株式会社Haginoが提供するホテル業界に特化した採用支援サービス「in the HOTEL(イン ザ ホテル)」とはどんなサービス? 料金、導入事例、メリットやデメリットなどHOTTELの記者がわかりやすく解説

旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター”TAKA”です。今回のテーマは、株式会社Haginoが提供する宿泊業界特化の採用支援サービス「in the HOTEL」についてです。宿泊業界で働きたい方、あるいはホテルや旅館の採用に悩む施設運営者の方々にとって、このサービスがどのようなメリットをもたらすのか、料金体系や導入事例、そしてネット上の評判まで、幅広くリサーチした結果をお伝えいたします。

結論:「in the HOTEL」は宿泊業界の人材課題を本質から解決する画期的サービス

最初に結論から申し上げますと、「in the HOTEL」は宿泊業界が長年抱えてきた人材不足・早期離職・採用ミスマッチという三重苦に対して、従来の人材サービスとは一線を画したアプローチで挑む革新的な採用支援サービスと言えるようです。2023年に設立されたばかりの若い企業ながら、わずか約1年半で導入施設数が1000施設を突破するなど、急速に宿泊業界での存在感を高めています。

特筆すべきは、完全成果報酬型で初期費用がかからないという料金体系、そして単なる人材紹介にとどまらず、各施設の「想いや文化」を発信することで共感ベースのマッチングを実現している点です。従来の人材紹介料金の1/2~1/3程度のコストで、採用業務の工数を80%削減できると謳われており、これは人手不足に悩む宿泊施設にとって大きな魅力となっているようです。

株式会社Haginoとは?創業者・坪井悠起氏の想い

「in the HOTEL」を理解するうえで、まず運営会社である株式会社Haginoについて詳しく見ていきましょう。

会社概要

株式会社Haginoは2023年7月に設立された、東京都千代田区に本社を構えるスタートアップ企業です。代表取締役CEOを務めるのは坪井悠起(つぼいゆうき)氏で、驚くべきことに彼は2001年生まれ、立教大学経済学部に在学中に起業したとのことです。

創業の原体験

坪井氏が宿泊業界に深い愛着を持つようになったきっかけは、お母様の存在だと言われています。お母様は高級ホテルの代名詞的存在であるパークハイアット東京に勤務されており、幼少期から母の同僚や上司の方々と接する機会が多かったそうです。「母を含め、お会いする方々はみんながキラキラしていて、いつもホテルの話を楽しそうに話していた」と坪井氏は語っています。

しかし、「ホテル業界に行きたい」と話した際、意外にも全否定されたとのこと。「好きじゃないと、やっていけない」という言葉には、他業界と比べて必ずしも恵まれた労働環境・条件ではないという現実が込められていたようです。この体験が、坪井氏に「宿泊業界を憧れの業界にしたい」という強い想いを抱かせ、Hagino創業へとつながったと考えられます。

資金調達の実績

2025年1月、Haginoはシードラウンドで総額6000万円の資金調達を実施しました。リード投資家には「アニマルスピリッツ」の朝倉祐介氏が名を連ね、他にも「ANOBAKA」「OASIS FUND」などのベンチャーキャピタルや個人投資家からの出資を受けています。

朝倉氏は坪井氏について「観光業に日本で一番詳しい若者だと言い切っていた。観光というジャンルで意気込んでいるパッションのある若者がいるなと思った」と印象を語っており、その後の事業進捗を見て出資を決めたとのことです。

宿泊業界が抱える深刻な人材課題

「in the HOTEL」がなぜ注目を集めているのかを理解するためには、宿泊業界が直面している人材課題の深刻さを知る必要があります。

圧倒的な人手不足

厚生労働省の発表によると、宿泊業の有効求人倍率は3.27倍(令和5年)と、全業種平均の1.19倍を大幅に上回っています。これは1人の求職者に対して約3件の求人が採用を競い合っている状態であり、求人を出しても応募が集まらない状況が常態化していることを示しています。

帝国データバンクの調査によれば、旅館・ホテルの人手不足の割合は正規・非正規社員ともに5割超に達しており、フロントや調理スタッフなどの確保が間に合わず、客室稼働率を制限するケースも報告されているようです。

高い離職率

さらに深刻なのが離職率です。厚生労働省の「雇用動向調査」(令和5年)によると、宿泊業・飲食サービス業の離職率は26.6%で、全産業平均の15.4%と比較して約1.7倍という突出した高さとなっています。これは4人に1人が年間で職場を離れる計算となり、採用しても定着しないという悪循環が続いていることを示しています。

早期離職の主因:入社前後のギャップ

高い離職率の主な原因として指摘されているのが、入社前の期待と入社後の現実とのギャップ(リアリティショック)です。ホテル業界への就職を志す多くの候補者は、「おもてなしの心」や「ゲストを笑顔にする喜び」といったポジティブで華やかなイメージを抱いています。しかし、実際の現場業務は長時間労働や不規則なシフト、クレーム対応など、想像を絶する厳しさがあるとされています。

このミスマッチを解消するための考え方として注目されているのが「RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示)」という採用理論です。採用時に仕事の良い面だけでなく厳しい面も含めた現実的な情報を提供することで、入社後のギャップを最小限に抑え、結果として離職率を下げることができるとされています。

採用コストの高騰

一般的な人材紹介サービスの手数料相場は、初年度の理論年収の30~35%と言われています。例えば年収350万円の人材を採用した場合、手数料は約100万円以上かかる計算になります。人手不足が深刻な宿泊業界では、こうした高額な採用コストが経営を圧迫する要因となっているようです。

「in the HOTEL」のサービス概要

こうした宿泊業界の課題を解決するために生まれたのが「in the HOTEL」です。従来の採用サービスとはどのように異なるのか、詳しく見ていきましょう。

サービスの特徴

「in the HOTEL」は、宿泊産業に特化した採用支援サービスとして、以下の特徴を持っています。

1. 業界特化型のプラットフォーム

ホテル・旅館に特化することで、業界の実情を深く理解した上でのマッチングが可能となっています。フロント、調理、サービス、清掃など、宿泊施設特有の職種に対応した求人設計が行われているようです。

2. 「想いや文化」を軸にした採用導線

従来の採用サービスでは、給与や勤務条件といったスペック情報が中心でしたが、「in the HOTEL」では各施設の世界観・就業実態を応募前に伝える導線を設計し、共感ベースの応募・入職を実現しているとのことです。

3. 採用広報の内製支援

写真・テキスト・ストーリー設計を通じて、施設の魅力を発信するコンテンツ作成をサポートしています。これにより、従来の宿泊業界志望者だけでなく、業界外や潜在的な候補者にも効果的にリーチできるようになっているようです。

4. テクノロジーを活用した業務効率化

宿泊施設の採用担当者の負担を最小限に抑えるサービス設計がなされており、採用業務の工数を80%削減できるとされています。

料金体系

「in the HOTEL」の大きな特徴の一つが、完全成果報酬型の料金体系です。

  • 初期費用:無料
  • 掲載費用:無料
  • 採用成功時のみ費用発生

具体的な手数料率は公開されていませんが、人材紹介の1/2~1/3のコストで採用を実現できると謳われています。一般的な人材紹介の手数料が理論年収の30~35%であることを考えると、10~17%程度の手数料率になる可能性があります。この料金設定は、採用コストに悩む宿泊施設にとって非常に魅力的と言えるでしょう。

対応職種

「in the HOTEL」では、宿泊施設で必要とされる幅広い職種に対応しているようです。

  • フロント(チェックイン・アウト、予約管理、案内業務など)
  • 調理(和食、洋食、調理補助、キッチンマネージャー、料理長など)
  • サービス(レストラン、宴会、ホールスタッフなど)
  • マルチタスク(フロントとサービス業務の兼務など)
  • 清掃(ハウスキーピング)
  • 管理職(総支配人、マネージャーなど)

導入事例と実績

「in the HOTEL」の導入実績について、公開されている情報をもとに整理してみましょう。

導入施設数の推移

  • 2024年~2025年初頭:サービス開始からわずか4ヶ月で200施設以上の導入実績
  • 2025年9月:導入施設数が500施設を突破
  • 2025年12月:導入施設数が1000施設を突破

約1年半で1000施設という成長スピードは、宿泊業界における「in the HOTEL」への期待の高さを物語っているようです。

主な導入企業

公開情報によれば、以下のような企業への導入実績があるとされています。

  • 相鉄ホテルマネジメント
  • オリックスホテルマネジメント

これらは宿泊業界では知名度の高い企業であり、大手が導入していることは「in the HOTEL」の信頼性を裏付ける一つの要素と考えられます。

Nazunaとの「体験型採用モデル」

特に注目すべき導入事例として、京都の町屋旅館ブランド「Nazuna」との連携があります。

これは「体験一体型採用モデル」と呼ばれる革新的な採用手法で、求職者がNazunaの宿泊施設に無料で宿泊体験し、その世界観や哲学に触れた上で現場スタッフとの面談に進むというものです。

この取り組みの背景には、宿泊業界の離職率26.6%という深刻な状況があります。入社前に抱く華やかなイメージと、入社後の厳しい現実とのギャップが早期離職の大きな原因とされる中、仕事を”知る”前に”感じる”ことから始める新しい採用スタイルが注目を集めているのです。

これはまさに前述した「RJP理論」を実践する取り組みであり、求職者自身がサービスや空間の魅力を体感することで、自発的なエントリーを促し、入社後のミスマッチを最小限に抑えることを目指しているとのことです。

利用者の声

公開されている情報によると、あるリゾートホテルの担当者からは次のようなコメントが寄せられているようです。

「フロント業務と採用業務の両立が難しく、in the HOTELに支援を依頼した結果、短期間で必要な人材を確保できた。『もう1人の採用担当』として、私の代わりに手となり足となり動いていただけるのはとても助かる」

このコメントからは、採用業務の工数削減という「in the HOTEL」の強みが実感されている様子がうかがえます。

「in the HOTEL」のメリット(良い点)

ここからは、「in the HOTEL」を利用するメリットについて、より詳しく解説していきましょう。

メリット1:初期費用ゼロのリスクフリー導入

最大のメリットは、やはり完全成果報酬型で初期費用がかからない点です。採用が成功するまで費用が発生しないため、資金に限りがある中小規模の宿泊施設でも安心して導入を検討できます。

従来の求人広告では、掲載しても応募がなければ費用が無駄になってしまうリスクがありましたが、「in the HOTEL」ではそのリスクを回避できるのは大きな利点と言えるでしょう。

メリット2:採用コストの大幅削減

人材紹介の1/2~1/3のコストで採用を実現できるという点も、経営面で大きなメリットとなります。人手不足が深刻な宿泊業界では、採用活動にかかるコストは経営を圧迫する大きな要因となっています。

例えば、年収350万円の人材を一般的な人材紹介サービス(手数料35%)で採用した場合、約122万円の手数料がかかりますが、「in the HOTEL」では40~60万円程度で済む可能性があります(手数料率が12~17%の場合の推定)。

メリット3:採用業務の工数削減

採用業務の工数を80%削減できるという点も見逃せません。宿泊施設では、フロント担当者が採用業務も兼務しているケースが多く、本来の業務に集中できないという課題がありました。

「in the HOTEL」では、求人要件の設計から候補者とのコミュニケーション、面談・内定プロセスの最適化まで一気通貫でサポートするため、施設側の負担を大幅に軽減できるとされています。

メリット4:質の高いマッチング

「想いや文化」を軸にした採用導線により、単なるスキルマッチングではなく、共感ベースのマッチングが実現されています。これにより、入社後のミスマッチによる早期離職を防ぎ、定着率の向上が期待できます。

特に、施設の世界観や就業実態を応募前に詳しく伝える工夫がなされているため、「思っていたのと違った」という離職理由を減らすことができるようです。

メリット5:若手優秀層・業界経験者へのリーチ

「in the HOTEL」には、20代30代の業界経験者など即戦力人材が多く登録しているとのことです。また、独自の集客手法により、地域人材や全国転勤可能人材の確保も実現しているようです。

これは、人材確保に苦しむ地方の宿泊施設にとって特に大きなメリットと言えるでしょう。

メリット6:業界を理解したサポート

Haginoは宿泊業界に特化したスタートアップであり、業界の課題や特性を深く理解した上でサービスを提供しています。代表の坪井氏自身が「観光オタク」を自認するほど業界への愛着があり、その想いがサービス全体に反映されていると考えられます。

おすすめしたい方

以上のメリットを踏まえると、「in the HOTEL」は以下のような方に特におすすめできると言えるでしょう。

  • 採用コストを抑えたい中小規模のホテル・旅館
  • 採用業務に時間を割けない少人数体制の施設
  • 若手人材を積極的に採用したい施設
  • 早期離職に悩んでいる施設
  • 施設の魅力を発信して差別化したい施設
  • 地方で人材確保に苦労している施設

「in the HOTEL」のデメリット(悪い点)と注意点

一方で、どんなサービスにもデメリットや注意すべき点はあります。ここでは、考えられる課題や欠点について正直にお伝えします。

デメリット1:設立間もない企業であること

株式会社Haginoは2023年設立のまだ若い企業です。急成長を遂げているとはいえ、大手の人材紹介会社と比較すると実績の蓄積という面では発展途上と言えるかもしれません。

長年の信頼関係を重視する施設にとっては、この点が懸念材料となる可能性があります。

デメリット2:料金体系の詳細が非公開

具体的な手数料率が公開されていない点は、導入を検討する施設にとって判断材料が少ないと感じられるかもしれません。「人材紹介の1/2~1/3のコスト」という表現はありますが、実際の金額は問い合わせてみないとわからないようです。

デメリット3:全国展開の途上

急速に導入施設数を伸ばしているとはいえ、まだ全国展開の途上にあると考えられます。地域によっては求職者の登録数が十分でない可能性があり、希望する人材を確保できるかどうかは地域差があるかもしれません。

デメリット4:オンライン完結型ではない可能性

Haginoのインターン募集情報によると、「オフィス出社可能な方」が条件となっているなど、対面でのコミュニケーションを重視する企業風土がうかがえます。これは丁寧なサポートにつながる一方で、フルオンラインでの対応を期待する施設には合わない可能性があります。

デメリット5:成果報酬型の留意点

成果報酬型は初期費用がかからないメリットがある反面、採用が成功した場合の費用は必ず発生します。極端に採用コストを抑えたい場合は、自社での採用活動(採用サイト構築、SNS活用など)のほうが長期的にはコストを抑えられる可能性もあります。

おすすめしない方

以下のような方には、「in the HOTEL」以外の選択肢も検討されることをおすすめします。

  • 大手で実績豊富な人材紹介会社を希望する施設
  • 採用コストを完全にゼロにしたい施設(ハローワークなどの活用を検討)
  • 即日で大量採用が必要な緊急性の高い施設
  • すでに自社で効果的な採用体制を構築できている施設

求職者視点での「in the HOTEL」の活用法

ここまで施設側(採用側)の視点でお伝えしてきましたが、求職者側にとっても「in the HOTEL」は魅力的なサービスとなっているようです。

求職者にとってのメリット

1. 施設の「リアル」がわかる

一般的な求人サイトでは、給与や勤務条件といった表面的な情報しか得られないことが多いですが、「in the HOTEL」では各施設の想いや文化、働く人々の魅力が発信されているため、自分に合った職場かどうかを事前に判断しやすくなっています。

2. ミスマッチを防げる

入社前後のギャップは、求職者にとっても「こんなはずじゃなかった」というストレスになります。「in the HOTEL」の共感ベースのマッチングにより、自分の価値観に合った職場と出会える可能性が高まるようです。

3. 体験型採用の機会

Nazunaとの連携で実施されている「体験一体型採用モデル」のように、実際に宿泊体験してから応募を検討できる機会が提供されているケースもあります。これは求職者にとって非常に貴重な機会と言えるでしょう。

利用方法

「in the HOTEL」の公式サイト(https://inthehotel.jp/)にアクセスすると、様々な求人情報が掲載されています。興味のある求人に応募することで、サービスを利用開始できるようです。

Q&A:よくある質問と回答

ここでは、「in the HOTEL」についてよく寄せられそうな質問に対して、収集した情報をもとにお答えします。

Q1:in the HOTELは無料で利用できますか?

A:施設側(採用側)は、初期費用・掲載費用は無料です。採用が成功した場合のみ、成果報酬として費用が発生する仕組みとなっているようです。求職者側は完全無料で利用できると考えられます。

Q2:どのような職種に対応していますか?

A:フロント、調理(和食・洋食)、サービス、清掃(ハウスキーピング)、マルチタスク、管理職など、宿泊施設で必要とされる幅広い職種に対応しています

Q3:地方の宿泊施設でも利用できますか?

A:全国のホテル・旅館への展開を進めているとのことです。独自の集客手法により地域人材の確保にも取り組んでいるようですが、地域によっては求職者数に差がある可能性があります。

Q4:株式会社Haginoはどんな会社ですか?

A:2023年設立、東京都千代田区に本社を構えるスタートアップ企業です。代表の坪井悠起氏は立教大学経済学部在学中に起業した若手経営者で、2025年1月にはシードラウンドで6000万円の資金調達を実施しています

Q5:他の宿泊業界向け人材サービスと何が違いますか?

A:最大の違いは、「想いや文化」を軸にした共感ベースのマッチングを実現している点です。単なる条件マッチングではなく、施設のカルチャーや働く人の魅力を発信することで、入社後のミスマッチを防ぎ、定着率向上を目指しています

Q6:導入実績はどのくらいありますか?

A:2025年12月時点で、導入施設数は1000施設を突破したとのことです。相鉄ホテルマネジメント、オリックスホテルマネジメントなど、大手の導入実績もあるようです

Q7:採用コストはどのくらい削減できますか?

A:人材紹介の1/2~1/3のコストで採用を実現できると謳われています。一般的な人材紹介の手数料が理論年収の30~35%であることを考えると、大幅なコスト削減が期待できます

Q8:採用業務の工数はどのくらい削減できますか?

A:採用業務の工数を80%削減できるとされています。求人要件の設計から候補者コミュニケーション、面談・内定プロセスの最適化までを一気通貫でサポートしてくれるため、施設側の負担が大幅に軽減されるようです

【コラム】宿泊業界で使われる隠語・専門用語を知っていますか?

トラベルライターとして様々な宿泊施設を取材してきた私TAKAですが、ホテルや旅館の現場では独特の隠語や業界用語が飛び交っています。「in the HOTEL」で宿泊業界への就職を考えている方、あるいは業界に興味がある方のために、いくつかご紹介しましょう。

「お化け」って何?

宿泊業界で「お化けが出た!」と言われたら、幽霊が出たわけではありません。これは予約していないにもかかわらず「予約した」と言ってホテルを訪れるお客様のことを指す隠語です。

フロント担当者にとっては、突然現れるという意味で「お化け」と呼ばれるようになったのでしょう。予約システムの確認や他のスタッフへの連絡など、現場は一気に緊張状態になります。まさに予測不能な「出現」という点で、ぴったりのネーミングかもしれません。

「スキッパー」とは?

「スキッパー」は、宿泊料やレストラン代金などを未払いのまま逃げてしまう人を指します。英語の「skipper(急いで逃げる)」に由来する言葉です。

きちんと予約をして宿泊し、ホテル内のレストランで食事をし、高めのお酒も飲んだ上でチェックアウトせずに消えてしまう用意周到なスキッパーもいるそうで、デポジット(預かり金)を取っていないホテルにとっては大打撃となります。

「ターンオーバー」の意味

「ターンオーバー」という言葉は、売上高や入れ替わりを意味しますが、宿泊業界では離職率を指す場合もあります。

宿泊業界の離職率26.6%という数字を考えると、この言葉が日常的に使われている現場の状況が想像できます。「in the HOTEL」のようなサービスが注目される背景には、こうした高いターンオーバー(離職率)への危機感があるのでしょう。

「タヌキ」って?

これは主に旅館で使われる隠語で、夕食なしの素泊まり客のことを指します。「夕食」の「夕」がカタカナの「タ」に見えることから生まれた言葉だと言われています。

ユーモアを感じる由来ですが、現場では素泊まりか食事付きかで準備が大きく異なるため、重要な区分けとなっています。

「ホテリエ」の本当の意味

「ホテリエ」という言葉は、最近ではホテルで働く人全般を指すことが多いですが、本来の意味はホテルの経営者や事業家、最高責任者を指す言葉です。

フランス語の「hôtelier」に由来し、中世ヨーロッパで旅人や商人に宿泊を提供していた宿屋の経営者を指していたとのこと。現代では、星野リゾートの星野佳路氏のような、業界を牽引する経営者が「ホテリエ」の代表格として挙げられます。

「in the HOTEL」を通じて宿泊業界に飛び込もうとしている皆さんも、いつかは「ホテリエ」として業界を牽引する存在になるかもしれません。

トラベルライターTAKAの独自考察

最後に、私TAKAなりの視点で「in the HOTEL」と宿泊業界の未来について考察してみたいと思います。

宿泊業界の人材課題は「構造的問題」

私がこれまで多くの宿泊施設を取材してきた中で感じるのは、宿泊業界の人材課題は単なる「人手不足」ではなく、業界の構造そのものに起因する問題だということです。

低賃金、長時間労働、不規則なシフト、キャリアパスの不透明さ——これらの課題は一朝一夕には解決できません。しかし、「in the HOTEL」のようなサービスが登場し、「宿泊業界を憧れの業界にする」というビジョンを掲げて事業を展開していることは、業界にとって一筋の光明と言えるのではないでしょうか。

「共感採用」という新しいパラダイム

従来の採用活動は、給与や勤務条件といった「スペックマッチング」が中心でした。しかし、それだけでは入社後のミスマッチを防ぐことはできません。

「in the HOTEL」が提唱する「想いや文化を軸にした採用」は、まさに「共感採用」という新しいパラダイムを示しているように思います。求職者が施設のカルチャーや価値観に共感した上で入社することで、仮に労働条件が厳しくても「この施設で働きたい」というモチベーションを維持できる可能性があります。

これは、Nazunaとの「体験型採用モデル」にも表れています。実際に宿泊体験をしてから応募を検討するという手法は、従来の採用の常識を覆すものであり、RJP理論を最も純粋な形で実践していると言えるでしょう。

学生起業家の挑戦が持つ意味

株式会社Haginoの代表・坪井悠起氏は、大学在学中に起業した若手経営者です。彼のような「業界の外側から来た人間」が、業界の課題に新しい視点で挑戦することには大きな意味があると考えます。

レガシー産業と言われる宿泊業界では、長年の慣習や固定観念が変革を阻むことがあります。しかし、坪井氏のように業界を心から愛しながらも、その「当たり前」に挑戦する姿勢は、業界全体に新しい風を吹き込む可能性を秘めています。

もちろん、スタートアップならではの課題もあるでしょう。資金力や人員、実績の蓄積という面では大手には及びません。しかし、スピード感と柔軟性というスタートアップの強みを活かし、急速に導入施設数を伸ばしている現状を見ると、今後の成長に期待が持てます。

インバウンド6000万人時代に向けて

日本政府は2030年までに訪日外国人6000万人という目標を掲げています。しかし、その受け皿となる宿泊施設で人材が確保できなければ、この目標は絵に描いた餅に終わってしまいます。

「in the HOTEL」のようなサービスが成長し、宿泊業界の人材課題解決に貢献することは、日本の観光立国戦略全体にとっても重要な意味を持っています。個人的には、坪井氏が語る「観光が日常化した未来のインフラを作る」というビジョンに、大いに共感するところです。

結び:宿泊業界の未来は明るいか?

正直に申し上げると、宿泊業界が抱える課題は一つのサービスで解決できるほど単純なものではありません。賃金水準の改善、労働環境の整備、キャリアパスの明確化——これらは業界全体で取り組むべきテーマです。

しかし、「in the HOTEL」のような革新的なサービスの登場、そしてそれを支持する多くの宿泊施設の存在は、業界が変わろうとしている兆しだと私は捉えています。

人は「人」に惹かれます。宿泊業界は、まさに「人」が価値の源泉となっている産業です。その「人」を大切にし、適切なマッチングを実現することで、業界全体が活性化していく——そんな未来を「in the HOTEL」が切り拓いてくれることを期待しています。

旅を愛するすべての人のために、そして宿泊業界で働くすべての人のために、「in the HOTEL」の今後の発展を見守っていきたいと思います。

公式サイトはこちら