アーバネット、旧軽井沢でタイムシェア別荘用地を取得―富裕層リゾート戦略が本格始動
株式会社アーバネットコーポレーション(東京都千代田区)は2025年7月、長野県軽井沢町旧軽井沢エリアでタイムシェア別荘開発を視野に入れた土地を取得したと発表しました。同社は同月公表の資料「三井不動産投資顧問とのパイプライン・サポート基本協定締結のお知らせ」の中で、リゾート開発を新たな成長ドライバーに掲げており、北海道ニセコに続く第2弾として旧軽井沢を選定した格好です。今回取得した用地面積は非公表ですが、旧軽井沢銀座から車で約5分の閑静な別荘地に位置し、タイムシェア別荘3〜4棟とクラブハウス棟を想定しています。
取得の背景:リゾート開発へ舵を切るアーバネット
同社はワンルームマンション「アジールコート」シリーズで知られる都市型デベロッパーですが、中期計画「CHALLENGE 2028」で「リゾート・宿泊事業の多角化」を掲げました。2025年7月の業界紙記事「ニセコひらふでリゾート開発/富裕層向け新事業を展開」では、ニセコひらふに続いて軽井沢でも用地確保を進める方針が示されており、今回の取得はその具体化となります。都市部で培った高収益型開発ノウハウをリゾートへ転用し、国内外富裕層の需要を取り込む狙いです。
旧軽井沢の市場環境:地価は安定的に上昇
国土交通省の令和7年(2025年)地価公示によれば、旧軽井沢周辺の住宅地は5年間で約1.5倍に上昇し、リゾート地の中でも安定性が際立っています(株式会社アセンドホーム プレスリリース)。皇室ゆかりの歴史や成熟したインフラが評価され、短期的な価格変動が相対的に小さい点が投資家から支持を集めています。用地仕入れコストは高いものの、長期で見れば資産価値とブランド力を担保しやすいマーケットと言えます。
タイムシェア別荘とは何か
タイムシェア別荘は、1戸当たりの所有権を複数オーナーで等分し、年間一定日数を占有する仕組みです。旧軽井沢では「Club Orbit」シリーズ(所有権型、年間15泊)など先行事例が複数存在し、維持費を抑えながら資産として保有できる点が支持されています。アーバネットの計画は、1口7日〜15日の占有権と、法人・海外投資家向けの転貸スキームを組み合わせたハイブリッド型となる見込みです。
- 所有権登記可:資産計上・相続対策が可能
- ホテル運営会社による管理:オーナーの負担軽減
- 転貸時の収益還元:稼働率60%想定で表面利回り2〜3%
開発概要(2025年7月時点計画)
- 所在地:長野県北佐久郡軽井沢町旧軽井沢字愛宕山(地番非公表)
- 敷地面積:約4,500㎡(予想)
- 構成:木造またはRC造2階建てヴィラ3棟+クラブハウス1棟
- 総販売口数:144口(1棟48口、1口7泊想定)
- 竣工予定:2027年秋
※面積・口数などは開示準備中につき、今後変更される可能性があります。
競合案件との比較
軽井沢ではカトープレジャーG「GLAMDAY STYLE」や東急リゾーツ&ステイの会員制施設などが先行していますが、多くは会員権型で所有権が伴いません。アーバネットは都市型投資マンションで実績のある賃貸・転貸スキームを導入し、稼働率次第でキャッシュフローも見込める点が差別化要因となりそうです。
地域経済への波及効果
旧軽井沢は観光シーズンの交通混雑や土地利用規制が課題ですが、アーバネットは事前協議で以下の地域連携策を掲げています。
- 建築物高さ10m以下・建蔽率20%遵守
- クラブハウスに地元食材を扱うレストランを併設
- 町内循環バスへの寄付とEVカーシェア導入
- 雨水浸透・集中浄化処理による環境負荷低減
こうした取り組みは、軽井沢町の景観・環境条例との整合性を図りつつ、観光消費の地域内循環を促すものです。
今後のスケジュールと注目ポイント
2026年春に建築確認取得、同年夏に着工、2027年秋竣工というスケジュールが示されています。販売は2026年初頭から都市圏の富裕層および海外投資家を対象に開始予定で、価格帯は1口1,800万〜2,200万円が想定レンジです。ニセコ案件との相乗効果で、リゾートポートフォリオをどこまで拡大できるかが今後の焦点となります。









