NOT A HOTEL株式会社が新たに発表した新しいホテルブランド「HERITAGE」と「vertex」とは? メリットやデメリットなどHOTTELの記者がわかりやすく解説
旅行系WEBメディア「HOTTEL」に記事を書くトラベルライター“TAKA”です、今回のテーマは、NOT A HOTEL株式会社が新たに発表したホテルブランド「HERITAGE(ヘリテージ)」と「vertex(バーテックス)」という、旅好きのあいだでさっそく話題になりつつある新しい宿泊サービスだ。
「別荘?ホテル?結局これは何なのか」「これまでのNOT A HOTELと何が違うのか」「一般ゲストでも泊まれるのか」「価格帯やメリット・デメリットは?」――こうした疑問がSNSや旅行業界でささやかれ始めているタイミングと言える。
この記事では、公開されている公式情報や各種ニュース、既存のNOT A HOTELの事例を丹念に読み解きつつ、トラベルライターTAKAの視点から、この2つの新ブランドの“真の狙い”や、旅人にとっての利点・欠点、どんな人におすすめできるのか、逆におすすめしないのはどんな層かまで、推測も交えながら詳しく整理していく。
結論:HERITAGEは「歴史建築を未来へつなぐ寺院・美術館系ホテル」、vertexは「未来建築×沖縄の超ラグジュアリーヴィラ」になる見込み
まず結論から整理すると、現時点で見えている全体像は次のようなものだと言えそうだ。
- HERITAGE by NOT A HOTEL
寺院や美術館などの歴史的建築物を、現代の感性でリノベーションし、文化財保全と収益性を両立させる“歴史系ラグジュアリーホテルシリーズ”という位置づけのようだ。 第一弾は世界遺産・京都「東寺(教王護国寺)」境内にある、かつての宿坊をホテルとして再生するプロジェクトから始まると発表されている。 - vertex by NOT A HOTEL
建築・テクノロジー・デザインなど、最先端の要素を掛け合わせて「未来の暮らし」を具現化する“フューチャリスティックなホテルシリーズ”としてスタートするようだ。 第一弾は沖縄の海と森に囲まれた敷地に、世界的建築事務所「Zaha Hadid Architects(ZHA)」が日本で初めて手掛けるホテルとして計画されている。
押さえておきたい重要ポイントは次の3つだ。
- NOT A HOTELとしては初めて「オーナー以外」も利用できる、一般ゲスト向けホテルブランドであること
これまでNOT A HOTELは「世界中にあなたの家を」というコンセプトのもと、年間10泊単位で所有権をシェア購入する“別荘×ホテル”モデルが中心だったが、HERITAGEとvertexについては、オーナーでなくとも宿泊できるホテルとして展開されると明言されている。 - 第1弾の具体的な対象施設は、京都・東寺の宿坊と、沖縄のZHA設計ヴィラ型ホテルであること
京都側は「宿坊リノベーション型のプライベート性の高い宿」になると見られ、沖縄側は「全ヴィラ・オーシャンビュー、段状キャノピーを持つ超ラグジュアリーなヴィラリゾート」になると説明されている。 - 開業時期や宿泊料金の詳細は、現時点では“今後発表”とされていること
公式なプレスリリースでは、どちらのブランドも「開業予定時期など、今後の詳細は随時発表」とされており、本記事執筆時点では予約開始時期や客室数、具体的なレートは明らかになっていない。
総じて、HERITAGEとvertexは、従来の高額なシェア別荘としてのNOT A HOTELを「遠くから眺めるだけだった人たち」にも、部分的に門戸を開く役割を果たす、新世代のラグジュアリーホテルブランドと位置づけられそうだ。
一方で、建築家の顔ぶれやロケーション、既存プロジェクトの価格帯などから考えると、宿泊単価はかなり高級なレンジになると言われており、万人向けというよりは「建築や文化体験にお金を投じる旅人」向けの尖った選択肢になる可能性が高いと考えられている。
そもそもNOT A HOTELとは? 今回の2ブランドで何が変わるのか
「世界中にあなたの家を」というコンセプト
NOT A HOTELは、2020年設立の日本発ホスピタリティ企業で、「世界中にあなたの家を」をコンセプトに、世界的建築家・クリエイターと組んだハイエンドな別荘を、シェア購入型で提供してきたブランドだ。
特徴的なのは、従来の“1棟丸ごと別荘購入”ではなく、年間10泊単位からの所有権シェアという形をとっている点だ。 購入したハウスは資産として保有でき、売却や相続も可能で、さらに自分が所有していない他拠点のNOT A HOTELもネットワークを通じて相互利用できる仕組みが整えられている。
実際に展開されている代表的なハウスとしては、例えば次のようなものが挙げられる。
- 建築家・藤本壮介が設計した石垣島の円形ヴィラ「EARTH」
3000坪の敷地にわずか一棟だけ建つフラッグシップで、インフィニティプールや“海底サウナ”的な演出を持つサウナ空間など、極めて実験的な設計が話題を呼んでいる。 - ルスツリゾートの山頂に建つスノヘッタ設計の「NOT A HOTEL RUSUTSU」
天文学の「天頂」概念から着想を得た建築で、山頂のランドスケープと一体化したデザインが語られている。
価格帯としては、数千万円から数億円クラスのハウスが並んでおり、従来はあくまで「富裕層が所有する別荘」という側面が強かったと言われている。
今回のHERITAGE / vertexがもたらす転換点
こうした背景を踏まえると、今回のHERITAGE/vertexの発表で最も大きな変化は、「NOT A HOTELが、所有者ではない一般のゲストにも扉を開き始めた」という点だろう。
プレスリリースでは、これまで主にオーナー向けのシェア型別荘を展開してきたが、HERITAGEとvertexの2ブランドについては、一般の方も利用できるホテルとして新たにスタートすると明記されている。
つまり今後は、
- 「別荘としてのNOT A HOTEL(オーナー向けシェア物件)」
- 「ホテルとしてのNOT A HOTEL(HERITAGE / vertexなど一般ゲスト向け)」
という二層構造になっていく可能性が高いと言える。
この転換は、日本のラグジュアリートラベル市場においても、それなりに大きなインパクトを持つ動きと受け止められている。
なぜなら、これまで建築好きを中心に「憧れの存在」だったNOT A HOTELの世界観が、少なくとも一部については、“泊まるだけのゲスト”にも解放されるからだ。
HERITAGE by NOT A HOTELとは何か
寺院・美術館など「歴史的建築物」に泊まり、その収益で文化財を守るホテルシリーズ
HERITAGEは、「伝統と歴史を未来へつなぐ」ことをテーマにしたホテルブランドとして位置づけられている。
公式の説明を整理すると、HERITAGEの核となるコンセプトは次のようなものだと言われている。
- 対象は、寺院・美術館・歴史的ビル・町家などの歴史的建築物や文化財級の建物。
- それらを単に保存するのではなく、泊まり・集い・体験する“現代的なホテル空間”として再解釈する。
- ホテルとして生み出された収益を、修復・保全費用として循環させる仕組みを取り入れ、建築や地域文化の持続可能な未来を支えることを目指す。
特に、京都市の調査で京町家の約11.7%がわずか7年で消失しているというデータが引用されており、文化的建築ストックの“静かな危機”に対する一つの解としてHERITAGEが構想されているようだ。
旅行者の感覚に引き寄せて言い換えるなら、
「泊まる」という行為そのものが、歴史的建造物の維持・継承に直接つながるホテル
というイメージに近いと言える。
第1弾は世界遺産・京都「東寺」内の旧宿坊リノベーション
HERITAGEのシリーズ第一弾として発表されたのが、世界遺産・京都 東寺(教王護国寺)の境内にある、かつての宿坊をホテルにリノベーションするプロジェクトだ。
公開されている情報から読み取れるポイントを整理すると、
- 場所:世界遺産である東寺の境内に位置する旧宿坊
- 建物の性格:もともと僧や巡礼者が身を休めていた場所を、現代の巡礼者=旅行者が心を落ち着けるホテルとして再構成するというストーリーが語られている。
- デザイン方針:京都の伝統に根ざしつつ、現代の空間として織り上げることで、「建築そのものが時を超える作品としてよみがえる」と説明されている。
客室数や具体的な間取りなどはまだ公表されていないが、宿坊という性格上、
- 規模は少室数のプライベート性の高い宿になりやすいこと
- 庭園越しに五重塔などの景観を望める客室も計画されているとのSNS上の発信があること
などから、いわゆる大規模ホテルというよりは、建築と景観をじっくり味わう“デスティネーション型ブティックホテル”のような形になると推測されている。
宿泊体験はどうなる? サービス像を既存事例から推測
現時点で、HERITAGE京都・東寺のサービス詳細は明らかではないが、「NOT A HOTELが関わる宿泊体験」という文脈から、ある程度の方向性は見えてくる。
既存のNOT A HOTEL各施設では、次のような要素が共通して重視されているようだ。
- 世界的建築家による、コンセプトドリブンな建築デザイン
- 広々としたリビングダイニングとプライベートプール、サウナなど、“暮らすように滞在できる”別荘型の空間構成
- タブレットを通じて照明・ブラインド・空調などを一括操作できる、IoTベースのスマートホーム的な快適性
- オーナー利用/ゲスト利用を両立させるための運営オペレーション
こうした傾向から、HERITAGE京都・東寺でも、
- 外観・構造は歴史的建造物の意匠を極力尊重しつつ、
- 室内は、ミニマルながらも最新の空調・照明・音響・ベッドシステムを組み合わせた“現代的な座敷リビング”のような空間に仕立て、
- 共用部や庭園の眺望の中に、東寺の塔や伽藍が“借景”として自然に入り込む
といった、「歴史建築の中で、現代的な別荘ライフを静かに楽しむ」スタイルが想定されていると考えられる。
宗教施設の一部を活用することから、おそらく騒音や宴会的な利用にはかなり配慮が求められる一方で、静寂や瞑想的な時間を好む大人の旅人にとっては、他では得がたい体験になる可能性が高い。
HERITAGEの良い点・メリット・利点
HERITAGEの“良い点”“メリット”“利点”として、現時点で挙げられそうなポイントをまとめると、次のような方向性になる。
- 文化財保全に直接つながる滞在体験
宿泊料の一部が修復・保全費用として循環する仕組みが想定されており、泊まること自体が「未来への遺産づくり」に参加する行為になると説明されている。 - 世界遺産級のロケーションに“泊まる”という特権性
東寺の境内という希少なロケーションに、宿坊という形で実際に連泊できる機会は極めて限られており、一般的な観光ホテルとは一線を画す非日常性が期待されている。 - 歴史建築 × 現代デザインの“二重の楽しみ”
文化財建築の重厚な構えと、NOT A HOTELらしい洗練されたインテリア・ライフスタイル設計を一度に味わえるという点で、「建築好き」にとっては強い吸引力を持つと見られている。 - 少室数ゆえのプライベート感
宿坊という性格上、客室数は多くないと推測され、静かな庭と共に過ごすプライベートな時間を求めるカップルや少人数のグループには大きなメリットになりそうだ。
HERITAGEの悪い点・デメリット・欠点
一方で、HERITAGEならではの“悪い点”“デメリット”“欠点”として想定される点もある。
- 価格帯がかなり高額になる可能性
既存のNOT A HOTELの物件価格や、設計・ロケーションの希少性を踏まえると、宿泊単価もラグジュアリーホテルの中でも高めのレンジになると予想されており、コスト面では「誰にでもおすすめできる」とは言いにくい面がある。 - 宗教空間ならではの制約
寺院境内という場所柄、音楽イベントや深夜までの宴会、大人数のパーティーなど、騒がしい用途には向かないと考えられる。子ども連れのファミリーでにぎやかに過ごすよりは、大人同士で静かに滞在するスタイルに限定されがちという意味で、使い方の自由度には一定の制約があると言える。 - 予約の取りづらさ
少室数で話題性の高い宿となれば、週末や連休を中心に予約が集中し、オープン当初は「数カ月先までほぼ満室」といった状況も想定される。思い立ってすぐ行ける宿ではなく、「旅程を組んで狙い撃ちする」タイプになると見込まれている。
vertex by NOT A HOTELとは何か
最先端建築×テクノロジーで「未来の暮らし」を実験するホテルシリーズ
vertexは、「先進的なビジョンで未来をつくる」ことを掲げる、NOT A HOTELの“フューチャー寄り”のホテルブランドだと説明されている。
コンセプトの要点は次の通りと言われている。
- 建築・テクノロジー・デザインなど、あらゆる最先端領域が交差する場として設計する。
- まだ誰も体験したことのない未来のライフスタイルを実験する“ラボ的ホテル”と位置づけている。
- 宿泊者がそこで過ごす暮らし方の一つひとつが、「未来のスタンダード」を先取りする試みになることを目指している。
HERITAGEが「歴史建築の時間軸を未来につなぐホテル」だとすれば、vertexは「これから訪れる未来の暮らしを先取りして体験するホテル」と言い換えられそうだ。
第1弾は沖縄の海と熱帯林に寄り添う、Zaha Hadid Architects設計のヴィラ型ホテル
vertexブランドの第一弾として発表されているのが、沖縄の海と白砂のビーチ、森林に囲まれた敷地に建設される、ヴィラ型のラグジュアリーホテルだ。
最大のトピックは、設計を手掛けるのが、世界的な建築事務所 Zaha Hadid Architects(ZHA)であり、これが日本初のZHAによるホテルプロジェクトになると明示されている点だ。
公開されている情報を基に特徴を整理すると、次のような像が浮かび上がってくる。
- 全ヴィラ・オーシャンビュー & 高いプライバシー
敷地の地形を生かし、すべてのヴィラから遮るもののない海の眺望が得られるように配置しつつ、十分なプライバシーを確保する設計がなされていると説明されている。 - 段状キャノピーとテラスが、海岸線から熱帯雨林へ連続するランドスケープ
ホテルを象徴する段状キャノピーは、沖縄特有の海岸線の地質から熱帯雨林の植生へと連続するようデザインされ、海の眺望を妨げずに周囲の環境と深く一体化することを狙っていると言われる。 - 地形や風・日射を読み込んだ環境配慮設計
琉球石灰岩の輪郭を踏襲して段状テラスを構成し、年間を通じた気候・風・日射の詳細調査に基づき、自然換気の促進や景観の最適化を図るなど、環境負荷低減と快適性の両立が意識されている。 - 台風・地震に耐える構造と循環型建設
構造体は高潮線から6.5メートル以上の高さとし、台風や地震への耐性を確保。精密に製造されたコンクリート部材や再生骨材を用いることで、サステナブルな建設手法が取り入れられていると紹介されている。 - 沖縄の伝統建築の深い軒を現代的に再解釈
段状キャノピーは“深い軒”を持つ沖縄伝統建築の要素を現代的に解釈したものとされ、屋外と屋内の中間領域を豊かに作り出す設計が志向されている。
これらの情報から、vertex沖縄は典型的なビーチリゾートホテルというより、ランドスケープと一体化した“建築作品としてのヴィラリゾート”になるとみなされている。
旅行者にとっては、単に海を眺めるだけではなく、「海岸線から熱帯林へと連なる地形ごと体験する」ような宿泊体験が提供される可能性が高い。
宿泊体験のイメージ:既存NOT A HOTELの要素 × ZHAの未来建築
vertex沖縄の具体的な客室仕様やテクノロジーについてはまだ詳報がないが、既存のNOT A HOTELの別荘や、ZHAが世界各地で手掛けてきたホテル型プロジェクトの傾向を踏まえると、
- 広いリビングとダイニング、
- プライベートプールやジャグジー、
- サウナやスパに準じるウェルネス機能、
- 高度に統合されたスマートホーム機能(照明・空調・ブラインド・音響の一括制御)、
などが盛り込まれた“ヴィラ1棟=ひとつの小さな宇宙”的な空間になる可能性が高いと予想される。
さらにZHA側からは、「この地域に広がる多様な生態系を巡る“発見の旅”を描き出す」というコメントも出されており、単にリゾートで寛ぐだけでなく、敷地内外を回遊しながら自然や地形・植生を観察するような体験が意識されているようだ。
vertexの良い点・メリット・利点
vertexの“良い点”“メリット”“利点”として想定されるポイントを挙げると、次のような方向性になる。
- 世界初級の建築体験としての希少性
日本初のZaha Hadid Architectsによるホテルプロジェクトというだけで、建築好き・デザイン好きにとっては一度は泊まってみたくなる“目的地そのものがホテル”という存在になりうる。 - 全ヴィラ・オーシャンビュー & 高いプライバシー
敷地配置や段状キャノピーにより、眺望とプライバシーの両立が目指されているとされ、ハネムーンや記念日、プライベート重視のグループ旅行には大きなメリットになりそうだ。 - 環境配慮とラグジュアリーの両立
生態系保全や循環型建設など、サステナブルなアプローチが随所に組み込まれていると説明されており、環境意識の高い旅行者にとっては“罪悪感の少ないラグジュアリー”として選びやすい側面がある。 - NOT A HOTELのノウハウによる“暮らすような滞在”
既存別荘群で培った“長期滞在寄りの空間設計”やスマートホーム技術が活かされるとすれば、単なるリゾートホテルとしてではなく、1週間単位で滞在しても飽きないライフスタイル型の旅を楽しめる可能性がある。
vertexの悪い点・デメリット・欠点
一方で、vertexにも“悪い点”“デメリット”“欠点”となりうる側面がある。
- かなり高額な価格帯が予想される
世界的建築事務所に沖縄の一等地でのヴィラ設計を依頼し、環境配慮型の構造と最高水準のアメニティを備えるとなれば、宿泊単価は国内トップクラスのラグジュアリーレベルになると予想されている。 コスト感を重視する一般的な家族旅行には、おすすめしにくい価格帯になる可能性が高い。 - アクセスや周辺環境の制約
敷地は海と森に囲まれたロケーションとされており、車や送迎に頼る前提のアクセスになると考えられる。周辺に飲食店やコンビニが多いエリアではない可能性も高く、「歩いて街に出たい」タイプの旅人には不便と感じられるかもしれない。 - 自然環境ゆえの気候リスク
沖縄特有の台風シーズンや高湿度環境と隣り合わせであり、悪天候時には屋外テラスやプールが存分に楽しめないこともある。建物自体は高潮線から6.5m以上に設定され、台風耐性も考慮されているとされるが、旅程としてのリスクは残る。
開業時期・予約方法・料金イメージ(現時点の情報と推測)
開業時期:どちらも「今後発表」とされている
公式発表によると、HERITAGE京都・東寺、vertex沖縄ともに、開業予定時期や詳細は今後随時発表とされており、執筆時点では具体的なオープン日や予約開始日は示されていない。
CGパースやブランドサイトがすでに公開されていることから、少なくとも計画が相当程度進行している段階と考えられるが、建築確認や文化財関係の調整、環境アセスメントなど、時間を要するプロセスも多いため、実際の開業は数年スパンで見ておくのが妥当とみられている。
予約方法:オンライン直販中心の可能性が高い
既存のNOT A HOTELは、公式サイトを中心にシェア購入や利用申込の情報を提供しており、高価格帯の性格上、一般的なオンライン旅行代理店に大量に在庫を出すスタイルではない。
その流れを踏まえると、HERITAGE/vertexでも、
- 公式サイトからの直予約
- 一部、提携する会員制トラベルサービスやハイエンド旅行会社経由での手配
といったチャネル構成になる可能性が高いと予想される。
ただし、現時点では予約画面や料金プランは公開されておらず、今後の続報を待つ段階だと言える。
料金イメージ:ラグジュアリーホテルの中でも高めの水準と考えられる
料金に関して公式な数字は出ていないが、参考として、
- 既存のNOT A HOTELハウスの販売価格が数千万円〜数億円規模であり、
- 建築家やロケーションが世界的に見ても希少性の高いプロジェクトであること、
などから、宿泊単価は国内5つ星クラスホテル~超ラグジュアリーレベルに位置づけられる可能性が高いと見られている。
京都・東寺のHERITAGEについては、少室数・世界遺産内という希少性から、1泊あたり数十万円レンジの設定も十分ありうると推測されている。
vertex沖縄に関しては、ヴィラ1棟貸し+プライベートプールなどの仕様を前提に考えると、時期によっては1泊あたり数十万円〜場合によってはさらに上振れという見立てもある。
いずれにせよ、「価格重視でホテルを選ぶ」層におすすめしやすい宿ではないと考えられる一方で、特別な記念旅行や建築巡礼としての滞在には、唯一無二の選択肢になりうると言えそうだ。
「HERITAGE / vertexはどんな人におすすめか / おすすめしないか」
おすすめしたい人(良い点を生かせるタイプ)
HERITAGEとvertexの良い点・メリットを踏まえると、特におすすめしやすいのは次のようなタイプだ。
- 建築そのものを“旅の目的”にできる人
世界遺産の宿坊リノベや、ZHAによる日本初のホテルプロジェクトなど、建築が圧倒的な主役になっている。観光名所巡りよりも、「この建物に泊まりたいから旅に出る」と考えられる人にとっては、最高の舞台になると考えられる。 - 静寂や自然と向き合う時間に価値を感じる大人の旅行者
HERITAGE京都・東寺は、庭と伽藍を眺めながら静かに過ごす“現代の巡礼者”向けの宿というコンセプトが語られている。vertex沖縄も、海と熱帯林に寄り添うランドスケープ設計が前面に出ている。 こうした環境を楽しめる人にとっては、大きな利点になる。 - 環境配慮や文化財保全に関心があり、「お金の使い道」も重視する人
宿泊収益が文化財や歴史的建築の保全に使われるHERITAGEの仕組み、環境負荷低減を重視したvertex沖縄の設計は、「ラグジュアリー消費にも意味を持たせたい」と考える層にとって強い説得力を持ちうる。 - 記念日やハネムーンで“ここにしかない体験”を求めるカップルや夫婦
全ヴィラ・オーシャンビューのvertex沖縄や、世界遺産・東寺の宿坊に泊まるHERITAGE京都は、人生の節目の旅としても印象深い舞台になり得る。価格面さえクリアできれば、大きなメリットとなる。
あまりおすすめしない人(悪い点が目立ちやすいタイプ)
逆に、次のようなタイプの旅行者には、現時点の情報からはあまりおすすめしない/おすすめできない面もある。
- コストパフォーマンスを最優先する旅行者
宿泊費を抑え、その分を食やアクティビティに回したいタイプの旅行者にとっては、HERITAGE/vertexの料金レンジは“重すぎる”可能性が高い。
「1泊の予算=家族全員分の飛行機代」というケースも想定されるため、費用対効果という意味では欠点と受け止められやすい。 - にぎやかなファミリー旅行や大人数の宴会を楽しみたいグループ
寺院境内のHERITAGEや、静かな自然環境前提のvertex沖縄は、騒がしい過ごし方にはあまり向かない。
子どもが走り回れるファミリーフレンドリーな施設を求める人には、別の大型リゾートホテルの方が合っていると言える。 - アクセスや周辺の利便性を重視する都市型旅行者
街歩きやショッピング、飲食店巡りを旅の中心に据える人にとって、海と森に囲まれたvertex沖縄や、夜の門限等に配慮が必要になりそうなHERITAGE京都は、拠点としては少し使いづらい可能性がある。
Q&A:HERITAGE / vertexについてよくある疑問
Q1. 一般の旅行者でも本当に泊まれるの?
A. 現時点で公開されている情報によると、HERITAGEとvertexは「オーナー以外の一般の方も利用できるホテルブランド」として始動すると明言されているようだ。 これまでのNOT A HOTELのように、シェア購入しないと利用できないモデルとは異なり、“通常のホテル”として予約・宿泊できる形態になると考えられている。
ただし、既存オーナー向けの優先枠や会員向けの先行予約などが設けられる可能性もあり、その詳細は今後の発表待ちと言える。
Q2. いつから予約できるの?
A. 公式のプレスリリースでは、HERITAGE京都・東寺、vertex沖縄ともに、「開業予定時期など、今後の詳細は随時発表」とだけ示されており、予約開始時期についてもまだ具体的な情報は出ていない。
ブランドサイトやニュースレター登録フォームを通じて、進捗が段階的に告知されると見られている。 早めに情報をキャッチしたい場合は、公式情報のフォローが重要になりそうだ。
Q3. 宿泊料金の目安は?
A. 具体的なレートはまだ発表されていないが、既存のNOT A HOTELが数千万円〜数億円規模の物件を扱うハイエンドブランドであること、またZHAや世界遺産などの要素を考慮すると、国内でもトップクラスのラグジュアリー価格帯になる可能性が高いと見込まれている。
特にvertex沖縄のヴィラは、1棟貸し+プライベートプールなどが前提となれば、時期やプランによっては1泊数十万円レンジも十分想定されると言われている。
とはいえ、早期にはプロモーション的なレートが設定される可能性もあり、最終的な価格は正式発表を待つ必要がある。
Q4. 子ども連れや3世代旅行でも利用しやすい?
A. 現時点の情報だけでは断定できないが、HERITAGE京都・東寺は、宗教空間内という性格上、にぎやかなファミリー利用には一定の制約が生じる可能性がある。
vertex沖縄については、ヴィラタイプの設計が想定されることから、家族単位での利用自体はしやすいと考えられる一方、価格帯や静かな環境を重視するコンセプト上、「子どもがはしゃぎ回る前提」の旅行なら、他の大型リゾートの方が気兼ねなく楽しめる場合もあるだろう。
Q5. 既存のNOT A HOTELオーナーだと何か特典はありそう?
A. 公式な発表では触れられていないが、NOT A HOTELは従来から“オーナーネットワークによる相互利用”を重視しており、今後、オーナー向けの優待や優先予約、特別なプランが提供される可能性は十分考えられる。 ただし、HERITAGE/vertex自体は「会員制ではないホテルブランド」として打ち出されており、あくまで一般ゲストもアクセス可能な形が維持されると見込まれている。
コラム:NOT A HOTEL文脈で使われがちな“隠語・スラング”をTAKA的に解説
HERITAGEやvertexのような新ブランドが出てくると、建築好きやホテル好きのあいだでは、少しクセのある言い回しや隠語が飛び交うことが多い。ここでは、今回のテーマに関連しそうな表現を、トラベルライター“TAKA”の視点でいくつか挙げてみたい。
「デスティネーションホテル」
普通は「行ったついでに泊まる」のがホテルだが、HERITAGEやvertexのような存在は、「ホテルに泊まること自体が旅の目的」になる。
こうしたタイプの宿は、旅行業界でよく「デスティネーションホテル」と呼ばれ、観光名所巡りよりも、ホテルの建築・サービス・ロケーションそのものを楽しむ旅が主流になる。
京都・東寺のHERITAGEも、沖縄のvertexも、まさにこの「デスティネーションホテル」的な性格が強いと見られている。
「推し建築巡礼」
人気建築家が手掛けるホテルやミュージアムを次々と訪ね歩く行為を、若い世代の建築ファンは「推し建築巡礼」と呼ぶことがある。
NOT A HOTELは、藤本壮介、スノヘッタなど世界的建築家と組んだ別荘群を展開しており、「NOT A HOTELの全拠点をいつか制覇したい」と語るファンも少なくない。
HERITAGE京都・東寺とvertex沖縄も、その“推し建築巡礼マップ”に新たに加わるスポットになっていくと予想されている。
「ホテル沼」
一度ラグジュアリーホテルの世界に足を踏み入れると、普通のビジネスホテルには戻れなくなる――そんな中毒的な状態を、SNS界隈ではよく「ホテル沼」と表現する。
NOT A HOTELのように、建築・ロケーション・インテリア・テクノロジーが高次元で融合したプロジェクトは、この“沼”的な魅力を強く持ちやすい。
HERITAGE/vertexが開業すれば、「気軽に泊まれてしまう分、ホテル沼がさらに深くなる」と感じる人も出てくるかもしれない。
TAKAの独自考察:HERITAGE / vertexが示す、日本のラグジュアリートラベルの次のステージ
最後に、公開情報とこれまでのNOT A HOTELの動き、日本の観光トレンドを組み合わせながら、トラベルライター“TAKA”としての長文の意見をまとめておきたい。
1. 「文化財を守るラグジュアリー」という新しい正当性
HERITAGE京都・東寺の構想は、「ラグジュアリーホテルで贅沢すること」と、「文化財を守ること」を同じテーブルの上に載せようとしている点に、非常に大きな意味があるように思われる。
これまでも世界各地で、修道院や古城をホテルにリノベーションする例は数多くあったが、日本において世界遺産の寺院境内で本格的なラグジュアリーホテルを展開し、その収益を保全費に循環させるという明確なスキームを打ち出した例は、かなり先鋭的だと言える。
「高い宿に泊まることへの後ろめたさ」を、「文化財を未来に残すための参加費」という感覚に変換するこのモデルは、今後、他地域の神社・寺院・近代建築にも波及していく可能性がある。
その意味で、HERITAGEは単なる一ホテルブランドを超え、「文化財の新しい守り方のプロトタイプ」としても注目されていると言って良いのではないだろうか。
2. vertexは「ポスト・ビーチリゾート」の実験場になるかもしれない
一方のvertex沖縄は、既存のビーチリゾートとは一線を画す、ポスト・ビーチリゾート的な役割を担う可能性があるように感じられる。
これまで沖縄の高級リゾートと言えば、
- 大型のインフィニティプール、
- オーシャンビューの客室、
- スパやレストランの充実度、
といった要素での競争が中心だった。
そこに対してvertexは、
- 地形や生態系への深いリスペクト、
- 建築とランドスケープを一体として構成するZHAのアプローチ、
- 沖縄の伝統建築のエッセンスを現代的に解釈する姿勢、
を前面に出している。
これは、単に「ラグジュアリーかどうか」ではなく、「その土地に対してどれだけ誠実か」「未来に向けてどれだけ意味のある建築か」という、新しい価値軸でのリゾートづくりと言えるのではないかと思われる。
こうした姿勢が成功すれば、「海がきれいだから」だけではない理由で沖縄を選ぶ旅行者が増え、結果的に観光と環境保全のバランスが少しずつ変わっていく可能性もある。
3. 「所有」から「体験」へのシフトをどう橋渡しするか
NOT A HOTELはこれまで、「別荘の所有権を10泊単位でシェアする」という、比較的“所有寄り”のモデルを展開してきた。 そこにHERITAGE/vertexという、完全に“体験寄り”のホテルブランドが加わることで、ブランド全体として「所有」と「体験」の二軸を同時に走らせるフェーズに入ったように見える。
この構造は、今後のラグジュアリートラベル市場において非常に重要だ。
なぜなら、若い世代ほど「所有」への執着が弱く、「特別な体験」にこそお金を払う傾向が強いと言われているからだ。
HERITAGEやvertexで“体験”としてのNOT A HOTELに触れた人が、いずれライフステージが変わったときに、「次は所有も含めて検討してみようか」と考える流れができれば、ブランドとしての循環が生まれる可能性がある。
今回の2ブランドは、そうした長期的なエコシステムの入口としても機能していくのではないかと推測される。
4. 日本の旅は「安くて便利」から「意味のある贅沢」へ
最後に、日本の旅行市場全体にとっての意味を考えると、HERITAGE/vertexのような動きは、「安くて便利な旅」から「意味のある贅沢な旅」へのシフトを後押しする象徴的な出来事の一つだと捉えることができそうだ。
- 文化財を残すためにあえて高い宿に泊まる
- 環境と共生する未来の建築を体験するために、あえて辺境のヴィラを選ぶ
こうした選択は、単なる消費ではなく、「旅を通じてどんな未来を選び取るのか」という意思表示に近い。
HERITAGEとvertexは、その“意思表示の舞台”として、これから多くの旅人の記憶に刻まれていくのではないかと期待されている。
もちろん、現時点ではまだオープン前であり、実際のサービスクオリティやオペレーション、料金設定などには不確定要素が多いのも事実だ。
しかし、公開されているコンセプトや建築計画のレベルの高さを見る限り、「日本発のラグジュアリーホスピタリティが、世界基準で一段ステージを上げようとしている」兆しの一つとして、HERITAGEとvertexは注目に値する存在と言えるだろう。
正式な開業日や予約開始情報が出てきたら、また改めて、現地取材を踏まえたレポートをお届けしたい。








