問題の解決と同時に、温泉街に新たな活気をもたらす効果があると考えられます。
実際の利用者による評価
宿泊施設への評価
現在営業している宿泊施設に対する利用者の評価を見ると、温泉の質や食事、サービスについては概ね好意的な意見が多いようです。特に源泉かけ流しの温泉を提供している施設では、泉質の良さを評価する声が目立ちます。
一方で、温泉街全体の雰囲気については「寂れている」「廃墟が目立つ」といった指摘も見られ、施設単体の質の高さと温泉街全体の課題が対照的な状況となっているようです。
アクセスの良さは高評価
多くの利用者が評価しているのは、首都圏からのアクセスの良さです。「東京から近くて行きやすい」「水上ICから近い」といった交通利便性の高さは、現在でも水上温泉の大きな強みとして認識されているようです。
トラベルライター”TAKA”の独自考察
これまでの調査を通じて、私は水上温泉の「やばい」状況について深く考察してみました。確かに表面的には廃墟や衰退といったネガティブな要素が目立つ水上温泉ですが、この状況を別の角度から捉えると、実は非常に興味深い可能性を秘めた温泉地であることが見えてきます。
まず注目すべきは、水上温泉が直面している課題が、実は日本の多くの地方観光地が抱える普遍的な問題の縮図であるということです。高度経済成長期の成功モデルから脱却できずにいる観光地は全国に数多く存在しますが、水上温泉ほど大胆な再生プロジェクトに取り組んでいる事例は珍しいのではないでしょうか。
特に印象的なのは、東京大学という日本最高峰の学術機関が本格的に関わっていることです。これは単なる地域活性化事業を超えて、日本の観光業界全体の未来を占う重要な実験的取り組みと位置づけることができると思います。廃墟再生マルシェのような発想は、従来の観光業界の常識を覆すものであり、新しい観光のあり方を提示している画期的な試みと言えるでしょう。
また、水上温泉の立地的優位性は今後ますます重要になってくると予想されます。コロナ禍を経て、都市部の人々の自然回帰志向は確実に高まっており、マイクロツーリズムの概念も定着しつつあります。東京から2時間圏内でこれほど豊かな自然環境を享受できる温泉地は決して多くありません。
私が特に注目しているのは、水上温泉が「失敗から学ぶ観光地」としての価値を持っていることです。バブル期の拡大路線の失敗、温泉偽装問題、そして現在の廃墟問題まで、観光地が陥りがちな負のスパイラルを包み隠さず見せている稀有な存在と言えるでしょう。これらの経験を糧に、持続可能で真に魅力的な観光地への転換を図る過程は、観光業界関係者にとって非常に貴重な学習機会を提供しています。
さらに、水上温泉の再生プロジェクトは、単なる施設の建て替えや表面的な美化に留まらず、温泉地の本質的な価値を見直そうとしている点で注目に値します。5つのヒロバ構想は、従来の宿泊特化型から滞在体験型への転換を目指しており、これは現代の旅行者ニーズに合致した方向性だと感じます。
私は、現在の水上温泉を「再生途上の温泉地」として積極的に評価したいと思います。確かに見た目の美しさや華やかさでは他の有名温泉地に劣るかもしれませんが、変化の瞬間を目撃できる貴重な場所として、むしろ他では得られない特別な体験を提供してくれる可能性があります。
10年後、20年後の水上温泉がどのような姿になっているかは現時点では分かりませんが、少なくとも現在進行中の取り組みは、日本の温泉観光業界全体にとって重要な先例となることは間違いないでしょう。「やばい」という言葉の真の意味が、「危機的」から「注目すべき」「革新的」へと変化していく過程を、私たちは今まさに目撃しているのかもしれません。
そういう意味で、水上温泉は現在、日本で最も「やばい」=「注目すべき」温泉地の一つであると、トラベルライターとして確信を持って申し上げたいと思います。