旅行業界のアカデミー賞「World Luxury Hotel Awards(ワールドラグジュアリーホテルアワード)」とは?選定方法などHOTTELの記者がわかりやすく解説

旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター”TAKA”です。「旅行業界のアカデミー賞」とも称される「World Luxury Hotel Awards(ワールドラグジュアリーホテルアワード)」について、ネット上の口コミや評判を幅広くリサーチし、このアワードの実態に迫っていきたいと思います。ラグジュアリーホテルに興味のある方であれば、一度は目にしたことがあるであろうこの賞。果たしてどのような仕組みで運営され、受賞することにどんな意味があるのでしょうか。

World Luxury Hotel Awardsは信頼できる国際的なホテルアワード

まず結論から申し上げますと、World Luxury Hotel Awards(以下、WLHA)は2006年に設立された、世界中のラグジュアリーホテルを評価・表彰する国際的なアワードプログラムのようです。ホテル、スパ、レストラン、旅行の4つのカテゴリーで優れた施設を選出し、毎年30万人を超える宿泊客、旅行会社などを含む業界関係者による評価・投票に基づいて受賞施設が決定されると言われています。

この賞の最も大きな特徴は、国別(Country Winner)、地域別(Regional Winner)、大陸別(Continent Winner)、そして世界最高位(Global Winner)という4つの階層で表彰が行われる点だと言われています。つまり、各カテゴリーにおいて段階的に競い合い、最終的に世界一の称号を目指すという仕組みのようです。

世界150カ国以上、800以上のホテルブランドが参加していると言われており、その規模の大きさからも国際的な認知度の高さがうかがえます。日本国内でも、2024年時点でわずか44施設しか受賞していないという情報があり、その希少性も注目されています。

運営団体と選定方法の詳細

WLHAを運営しているのは、南アフリカの会社組織のようで、公式ウェブサイト(luxuryhotelawards.com)を通じてグローバルに展開していると言われています。

選定方法については、まずノミネーションの段階があるようです。ホテル自身が自己ノミネートすることも可能で、またゲストや旅行代理店、ツアーオペレーターによる推薦も受け付けているとのことです。ノミネートされた施設は、厳格な審査を経て正式に参加が認められ、その後一般投票のフェーズへと進むようです。

投票期間は毎年3〜4週間程度設けられており、2025年の例では8月18日から9月7日までの約3週間が投票期間だったようです。この期間中、世界中の旅行者や業界関係者がオンライン投票を行い、30万票を超える投票数が集まると言われています。

審査基準については、サービス提供、ラグジュアリー性、プレゼンテーション(施設の見せ方)の3つが主な評価軸となっているようです。興味深いのは、施設の規模は評価の対象にならないという点で、小規模でも質の高いサービスを提供する施設が公正に評価される仕組みになっていると言われています。

参加費用と受賞後のコスト

ホテルがWLHAに参加するには、登録費用が必要になるようです。調査した情報によれば、2018年から2019年頃の登録費用は年間890ポンド(約19万円)で、3泊分の宿泊バウチャーの提供も求められていたとのことです。この宿泊バウチャーは、アワード側が実施する施設視察のために使用されるもので、必須ではないという情報もあります。

さらに、受賞後にトロフィーや記念プレートを購入する場合、追加費用が発生するようです。公式ショップでの価格を見ると、クリスタルガラスのトロフィーが315〜350ポンド(約7〜8万円)、ブラスプレートが180ポンド(約4万円)、トロフィーとプレートのパッケージが675〜711ポンド(約14〜15万円)となっており、いずれも送料が別途50〜150ポンド(約1〜3万円)かかるようです。

つまり、参加登録だけで約19万円、受賞した際のトロフィーセットを購入すると合計で30〜35万円程度のコストがかかる可能性があるということですね。

日本国内の受賞実績

日本からも多くのラグジュアリーホテルや温泉旅館が受賞しているようです。2024年から2025年にかけての受賞例を見てみると、実に多彩な施設が名を連ねています。

2025年には、ホテルインターコンチネンタル東京ベイが世界最高位(Global Winner)を含む3冠を達成したとのことです。また、福岡のONE FUKUOKA HOTELが「Luxury Art Boutique Hotel」部門で世界最優秀賞(Global Winner)を獲得したという情報もあります。

広島県の江田島荘は、「Luxury Hot Spring Hotel」部門で日本初の世界最高位を獲得したほか、「Luxury All Inclusive Hotel」部門でアジア大陸最高位、「Luxury Small Hotel」部門でもアジア大陸最高位という三冠を達成したと伝えられています。

沖縄のフサキビーチリゾート ホテル&ヴィラズは、2024年に6冠、2025年には9冠(ホテル部門3、スパ部門3、レストラン部門3)を受賞し、2年連続で高い評価を得ているようです。

東京では、BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotelが2025年にホテル部門2つ、スパ部門3つ、レストラン部門2つの合計7つの賞を受賞したとのことです。また、HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotelも2025年に初めてホテル部門2つ、レストラン部門3つの計5つの賞を獲得したと言われています。

岩手県のANAインターコンチネンタル安比高原リゾートは、2023年から2025年まで3年連続で受賞し、毎年3部門での受賞を続けているそうです。

こうした事例を見ると、日本のホスピタリティ産業が国際的に高く評価されていることがわかりますね。

受賞のメリット:ブランド価値向上と集客効果

WLHAを受賞することには、いくつかの明確なメリットがあると言われています。

まず最も大きな利点は、国際的な認知度とブランド価値の向上です。「旅行業界のアカデミー賞」という愛称で呼ばれることからもわかるように、この賞を受賞することは世界トップレベルのサービスを提供している証となり、ホテルの信頼性と権威を大きく高める効果があるようです。

実際に受賞ホテルの総支配人のコメントを見ると、「国際的に高い評価を得ることができ、ブランド価値がさらに高まる栄誉」、「世界中の皆さまに沖縄の素晴らしさと共に忘れられない体験をお届けできる」といった前向きな言葉が並んでいます。

グローバルプロモーションの機会も大きなメリットのようです。WLHAの公式サイトには受賞ホテルの専用プロフィールページが作成され、世界中からのゲスト問い合わせやダイレクト予約を受けられる仕組みになっていると言われています。プロフィールページには、ホテルのロゴ、写真、施設情報、予約リンク、SNSフィードなども掲載できるため、効果的なマーケティングツールとして機能するようです。

新規顧客の獲得効果も見逃せません。アワード受賞は新たな市場のゲストを呼び込むきっかけになると言われており、特に海外からのインバウンド旅行者に対する訴求力が高まるようです。

授賞式への参加によるネットワーキング機会も提供されているとのことです。年に2回、異なる場所で開催されるガラアワードセレモニーでは、世界中のホスピタリティ業界の関係者と出会い、新たなビジネス機会を生み出せる可能性があると言われています。2024年の授賞式はインドネシアのバリ島と北アイルランドのGalgormで開催されたそうです。

スタッフのモチベーション向上も重要なメリットでしょう。国際的な賞の受賞は、日々献身的に働くホテルスタッフにとって大きな誇りとなり、サービス品質の維持・向上につながると言われています。

デメリットと懸念点:コストと透明性の問題

一方で、WLHAにはいくつかの欠点や懸念点も指摘されているようです。

まず、前述のとおり参加費用と受賞後のトロフィー購入費用がかかる点は、特に小規模な施設にとって負担になる可能性があります。年間約19万円の参加費に加え、受賞時のトロフィーセットで15〜20万円程度、合計で30〜40万円近いコストがかかることになります。

自己ノミネート制度の存在も、一部で議論の対象となっているようです。ホテル自身が積極的にノミネートできる仕組みは、一見すると参加のハードルを下げる良い制度に思えますが、「お金を払えば参加できる」という印象を持たれる可能性もあると言われています。ある情報源では、「セルフノミネートもできるため、積極的にノミネートしてアワードを獲得するというプロモーション方法もある」という指摘がありました。

投票プロセスの透明性についても、完全には明らかになっていない部分があるようです。30万人以上が投票すると公表されていますが、その内訳や投票者の検証方法、不正防止策などの詳細は公開されていないと言われています。投票結果も機密扱いとされており、参加ホテルにも共有されないとのことです。

また、世界中で数多くのホテルアワードが存在する中で、WLHAの位置づけや権威性については意見が分かれるところのようです。より歴史が長く、厳格な審査基準で知られる「フォーブス・トラベルガイド」(1958年創設、覆面調査員による800項目以上の評価)や、タイヤメーカーのミシュランが発行する「ミシュランガイド」(2024年からホテル評価のMICHELIN Key導入)、北米で80年以上の歴史を持つ「AAA Diamond Award」などと比較すると、WLHAは比較的新しいアワードであり、評価の厳格さという点で疑問視する声もあるようです。

受賞施設の数が比較的多いことも、「希少性」に関して議論を呼んでいるようです。日本国内だけでも毎年複数の施設が受賞しており、世界全体では相当な数のホテルが何らかの賞を受け取っていると推測されます。

WLHAをおすすめできる方、できない方

これまでの情報を総合すると、WLHAの受賞を目指すことがおすすめな方とそうでない方が見えてきます。

おすすめできる方:

まず、国際的な認知度を高めたいラグジュアリーホテルや高級旅館の経営者の方には、このアワードへの参加は有効な選択肢になるでしょう。特に、インバウンド旅行者をターゲットにしたマーケティング戦略を展開している施設にとっては、国際的な賞の受賞は大きなアピールポイントになると言われています。

また、スタッフのモチベーション向上や組織の一体感を高めたいと考えている経営者の方にもメリットがあるようです。国際的な賞を目指すプロセス自体が、サービス品質の見直しや改善のきっかけになる可能性があります。

新規開業したばかりのホテルで、早期にブランド認知を確立したい場合にも、WLHAは比較的参加しやすいアワードと言えるかもしれません。実際に、2023年開業のHOTEL GROOVE SHINJUKUが2025年に初受賞したという事例もあります。

おすすめできない方:

一方で、厳格で透明性の高い評価基準を重視する方には、他のアワード(フォーブス・トラベルガイドやミシュランガイドなど)の方が適しているかもしれません。これらのアワードは覆面調査員による客観的な評価を行っており、より信頼性が高いと認識されているようです。

また、予算が限られている小規模施設の場合、30〜40万円程度の参加・受賞コストは負担が大きいと感じられる可能性があります。その予算を直接的なサービス改善や施設のメンテナンスに充てた方が、長期的には顧客満足度の向上につながるという考え方もあるでしょう。

「自己ノミネート制度」や「有料参加」という仕組みに抵抗感がある方も、WLHAには慎重になった方が良いかもしれません。本当に優れた施設であれば、第三者からの推薦や口コミで自然と評価が高まるはずだという信念をお持ちの方には、このアワードは合わないと言えます。

よくある疑問にお答えします(Q&A)

Q1: World Luxury Hotel Awardsは本当に信頼できるアワードですか?

A: 2006年の設立以来、19年の歴史があり、世界150カ国以上、800以上のホテルブランドが参加しているという規模の大きさから、一定の国際的認知度と信頼性はあると言えるでしょう。ただし、自己ノミネート制度や有料参加という仕組みがあるため、完全に中立的・客観的な評価とは言い切れない面もあるようです。フォーブスやミシュラン、AAA Diamondなどの歴史あるアワードと比較すると、評価の厳格さや透明性の点で劣ると感じる方もいるかもしれません。

Q2: 受賞するとどのくらい集客効果がありますか?

A: 具体的な数値データは公開されていないようですが、受賞ホテルの多くが「国際的に高い評価を得た」「ブランド価値が向上した」とコメントしていることから、一定の効果はあると推測されます。特に、公式サイトのプロフィールページからの問い合わせや予約につながるケースもあるようです。ただし、受賞しただけで劇的に予約が増えるわけではなく、その後のマーケティング活用次第という面も大きいでしょう。

Q3: 小規模な旅館でも受賞できますか?

A: はい、可能なようです。実際に、施設の規模は評価基準に含まれず、サービスの質を重視する仕組みになっていると言われています。日本からも、広島県の江田島荘(客室数32室)が「Luxury Small Hotel」部門でアジア大陸最高位を獲得した事例があります。むしろ、小規模だからこそ実現できるきめ細かなおもてなしが評価されることもあるようです。

Q4: 受賞後もずっと費用がかかりますか?

A: 登録費用は年間契約のため、翌年も受賞を目指す場合は再度登録が必要になるようです。ただし、前年の受賞者は優遇料金で再登録できるという情報もあります。トロフィーや記念プレートは一度購入すればずっと使えますが、毎年受賞する場合は年号の入った新しいものを追加で購入するか、既存のものを使い続けるかは施設の判断次第でしょう。

Q5: 他のホテルアワードとの違いは何ですか?

A: 主な違いは、評価方法と歴史・権威性にあると言われています。フォーブス・トラベルガイドは覆面調査員による800項目以上の厳格な評価を行い、評価基準の7割がサービスに重点を置いているとのことです。ミシュランガイドは2024年からMICHELIN Keyを導入し、5つの評価基準に基づいて選出しているそうです。AAA Diamond Awardは80年以上の歴史があり、プロの検査官による抜き打ち検査を実施しているとのことです。これらと比較すると、WLHAは一般投票ベースで参加費用がかかるという点が大きく異なります。どのアワードが「最も優れている」とは一概には言えず、それぞれに特徴があると考えるべきでしょう。

トラベルライター”TAKA”の独自考察

ここまで、World Luxury Hotel Awardsについて、ネット上の情報を徹底的にリサーチしてきました。最後に、トラベルライターとしての私の独自の視点から、このアワードについての考察をお伝えしたいと思います。

正直に申し上げますと、WLHAは「完璧なアワード」ではないと感じています。自己ノミネート制度や参加費用の存在、投票プロセスの透明性の低さなど、いくつかの懸念点があることは否めません。特に、ジャーナリストとして正確性を重んじる立場からすると、評価基準の詳細や投票者の検証方法がもっと明確に公開されるべきだと考えます。

しかし、だからといってこのアワードに全く価値がないとも思いません。むしろ、現代のホテル業界におけるマーケティングツールの一つとして、一定の役割を果たしていると評価できるのではないでしょうか。

重要なのは、「アワード受賞」という肩書きに惑わされず、本質を見極めることだと思います。どんなに権威あるアワードを受賞していても、実際に宿泊してみたら期待外れだったという経験をお持ちの方も多いでしょう。逆に、何の賞も受賞していなくても、心から満足できる素晴らしいホテルもたくさん存在します。

私が考えるWLHAの最大の価値は、実は「受賞そのもの」ではなく、「受賞を目指すプロセス」にあるのかもしれません。国際的な賞に挑戦することで、ホテルのスタッフ全員が一丸となってサービス品質の向上に取り組む。そのプロセス自体が、組織力の強化につながり、結果として真の意味での「ラグジュアリー」な体験を提供できるようになる。そう考えると、30〜40万円という費用も、スタッフ研修やチームビルディングの一環として捉えることができるかもしれません。

また、日本のホテルや旅館が国際的な舞台で評価されることは、日本のホスピタリティ文化を世界に発信する良い機会にもなります。2025年のONE FUKUOKA HOTELの世界最優秀賞受賞や、江田島荘の三冠達成などは、日本の施設が世界と対等に競い合える実力を持っていることを証明しました。こうした成功事例は、日本の観光産業全体にとってもポジティブな影響をもたらすでしょう。

旅行者の立場からすると、WLHAの受賞ホテルを選ぶ際には、「受賞歴がある」という事実だけでなく、どのカテゴリーで受賞したのか、どのような点が評価されたのかを確認することをおすすめします。「Luxury Service Excellence」「Luxury Design」「Luxury Family Hotel」など、カテゴリーによって施設の特徴は大きく異なります。自分の旅行スタイルや求める体験に合ったカテゴリーで受賞しているホテルを選ぶことが、満足度の高い滞在につながるはずです。

そして何より大切なのは、アワード受賞の有無に関わらず、実際の宿泊者のレビューや口コミをしっかりと確認することです。私自身、取材で数多くのホテルを訪れてきましたが、本当に素晴らしいホテルは、賞の有無に関係なく、ゲスト一人ひとりに寄り添った心のこもったサービスを提供しています。WLHAの受賞歴は、ホテル選びの一つの参考情報として活用しつつ、最終的には自分の目と感覚で判断することが、最高の旅行体験への近道だと私は考えています。

2006年の創設から約20年が経過したWorld Luxury Hotel Awards。今後、より透明性の高い評価システムへと進化していくことを期待しつつ、現時点では「国際的なマーケティングツールの一つ」として、適切な距離感を持って捉えることが賢明なのかもしれません。

旅行業界は常に進化し続けています。アワードやランキングも時代とともに変化していくでしょう。私たち旅行者にできることは、さまざまな情報源を批判的に吟味し、自分にとって本当に価値のある体験を見極める目を養うことだと思います。そして、日本全国、世界中に存在する素晴らしいホテルや旅館を、自分の足で訪れ、自分の心で感じることこそが、何よりも確かな「評価」になるのではないでしょうか。 皆さまの次の旅が、アワードの有無に関わらず、心から満足できる素晴らしいものになることを願っています。